第18話:メルバの決心。

俺とメルバが分かれる、別れないって話は、決着がつかないまま、数日経っていた。


そして俺が用事で留守にしてる間に、とうとうメルバは決心したんだろう・・・。


「ピーチ、お願いがあるんだけど・・・」


「なんだよ・・・」


「ケイスケのことだけど・・・実は・・・」


「マジで言ってるのか?」


「マジだよピーチ」


「そんなことして後悔しないか?」


「それしか、今の私がケイスケを喜ばせてあげることはできないもん」


「おまえはいいのか?」


「私がここに残る方がケイスケを不幸にさせること分かってる・・・

だから私はいいの・・・悲しくて辛いけど、もう決めたから」


「そうか・・・分かった・・・じゃ〜言う通りやってみるよ」



そして俺が目覚めたのは病院のベッドだった。

最初、意味が分らなかった。


病院にいるのさえ気づかず、ボーッとした目の前には無機質な天井が広がっていた。


「あ、圭介・・・目が覚めた?」


俺は声のした方を見た・・・って言うより、聞き覚えのある声で、それが誰か

すぐ分かった。


「桃香・・・なんでここにいるんだよ?」

「って言うか・・・俺は何してんだ?」


「ここ病院だろ?」

「なんで俺、入院なんかしてるんだ?」


「メルバは?」


「メルバ?・・・メルバってなに?」


「圭介、落ち着いて・・・起きたばっかで気持ちが混濁してるんだよ

・・・ちゃんと説明するから・・・」


「ってか、なんで君がここにいるんだよ・・・俺をフって出てったじゃんか?」


「何、ワケ分んないこと言ってるの?」

「私が?圭介をフったって?」

「ちょっと頭打っておかしくなってるんじゃないの?・・・私、今でも圭介と

一緒だよ・・・」


「え?・・・うそ・・・俺は?・・・?」


「あのね、圭介は仕事してて、現場の足場から落ちたんだよ」

「それで救急車で運ばれたの・・・」


「頭を打ってて三日間、意識が戻ってこなかったんだよ」

「MRI撮って検査したけど、脳には異常無しって・・・」

「しばらく安静にして、もし目覚めるようなら退院できるでしょうって

お医者さんが・・・」


「そうなのか・・・」

「え?でもおかしくないか?・・・俺が足場から落ちたのは1年も前だぞ・・・」

「なんで今、入院なんかしてるんだよ・・・」


「圭介・・・ほんとに大丈夫?」



「ピーチ、なんでケイスケを、この時間に戻したのよ・・・」

「それはな、心理だよメルバ」

「病人ってのは人の同情買うだろ?」

「同情も愛情も同じようなもんだからさ」


「これで桃香さんの同情を買って、よりふたりの思いが深くなるだろ?」

「ちゃんと考えてるんだよ、俺は・・・」


俺はどうやらピーチによって過去に飛ばされたらしい。


メルバたちは俺の病室の前にいたみたいだった。


「姫、ほんとにこれでよかったんですか?」

「せっかく地球に来たのに・・・もう帰るって・・・」


「あのさ・・・ザッハトルテ、あんたはこの地球に未練あるんでしょ?」

「だったら、時々この地球にきて、ケイスケと桃香さんの行く末を私に報告して

くれない?」


「お・・・それならお任せください・・・なミルフィーユ」


「ミルフィーユは関係ないでしょ」

「あ、この際ミルフィーユの彼女は、この地球で探すことにしました」

「血を吸われる心配がありませんからね」


「あ・・・なるほど・・・ちゃっかりしてるわね」


「さあ・・・みんな帰りましょ、私たちの星へ」


「ケイスケ・・・今日までありがとうね・・・」

「もう一度元カノちゃんとやり直せるチャンスあげたんだから今度はフられない

ようにね」

「桃香さんとお幸せに・・・元気でねケイスケ・・・さよなら」


そう言い残してメルバは自分の星に帰って行ったみたいだ。

最後はメルバとお別れのハグもできないままだった。


俺は分かっていた。

きっと時間を戻すことをピーチに支持したのはメルバなんだって・・・。


つづく。

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