第25話
朝五時。大学に近い駅の構内を肩で風を切るように歩きながら彼氏に電話した。出ないかと思ったら出た。早朝であるにも関わらず。
徹夜でゲームしてた。
掠れた声で開口一番。電話なので開いた口は見えないけれど口元は笑っていないだろうと。
なぜか悲しく思う。彼のゲームを楽しむ姿が好きなのに。
ゾンビ撃ち殺してるけど。弾を装填してるけど。
「猥談をするならどこが適切だと思う?」
猥談?
徹夜越しの頭で考えているようだ。
「深夜のデニーズ?」
「わかった。早朝のファミレスにしよう。」
うそでしょうっ、と彼氏が呻く。
きっとテレビ近くの置き時計か、スマホの時間表示を見ている。
今日じゃないよね?
深夜に外に出るのは怖いもの。
君は車の免許持ってるじゃないか
ほとんど乗らないし。でも、わかった。深夜のどこかにしましょう。
いつもの君だけど君じゃないね。なんだか、打ち合わせ中の、
キャリアウーマンみたいだ。
「キャリア、積めるかな。」
そこだけ弱々しく呟いてみた。
彼を話し合いに誘うために。
早朝、彼と真中とのことについて話せるだけ話す。
待て。待て待て。フリーター小林彩美、さん。
そう、まずは彼女のことでも。
少しでもクッションにして挟みたい。
場合によっては破局だ。そうなったら私は。
彼氏を失う。別れる。
誰が悪いの?
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