第8話:トマトジュースなんかで誤魔化すつもり?

その夜は焼肉だった。

メルバは美味しい美味しいと、ギャル曽根ばりに肉を食った。


肉だからな・・・これで多少メルバの禁断症状が出る日にちが遅れるかもな。

お腹が満腹でゲブゲブ言ってるメルバに俺は冷蔵庫の中からある物を出してきて

彼女に勧めた。


「あのさ・・・これ飲んでみ?」


俺が買ったものは、それはトマトジューズだった。

俺はメルバにトマトジュースを出した。


「なにこれ?」


「トマトジュースって飲み物・・・いいから飲んでみて?」


メルバは恐る恐るトマトジュースを、ひとくち飲んだ。


「美味くない・・・オレンジの方が美味しい」


「え?美味くないのか?」

「それって何かに似てるって思わないか?・・・違うのかな?」

「俺は血は吸ったことはないけど、傷口から出てる血は舐めたことあるけど

味はそんな感じだった気がするけどな・・・」


「え?・・・もしかして・・・これって血の代わり?のつもり?」


「あいや・・・トマトジュースならお手軽かと思って・・・スーパーとかコンビニへ行けば手に入るしな・・・。

これで血の代わり?、まかなえないかなって思ったりして・・・」


「うそ・・・こんなもの血の代わりになんかならないよ」

「こんなもので、誤魔化そうとしてる?」


「ケイスケ・・・これはダメだな・・・いくら血を吸われたくないからって

ジュースを血の代わりに使おうなんて・・・」


「ピーチの言う通りだよ・・・そんなに嫌なの?・・・私に血を分けるの・・・」


「いや、そういう訳じゃないんだけど・・・もしかしたらトマトジュースで

我慢してもらえるなら、それに越したことないかなって思って・・・」


「ケイスケ・・・私をバカにしてる・・・そんなんで誤魔化せる訳ないじゃん」

「ひどい・・・」


そう言ってメルバは泣き出した。


「あ〜あ・・・女を泣かして・・・最低だなケイスケ・・・」


「うるさい・・・桃」


「桃じゃねえつってるだろうが・・・」


「悪かったよ・・・メルバ」

「ごめんね・・・謝るから許してくれる?」


「終わりだね・・・私たち・・・恋人解消だよケイスケ」


「え?このくらいのことで?・・・解消?・・・」


「このくらいって、私にはこのくらいじゃ済まないの・・・」

「交流って話もこれでおしまい・・・」

「私がケイスケの血を吸わせてもらえないのなら、一緒にいる意味ないでしょ」


「そういうのに関係なく、俺のことが好きだって言ったじゃないか?」


「だけど・・・なんか・・・裏切られた気持ちだもん」


「じゃ〜なに?・・・異星人との交流って話はもうおしまいなのか?」


「だね・・・ごめんね、ケイスケ」


「そうなんだ・・・そうか・・・」

「しかたないね」

「だけどメルバは謝らなくてもいいよ・・・君はなにも悪くないんだから・・・」

「悪いのは、謝るのは俺の方だよ・・・姑息な手段使ってごまかそうとして・・・

でも、そこまでメルバがショック受けるとか思わなかったから・・・」


「私が笑ってくれると思った?、ウケる〜って言うとでも思った?」


「そこまでは思わないけど・・・」

「そうか・・・じゃあ、もう許してもらえないのかな?・・・自分の星に

帰っちゃうのか?・・・」

「この企画もここまでなんだ・・・」


「そうだね・・・残念だど・・・」


「俺としてはメルバに帰って欲しくないって思ってる・・・」

「こんなことしといてメルバを止める権利は俺にないのはわかってるけど・・・」

「帰らないで欲しい」


「・・・・・・帰る・・・」


「そうか・・・分かった・・・もう遅いから、今夜ここに泊まって明日自分の星に

帰ればいい・・・」


「ほんとに悪かった・・・考えてみたらトマトジュースってな・・・安直な

考えだよな」

「バカにしてんのかって思うよな・・・」

「本当にごめんね」


「・・・おやすみ、メルバ・・・」


そう言って俺はメルバを居間に残したまま二階の自分の部屋に引っ込んで行った。

意気消沈だよ・・・一週間も経たないうちに彼女にフラれるなんてみっともねえ。


まさかトマトジュース一本で、何もかもなくしてしまうなんて思いもよらなかった。

たかがトマトジューズくらいで・・・。


また明日から、ひとりの生活か・・・メルバが恋しくなるだろうな。

彼女がいなくなったら、俺はどうしたらいいんだ?

もう人間の彼女なんか作る気にもならないよ・・・どうしたらいいメルバ?

教えてくれ・・・。


つづく。

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