第20話 クククッ感度3000倍にいつまで耐えられるかな?



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 もう街を出て丸一日経ったか……殴られたところがまだズキズキする。


 馬車で行こうと思ったがセレナが冒険者らしく、徒歩で行こうなんていい出した時は流石の俺もげっそりした。


 意外とレーウィンはそうでも無いみたいだが……コイツもいい所のお嬢みたいだからな。


 命令で目的地に行くことはあっても、自由に冒険するのは初めてなのかもしれない。


「おい、ノエル! この木に生ってるやつはなんだ!? ピンク色で美味しそうだな……(ゴクリ)」


「セ、セレナ……確かに見たことない果実だが、そんなにはしゃいで転んだりするなよ?」


 レーウィンはすっかりセレナのお姉ちゃんみたいな感じになってるな。


 案外、世話焼きなのかもな。


 確かむかし会った時は部下にだいぶ尊敬されてたみたいだし姉御肌なのは間違いない。


「ふっ、レーウィンお前もそんなにお姉ちゃんぶらなくてもいいんだぞ?」


「ほんとはお前もはしゃぎたいんだろ〜? さっきからソワソワしてるもんな?」


 俺が少しからかうとレーウィンの顔がみるみる赤くなっていく。


「は、はあっ!? べ、別にはしゃぎたいわけじゃ……」


「それにしては足取りが軽かったような気がするんだけどな〜?」


「バ、バカにするな! そーだよ! 正直、楽しくてしょうがないよ! 悪いか!?」


 相変わらずレーウィンはいい反応するな!


 普段やられてる分、こーいうところで発散しておかないとな。


 あんまりやりすぎると後が怖いから、このぐらいにしておくか。


「そういえば、セレナー? その実は絶対に食べ……」


「ほら! このくだもの、めちゃくちゃ美味いからレーウィンにもお裾分けな!」


「むぐっ! もぐもぐ……本当だ、美味しい!」


 俺の話を聞かず、レーウィンの口にその実を突っ込むセレナであった……。


 マズイ……この実に毒はないが、特殊な効果がある。


 この実は加工すると精神高揚の薬……つまりは媚薬になる……つまりこの実を食べた時点で詰んでいるということになる。


「セ、セレナ、レーウィン落ち着いて聞け! いますぐその実を吐き出すんだ……!」


「うんぅ……なんだか体が熱くなってきたような気がするぞ……ハァ……ハァ……」


 もう効果が出てきたか……考えたくない、この後のことは考えたくない!!。


「ど、毒か!? ノエル!?」


 苦しそうにしているセレナの様子を見て、慌てるレーウィンに現実を伝えようと口を開く。


 コイツにとっては毒だと言った方がまだ優しかったかもしれないな。


「媚薬だ」


 俺は残酷な真実を簡潔に伝える。


「なら早く吐き……ん? 今なんて? 」


 2回目。


「媚薬だ」


「わ、私が食べたのも……」


 残念ながら。


「媚薬だ」


「オェェェェ!! ゲホ、ゴホッ!!」


「い、嫌だ!! こんな男に発情するなんて!! 誰か私を殺してくれぇ!!」


 コイツは俺の心を傷つける天才らしい。


 セレナだけだったらまだ救いがあったのにな。


「ノエルぅ〜なんだか体がぽかぽかするぞ〜服、脱いでいいか〜?」


「うぅ……ハァ……ハァ、わ、私は媚薬なんかに負けない……!」


 暑いからと服を脱ぎ出そうとするセレナ。


 囚われの女騎士のようなことを言い出すレーウィン。


 この状況を対処するか、もう一度バルバと戦うかだったら俺は間違いなくバルバを取る。


 それくらい今の状況はめんどくさい。


「セレナ、とりあえず服を脱ぐのはやめておけ」


「なんでだよ〜暑いんだから脱いでもいいだろぉ〜?」


 いくら子供とはいえここまで色気がないのも珍しいな。


 俺が持っている聖剣の中には“解毒”“解呪”などはあるが、媚薬の効果を打ち消すようなピンポイントな物はない。


 あっても誰が使うのか……。


「レーウィン、街まで我慢できそうか?」


「ひゃん!!」


 俯いて耐えているレーウィンの肩に手が触れた瞬間、体をビクンと反応させ気まずくなるような声をあげる。


「レーウィンお前……」


「な、なんだよ……」


 少し間を置き正直に思ったことを告げた。


「感度いいんだな!」


 殴られると思ったがレーウィンは力が入らないのか、眉を釣り上げ真っ赤な顔で。


「……後で殺す……」


 とだけ呟いて、また下を向いてしまった。


 この様子じゃ、しばらく動けないな……日も暮れそうだし今日はここで野宿か。


 冷静になった時どうなるかは考えないでおこう……。


 夜になり木の実の効果が切れ冷静になった二人は、恥ずかしかったのかすぐに寝てしまった。


 これを教訓にしてこの先、得体の知れない物は食べないようになるだろう。


 明日はトラブルなく街まで行けるといいな……街まではあと半日あれば着くだろうしな。



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「おー見えてきたな! なんか二日ぐらいしか経ってないのにその倍、歩いた気分だ」


 まあ、俺には混浴が待っているからな! この程度、なんの負担にもなってはいない。


「俺はこの二日間よく頑張ったよ……だから混浴ぐらい許してくれよ?」


「だから許すわけ……おい……レーウィンあの看板……(ボソボソ)」


「しょうがないから混浴ぐらい許してやるか!」


 コイツらなにコソコソしてるんだ?


 っていうか混浴を許可してくれるってマジか!?

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