第16話:酒癖がめっちゃ悪いお姫様。

ってことで、夕方俺たちは連れ立って、俺の知ってる居酒屋へでかけた。

もちろんザッハトルテとミルフィーユを連れて・・・。

全員でタクシーに乗って出かけた。


居酒屋の名前は「伽羅きゃら


実は俺が二十歳になる前からお世話になってる店。

元カノ「桃香」と知り合ったのもこの店。

実はこの店は桃香の母親の姉がやってる店で、桃香はバイトで手伝いに来てて

俺が見初めた。

桃香と別れたあとも、時々この店に来ていたが、一度も桃香とは会ってない。

万が一にも俺に会うのが嫌で来ないのかもしれないな。


店の中に入ると、すでに数人の常連さんで賑わってた。


「あら・・・ケイちゃん・・・久しぶり」


そう言ったのが店の看板娘「みっちゃん」・・・って言っても俺より五つ年上

だけど・・・。

愛想がめっちゃいいから、客受けがいい。

みっちゃん、目当てに来てる客も多くいるみたいだ。


「みっちゃん・・・元気してた?」


「元気、元気ハツラツ・・・なんとかミンシードリンク」


「ケイスケ・・・誰?」


「この店を手伝ってる、お姉さん・・・」

「めちゃ親しそうだけど・・・」

「もうエッチしたの、あの人と・・・」


「なわけないだろ」


「俺はただの客だよ・・・」


「ケイちゃん、めずらしく連れがいるんだね・・・」


みっちゃんは俺の連れを見て言った。


「ああ・・・まあな・・・」

「俺の親戚のおじさんとイトコ・・・それと俺の彼女・・・」


「はじめまして親戚のおじさんにイトコさん」

「それとケイちゃんの彼女ちゃん」

「って・・・いつの間に彼女作ってたのよ・・・桃香・・・・」

「まあ〜可愛い彼女ちゃんじゃん・・・」

「ケイちゃんにはもったいないわね・・・」


「お名前は?、なんて言うの?」


「メルバです」


「え、外人さん?」


「あ〜みたいなもんです」

「別の星から来たもので・・・・」


「そうなんだ・・・最近、いろんな星から地球との交流目的で来てるわね」


「そう・・・じゃ・・・なににする・」

「まずは、全員ビールでいいかな?」


「とりあえず、それでいいよ・・・みっちゃん」


ザッハトルテとミルフーユは初めての居酒屋で借りてきた猫みたいになっていた。


「なんだよ、ふたりとも、おとなしいじゃんか?・・・」


「こういうところは、はじめてなもんで・・・」


「リラックスしていいよ・・・ここは酒飲んで楽しむ場所だからな」


ってことで、酒が入るにつれて、それぞれの本性が垣間見えてきた。


ザッハトルテは酒が入るとバカ陽気になる・・・ミルフィーユは泣き上戸・・・

問題だったのはメルバ・・・笑い上戸に泣き上戸・・・怒ったり甘えたり、

忙しいこった・・・酒癖がめっちゃ悪いお姫様だな・・・」


なんだか、そのまま放置しとくと店に迷惑がかかりそうなので、早々に

引き上げることした。


「みっちゃん・・・お勘定・・・」


「あら、もうお帰り?」


「こいつらが店に迷惑かけないうちに帰るわ・・・」

「じゃ〜な、今度は俺一人で来るから・・・」


「そう・・・また来てね、ケイちゃん」


俺は、みんなを引き連れて店を出た。

冷たい風が火照った体に心地いい・・・。

ザッハトルテとミルフィーユは酔ってはいたがフラつきながらでも自分で

歩いていた。

メルバは・・・コンニャクか豆腐あるいはスライムみたいになっていた。

俺がいないと、道端でそのまま寝てしまいそうだった。


「みっちゃんは・・・馴れ馴れしい、ケイスケに・・・」

「自分の彼氏でもないくせに・・・」


「メルバ・・・なにヤキモチ焼いてるんだよ」

「商売だよ・・・客に愛想振りまかないと商売になんねえだろ?

ああいうのが普通なんだよ」


(ったく・・・へべれけに酔ってるし・・・)


帰りのタクシーの中でも、メルバは俺にからむからむ。


「ケイスケ浮気したら許さないからね・・・」


「浮気なんかしないよ」


「浮気なんかしたら・・・一生恨んでやるから・・・」

「私をフったら、アソコ握りつぶして・・・トンカチでぺしゃんこにして

スルメみたいにして使い物にならないようにしてやるからな・・・」


「女の子が、なんてこと言うんだよ・・・」

「飲みすぎだよ・・・いいかげんにしろよ」


「酒グセ悪い姫ですな〜始末におえませんの〜」


ザッハトルテは他人事みたいに言った。


「まったくだよ、お姫様っての、嘘じゃないのか?・・・」


家に帰ってもメルバは泥酔していて、すぐに俺を襲って来ようとした。


「やめろって・・・ひどいぞ・・・」


「バカケイスケにバカザッハトルテ・・・童貞ミルフィーユに、そでと・・・

アホピーチ・・・ざけんなよ・・・おまえらら・・・」


「たしかに酷いなこれは・・・」

「こんなベロベロのメルバは初めて見たわ・・・」


さすがのピーチも呆れていた。


「私たちは二階に退散させていただきますから・・・」


そう言ってザッハトルテとミルフィーユは逃げるように二階へ上がっていった。


「昨夜の埋め合わせ・・・してくれるんだろうな、ケイスケ」


「そんなにベロベロに酔ってて、できるのか?」


「喉、渇いた・・・・ケイスケ」

「血、吸わせて・・・」


「え〜・・・トマトジュースでも飲めよ」


「あんなのじゃ喉も体も潤わないの・・・」

「ね?・・・血、吸わせて、お〜ね〜が〜い〜」


「しょうがないな・・・じゃ〜少しだけだぞ」


そう言うとメルバは俺の首筋に吸い付いてきた・・・。


少し吸ったら、すぐにやめると思ったんだが、メルバは血を吸うのをやめない。


「ケイスケ・・・メルバを止めろ」


「え・・・なんだって?、ピーチ」


「メルバを引き離さないと、体の血、全部抜かれちまうぞ・・・」

「酔っ払ってるから、見境つかなくなってるんだ・・・」


「早くやめさせないとケイスケ死ぬぞ・・・」


つづく。

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