第1話 『 私』のいない教室

朝起きると、いつも以上に体が重かった。


はぁ、学校か。


行きたくないけど、行かないと怒られるよな。私は重い足で、家を飛び出した。




つい一昨日、私は高校生になった。ついに私が高校生。入学式の日は、あんなにもワクワクしてたのに、今では1ミリもしない。


高校は、歩いて20分。歩くには少し遠い。でも、自転車を使うことはできない。


少し長い通学路。私はいつもイヤホンをつける。これは、中学生の時からの習慣。そして、いつも同じプレイリストを聴く。


『 初音ミク』




学校に近づくにつれ、同じ制服の人が増えてきた。みんな知らない人。みんな顔が死んでる。学校が嫌なのは、みんなも同じなのか。



学校に着いた。『岸成高校』。私立の学校で、男女共学の滑り止め高校。だいたい公立を受ける子が、安心材料としてこの高校を受ける。そこに私は第一希望で入った。


校門を入るのと同時に、私はイヤホンを外した。すると、後ろから楽しそうに話す会話が聞こえた。よく見ると、1人は同じクラスの人。もう友達を作ったのか、それとも前からの友達なのかは知らないけど、少しだけ羨ましい。



3階の教室まで、二人の会話は続いた。ただ、1人は違うクラスのようで、階段を挙がってすぐ別れた。


廊下で2人。私はあの子の顔を知っている。おはようって言うべきなのか。いや、相手は私を知らないかもしれない。いや、でも...


悩んでる間に、教室に着いた。結局、声をかけられなかった。でも、それで良かったかもしれない。教室には、もうすでにほとんどの人が座っていた。そして、みんなこっちを見て、すぐに目を逸らした。


1番後ろの席。正直すごく助かった。みんなの視線を感じないから。中学の時までこんなこと気にしてなかったけどな。なんでだろう。みんなに近づけない。




入学式の日、私は中学の時のようにはできないと思った。


その日、私はこの教室で声をかけられた。その子の名前は、宮崎結衣。


最初に、名前を聞かれた。日比谷 想。そう答えると、いい名前だね、と言われた。そして、ふと私の筆箱に手をかけようとした。


「触んないで!」


私は咄嗟に声を上げていた。ふと周りを見渡すと、みんなこっちを見ていた。宮崎結衣も。


そして私は、とっさに睨んでそのままうつむいた。


「怖っ。」


そのまま宮崎結衣は、自分の席に戻っていった。心臓がバクバクになった。




それから、誰からも認識されないようになった。どこからか、噂話が聞こえるようになった。まだ高校生になって、2日。



私の居場所はなくなった。

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