第42話 高い壁



二度目の朝鮮半島侵攻に意欲を燃やす加藤清正…

 そして、朝鮮半島侵攻での戦果がイコール罪状に結び付く小西行長は、無罪になるために手柄を立てて戦果を出さなければならない…



右軍左軍の士気は高く瞬く間に全羅道を制圧して、明朝鮮軍に五千人の死者を出した。



日本軍の勢いは止まらず目標の忠清道を一気に制圧して、秀吉の命令通り城郭群の構築を始めた。






十二月某日

加藤清正居城 蔚山城


明朝鮮軍は、一番隊で攻めて来る加藤清正が日本最強の武将だと考えていたので日本最強の加藤清正を殺して日本軍の士気を下げようと大軍で蔚山城に襲撃して来た。

 所用で西生浦に居た加藤清正は即座に兵船に乗り蔚山城に戻った。



加藤清正

「全員、城に戻らせろ!これより、籠城する!」


加藤清正は蔚山城に戻ると直ぐに状況を把握…

 明朝鮮軍五万七千人に対して蔚山城に残った日本兵は一万しかいない、撃退は不可能と判断して籠城で防戦し援軍を待つ。



一方の明朝鮮軍は日本の援軍が来る前に蔚山城を陥落して加藤清正の首を取りたい…

 明軍は加藤清正を殺せば日本兵の士気が落ちて戦況が有利になると考えているので必死になった…



明朝鮮軍の兵士達が命を捨てた突撃をして来る。





 敵が来たぞぉー!!


 一人残らず撃ち殺せぇー!!!



戦国時代の日本の軍事力は世界でトップクラスを誇り、中でも火縄銃の威力は絶大で明朝鮮軍の兵士はなす術がなく的になる…


突撃しては撃ち殺されの繰り返しで明朝鮮軍兵士の死体が溢れかえる…



日が暮れると夜空にどす黒い霧が巨大な渦を巻く…

戦国の悪魔は海を渡り、恐怖を怒りを憎しみを撒き散らして人間の魂を食らう…





蔚山城


加藤清正

「食糧はどうだ?」


加藤家 武将

「もって、三日かと…」


加藤清正

「それまでに援軍が間に合えばいいが…」



火縄銃や大砲で勝る日本軍は明朝鮮軍兵士を誰一人近付けない…

 しかし、朝鮮の冬の寒さと食糧が底をつき倒れる者が相次いで窮地に立たされる…



加藤清正

「明軍が和睦を持ちかけて来ただと…」


加藤家 武将

「城の明け渡しが条件になると思います」


加藤清正

「……」


ここで城を明け渡せば、また小西行長に差を付けられる…小西に手柄で負けたくない加藤清正は開城ではなく捕虜の交換を持ち掛けるよう家臣に指示を出した。



日本軍の使者が明軍陣営に、まずは捕虜の交換をしたいと持ち掛けたところ…これに明軍は、捕虜の交換なら加藤清正と直接交渉したいと返事を寄越した…



この交渉は、加藤清正と明軍大将との駆け引きだ。

 日本側は援軍が来るまでの時間稼ぎをしたい…

 明側は、加藤清正を誘きだし捕虜にしたい…



 両者の思惑が交錯するなか明軍大将の思惑は脆くも崩れ去り、日本の援軍が到着したと報せが入る。








 援軍が来たぞぅー!!!


   うおぅー!!


    わぁー!!!



疲弊しきった兵士達が援軍の知らせで息を吹き替えした。




加藤家武将

「毛利秀元様と黒田長政様の援軍が来ました!」


加藤清正

「よし!もう心配はない!」



加藤家武将

「明朝鮮軍に、ありったけの弾をぶち込んでやれぇー!」



うおぉーー!!


  殲滅だぁーー!!!


 百人殺るぞぉー!


    わぁー!!!


  俺は二百だぁー!





勝利を確信した日本軍の攻撃は激しさをまし、明朝鮮軍に雨のように銃弾を浴びせ一歩も近づけさせない!





 明将は日本に援軍が来たのを知ると退路を絶たれる前にと退却を始めた…


援軍に来た各隊の武将達は退却する明軍を一斉に追撃する…

 逃げ道に先回りして塞ぎ一ヶ所に集め殺す、中には50キロ以上も追いかけた武将もいた…

 この距離は自分が孤立して明朝鮮軍の大軍に襲われる危険性がある距離だが、明朝鮮軍からなら逃げ切る自信があったのだろう。





日本軍が追撃を執拗に行ったため明朝鮮連合軍の被害は凄まじく二万以上の兵士が死んだ。





慶長 三年二月某日


作戦を成功させた日本軍は九州勢六万を残して、帰国を始めた。



全羅道 順天城


小西行長

「あらかた帰ったか?」


宗義智

「たぶん、予定通り帰国したと思いますが…確認しますか?」


小西行長

「いやいい、秀吉様の忍も帰ったか気になっただけだ」


宗義智

「帰国する武将達に、根回しはしといたし戦果も上乗…帰国しても大丈夫だったのでは?」


小西行長

「だがもし…明将が日本軍の手薄な今なら勝てると勘違いして攻めて来たら、日本で何を言われるか分からんからな」


宗義智

「確かに…明朝鮮軍ならあり得る話、それで秀吉様に叱責される事もあり得る…」


小西行長

「こうなったらもう明を制圧するしか無いだろう…」




小西行長は、秀吉の怒りを収めるにはもう明朝鮮軍を倒し差し出すしか無いと腹を括っていた…


今の秀吉に睨まれたら自分はおろか家臣親族の命も危険にさらす事になる、結果を出しても気を抜く気はなかった。









慶長の役Wikipedia

小西行長Wikipedia

加藤清正Wikipedia参照

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る