第19話 いざ温泉へ!!



 小さい子供もいるしこのまま放っておくのは流石にな……。


 ただそれだけの話だ。


 それに、またバルバのみたいな奴と戦うことになるかもしれないし……。


 腕のいい鍛治師に頑丈な剣を作ってもらっておいた方がいいだろう。


 人目のあるところで聖剣は使えないからな。


 いちいち姿を変えるのも面倒だし……。


「本気ですか!? それに、住むところまで! 貴方は一体何者なんでしょうか?」


「俺はノエル・ハーヴィン、ここのギルドマスターと少し面識があってな」


「で? 取引には応じるのか? 小さい子供もいるようだし、住む場所ぐらいは欲しいんじゃないか?」


 普通に考えればこんなに怪しい取引には乗ってこないだろうが、この状況なら乗るしかない……よな?。


 っていうか乗ってきてくれ! 見捨てるとか後味悪いし……。


「本当によろしいのですか? 私には返せる物などありませんが……」


「もちろんだ! お返しなどいらないがひとつお願いしたい」


「一息ついたら俺の剣も作って欲しいんだが……先日壊れてしまってな」


「貴方様は命の恩人です! 貴方の剣は私の全力を注いで作らせていただきます!」


 よし、これでいい。


 彼らを助けたいという気持ちもあるが、単純に優秀な鍛治師がいてくれると色々助かるからな。


 機能性のある防具の入手も大変だったしな……こればっかりは聖剣の力じゃどうにもできなかったし。


 じゃあギルドに行くか。


「なぁ、ノエル……人助けは結構だが、なぜあそこまでするんだ? 少し強引さを感じたんだが……(ボソボソ)」


 レーウィンはわかってないな……仕方ない教えてやるか。


「ちょっと耳を貸せ、……いいか? あの鍛治師が背負っているバックをよーく見てみろ(ボソボソ)」


「普通のバックに見えるが?(ボソボソ)」


「違う! あのバックからはみ出てる剣だよ! (ボソボソ)」


「あ、あれは! (ボソボソ)」


 やっと気づいたか。


 あのはみ出ている剣がとんでもない業物なんだ!。


 あんな剣を作れる鍛治師を見逃すなんてありえない!。


 戦いに身を置いている者ならあの剣は喉から手が出るほど欲しい代物だ。


「さあ、着いたぞ? ここがこの街の冒険者ギルドだ」


「王都にあるギルドとはだいぶ違うのですね……」


「まあ良くも悪くも田舎だからな」


 とりあえず鍛治師には一階の酒場で待ってもらってっと、俺はギルドマスターを呼びに行くか。


「ギルドマスター? ノエルだが入っていいか?」


「ノエル君? もちろん入っても構わない、君が私の元に訪ねてくるなんて珍しいじゃないか」


「いい話があってな、この街の利益にもなる話だ……」


 俺はここに来るまでのことを報告するとギルドマスターは目の色を変え、すぐに鍛治師に会わせてくれと言い。


 一階まで降り鍛治師を紹介すると、話はトントン拍子に進み早急に鍛治師の作業場と住む家を与えるとのことになった。


 あとはギルドマスターが上手いことやってくれるだろ。


「ノエルさん! 本当にありがとうございました! 準備が出来次第すぐに剣の制作に取り掛からせていただきます」


「ああ、よろしく頼む、少しはまけてくれよ?」


 俺が冗談で言うと鍛治師はこれはお礼なので料金はいらないとなどと言ってきた……流石にそれはな……。


 タダで作ってもらうわけにもいかないので、本来の料金の半分を支払うということで渋々同意してもらったが。


 どうやら剣が完成するまでは二週間ほどかかるらしい。


「ノエル君じゃあその間に一つ依頼を出してもいいかな? この前のお礼に割りのいい依頼を用意したんだ」


 依頼の内容は隣街のギルドに手紙を届け、向こうのギルドからあるものを持って帰ってくるという簡単なもの。


 期限は三週間、隣街には温泉があるらしくそこで体を休めてきてほしいとのことだ。


 しかし、この報酬はかなり高いな……まぁ久々にゆっくりできるみたいだしありがたく引き受けるか。


「ありがたく引き受けさせてもらう、鍛治師さんのことは任せてもいいか?」


「もちろんだとも! 後のことはこちらでやっておくから君達は温泉を楽しんできてくれ」


 そんな感じで俺たちは鍛治師の家族に死ぬほど感謝されながらギルドを後にした。


 しかし隣街か……馬車だったら半日程度かかるな。


 まあ戦いに行くわけじゃないし武器はギルドの支給品を借りておこう。


「というわけで二人とも、早速今日この街を発とうと思っているんだが大丈夫そうか?」


「随分急だな? 私は大丈夫だぞ」


「私も問題はないが……そんなに急いでどうしたんだ?」


 コイツらはなにを言っているんだろうか? 温泉といったら混浴!!!! そんな場所に三週間も居れるんだぞ!!?。


 今俺に残されている選択肢は即行動!! それしかない!!


 だが、俺もバカじゃない……ここで素直にそんなことを言えばまたボコボコにされる。


 つまり、ここで言うべきことは……。


「昨日の戦いでお前達も疲れているだろ? だから温泉でゆっくりしてもらいたいと思ってな」


「「ノエル……」」


「さあ!! いざ行かん!! 混よ……疲れを癒しに!!」


 やべ……。


「やけに乗り気だと思ったが……」


「そういうことか」


「ちょ……ま!!」


 

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