第17話 因果応報
本願寺攻めを命じられた明智光秀が武将達を集め軍義を始める
「本願寺の一揆衆は人数が多いだけで殲滅は容易いが、無駄な殺生は避けたい…」
「降伏させてから坊主だけ処刑しますか」
「私はそれでいいと思うが… 民を助けるには、何か理由がないと最近の信長様はやたら殲滅したがるからな」
「…捕らえた一揆衆は奴隷として働かすと言う事ではどうでしょう」
「奴隷か… よし、それでいこう」
光秀もこの所の虐殺がやり過ぎだと危惧する一人で、柴田勝家や前田利家の様に殺戮を楽しむ信長の影響は受けていない…
巨大化し過ぎた織田軍に、小さな亀裂が出来始めていた…
早朝に織田軍が攻撃を開始したが、伏兵の雑賀衆が数千丁を有するの鉄砲隊で攻めて来た。
「伏兵の鉄砲隊が攻めて来ました」
「何?伏兵だと」
「雑賀衆の鉄砲隊です」
「雑賀の鉄砲隊か…全軍一時退却させろ」
「わかりました」
退却を始めた織田軍だが雑賀衆の鉄砲隊に激しく追撃され織田軍は大敗した… 天王寺砦で軍の立て直しを計るも本願寺勢に包囲されてしまう、窮地に立たされた光秀は京都の信長に援軍の要請をする。
要請を受けた信長は、配下の諸国に出陣命令を出したが、突然の要請で思うように兵が集まらない…しかし光秀からは、あと何日も耐えられないと連絡が再三来ている。
信長は、集まらない援軍にしびれを切らし本願寺とのイクサには心もとない兵数だが出陣を決める…
秀吉隊 本陣
「秀吉様、どうやらこの人数で出陣する様です」
「そうか、信長様が言うなら仕方無いな… 多勢に無勢だ、危なくなったら直ぐに退却するぞ」
秀吉は不利な戦に消極的だ、自分を最優先にして無駄死にを避ける事を竹中半兵衛に命じる。
信長は、天王寺砦で防戦する織田軍明智隊を取り囲む敵の後ろに全軍で突撃した、本願寺勢は不意を突かれたが直ぐに反撃をしてきた、織田軍は激しい銃撃を受けたが小数の犠牲で光秀達と合流出来た。
籠城戦に備え体勢を立て直そうとする本願寺勢を見て、信長が総攻撃を命令するが武将達が反対する。
「こちらはせいぜい五千人、本願寺勢は一万五千以上籠城して援軍を待ちましょう」
籠城を進言する武将に明智光秀が異論を唱える…
「敵の主力は雑賀の鉄砲隊、その鉄砲隊が今、槍の先が届くほどの距離まで接近している、近距離なら槍が有利、敵が陣形を替える前に叩くべきでは…」
「籠城すると思ってる坊主どもの度肝を抜いてやれぇ~‼」
信長の鶴の一声で総攻撃が決定した。
意表を突かれた本願寺勢は指令系統が乱れ防戦一方になり、頼みの雑賀衆の鉄砲隊が倒されると次々に敗走… これを織田軍はしつこく追撃して本願寺勢を大量に惨殺した。
戦況を巻き返し優勢になった織田軍… 信長は疲弊した光秀隊と京都に戻る事にして後の始末を佐久間信盛にまかせた。
佐久間信盛を大将にした織田軍は本願寺勢を兵糧攻めで苦しめ有利にイクサを進めていた。
ところが、本願寺勢の援護にやって来た毛利水軍の新たな兵器焙烙火矢(手榴弾の様な物)に織田水軍が一方的に攻められ壊滅させられてしまった…
こうして信長は毛利軍上杉軍本願寺勢と、またしても信長討伐を目的として集まった巨大連合軍と熾烈なイクサを繰り広げ戦国に血の雨を降らせる。
【因果応報】
信長討伐の為に上杉、毛利、本願寺を結び付けた信長包囲網の黒幕松永久秀と将軍足利義昭…
「上杉謙信と毛利輝元が攻め込めば…今度こそ信長を討ち取れるはずです、信長の勢力は巨大ですが、こちらはそれを上回る勢力…」
「そうだ、本願寺の顕如に雑賀衆の鉄砲隊もいる…今度こそ信長を始末してやる」
