第2話

 荷物が届いたのは翌日だった。

 ダンボール製の箱の中の人形は、クッション材で厳重に固定されていた。


 その美しい顔した人形は、パソコンの机の上の素敵な飾りとなった。

 箱の中には、説明書きとQRコードの印刷されたカードが、同封されていた。

 スマホでコードを読み込むと、その美しい人形と会話できるらしい。

 人形の心を自分に振り向かす事が出来ると、素敵な出会いが訪れるそうだ。


 コードを読み込んでみた。

 スマホに新しいアイコンが、浮かび上がった。

 触れてみると、人形との会話は、文字で打ち込むと、分かった。

 ご丁寧に、人形の絵も添えられていた。


 人形の絵は、控えめではあったが、表情があった。

 面白いアプリだ。

 しかし、どこかで、説明を見落としたようだ。これでは、恋の相手は人形以外考えられない。


『それくらいが、自分にはお似合いだな』


 スマホに文字が浮かび上がる。

 

「初めまして、私の名前は、エリ。これからよろしくネ」


「初めまして、僕の名前は、ユウ。こちらこそよろしく」


 人形相手に、会話する自分に、自嘲する。

 人形本体の表情は、変わらないが、スマホの中の彼女は、微笑んでいる。

 

 心弾むひと時だ。


 早くも、アプリドールを気に入る。

 同時に、僕自身の心の健康を疑う。


 コイトハ、オチルモノナノカ?

 コイトハ、フミハズスモノナノカ?

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