第18話

何が楽しいかって、休憩室で、キスまがいのおふざけをフリーター小林の前でやったこと。

本人はお手洗いからすぐ戻ってきて、また私達のデュエットを聞き流していた。話は尽きず、片方に付け入る隙はなく。

アルバイト先から二駅先の行き先は。

「一人暮らしのアパート?!」

「そう」

確実にテンションが上がっている、という言葉は嫌いだ、小林みたいじゃないかと思う。私はボロくて小さなアパートの外観に安心して、いざ初、男友達の家に乗り込むことにした。戦友で共謀者で、就活仲間。そして、部屋は。


「せっま!あっつ!」


「当たり前だよ」

エアコン代もったいないじゃん。真中は小学生のように、ランドセルではなくリュックサックをまさしく男子!というようだーん!と床に置くが、中身がペットボトルだけなのか間抜けなぽこーん、という小さく音まで響き。なんせ、部屋が狭くて音響というものが皆無。自宅やカラオケボックスでトランペットを吹く私とは大違いだ。さらに驚いたのは。

「クローゼットないじゃんっ」

物件というものを探したことがない自分には、ここがいくらでエアコンがついているだけで。

駅近な事に、どれだけのさて家賃がかかるのかという疑問すら、まず湧かなかったが安心した。

ホントに私を部屋に迎えたかっただけなんだ!

その時、私は信じられない行動に出る。

「もう!あっつい!エアコンつけてくれないなら、

脱ぐから!」

私は半袖を脱いだ。なぜか。

楽しかったからだ。といっても下には見せるタンクトップというG Uとかで売っているインナーを着ていた。果たして真中は「オレも暑い!」といって羽織っていた薄手のパーカーみたいな日除けを脱いだ。私達は大学四年生。真中がエアコンのスイッチを、SF映画の主人公が通信機器を作動させるみたいに気取ってONにする。全てがツボにハマっていた。ハマってるって言葉も小林を思い出して嫌だ。私は覚悟した。そのまま下のスキニージーンズも脱いだ。汗を含んでプールの時のスク水とはまた全然違う、じっとりした脱ぎづらさがある。一方。二人して真顔で、今度は順番的に真中がTシャツを脱いだ。

「私、下、下着なんだけど」

私の抗議に、

上半身裸の真中はゆったりとした、スラックスみたいなのの、夏用を脱いだ。

新たに投下しなくてはならない。

「あの距離だと、どう思う?」

「さすがにしてないって思うでしょ」

あそこの店さ、

杜撰だと思う、

監視カメラ半分も作動してないじゃん。

監視。

その言葉にだからなんだと。ここは監視されていない。頭がおかしくなるほどの暑さのなかでくらくらとおもう映らないのは検証済みだ。

二十二歳。私達は奇妙な愛をお互いに感じながら、

全てを脱いだ。

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