「私は上杉様が侵攻してから決起しますが… 義昭様はくつろぎながら吉報をお待ち下さい」
「ハハッ そうだな…しかしくれぐれも油断するなよ」
「心得てます…今度こそ‼」
松永久秀は信長討伐を誓い将軍のもとを離れて、顕如の居る石山本願寺に向かった。
上杉謙信が織田領土の七尾城を陥落させて、撤退中の織田の援軍を追撃し二千人以上を討ち取り大勝すると、時を合わせ松永久秀が信長の命に背き謀叛を露にする…
本願寺勢を包囲するように命じられていた松永久秀が本願寺包囲の要である織田軍の砦を焼き払う事で反逆を明らかにした…これを受け織田軍は即座に大軍で松永久秀討伐に向かう。
松永久秀 居城
織田の大軍が向かってる事を知った久秀が石山本願寺に伝令を送るよう命じる。
「石山本願寺に援軍を要請しろ」
「私が、直接行ってきます」
「好久か、頼んだぞ」
松永久秀は、信頼している家臣の森好久に伝令を頼んだ… しかし、これが松永久秀の最大の不運になる。
久秀に本願寺への伝令を頼まれた森好久は、松永久秀の命令には従わず織田方の筒井順慶の所に駆け込み松永久秀の状況を報告した…
森好久は筒井順慶の忠実な元家臣で、順慶の筒井城が落城した時に浪人となり新たに使えたのが松永久秀だった…
好久は己の才覚を武器に見事な働きで松永久秀に認められ短期間で近臣にまで登り詰めていた…自信の才能に溺れる松永久秀はやはり才能のある好久を好み可愛いがった…
しかし、当の森好久は筒井順慶が自分の主君だと言う揺るぎない忠誠があり常に筒井家への復帰を望んでいためこの伝令は筒井家復帰のチャンスとなった。
織田軍 筒井城
「好久よく戻って来た」
「いいえ戻ったのではありません順慶様、私は最初から貴方の家臣です!」
うなずく筒井順慶…
「お前に鉄砲隊二百人を預ける、伏兵として松永の城内に待機させこちらの攻撃と呼応しろ」
森好久は計画通り鉄砲隊を城内に待機させて松永久秀には嘘の報告をする。
「顕如様から鉄砲隊二百人を預かって来ました、本願寺には毛利様からも援軍が来るので二三日中に更に援軍を送るとの事です」
「そうか、信長を上杉謙信と毛利輝元で挟み撃ちに出来るな… 上杉様に侵攻を急ぐように伝令を送ってくれ」
当然、森好久は上杉謙信に伝令を送ら無い…
しかも不思議な事に、またしても信長に都合よく敵の大将上杉謙信が倒れた…
上杉軍は謙信の体を気遣い一時撤退を考慮する、武田信玄の時もそうだが松永久秀は後一歩が届かない運命だ…
上杉軍が攻め上がれば織田軍は主力を上杉軍に集中するため石山本願寺の援軍無しでも久秀は籠城戦を凌げただろう、しかし戦国の悪魔は信長に寄り添う。
織田軍が城攻めして来たのに合わせ森好久は伏兵の鉄砲隊二百人と城内から反乱を起こした。
これには、散々裏切り謀叛を企てて来た松永久秀も驚いた‼
「なに?鉄砲隊の反乱だと‼ 好久を呼べ‼」
「そっ、それが…反乱の首謀者が好久様です」
「なんだと‼ 馬鹿なぁ…それでは援軍の要請も伝令もすべて……通じて無いのか…なんと…言うことだぁ…なぜ…なぜ…」
事の次第を悟った久秀は自害を選んだ…天守に火を放ち焼け死んでいく久秀だが炎の熱さを感じて無いかの如く動かないままで焼け死んでいった…
戦国に魅せられ天下を目指し裏切りを繰り返した男の最期は、やはり裏切りによる物で幕を閉じた。
上杉謙信Wikipedia
信長包囲網Wikipedia
毛利輝元Wikipedia
信長公記参照
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