第17話

退勤までは通常通りのやり取りをして、タイムカードを押して奥様方にそつなく明日もよろしくお願いします、あ、自分は明日休みです!なんて挨拶して奥様方の前から姿を消し。

はしゃぎながら搬入口エレベーターに乗り、はしゃぎながら一階に降り、

「今日ウチに遊びにこない?!」という真中に

「行くぅー!!」と体を縮こませるよう同意して、歩いて5分の駅まで二人で汗だくで笑い続け、電車を待つ時は二人して含み笑いをしスマホに指を滑らせホームに佇み。

電車が来たら

「何駅ー?」

「二駅。」

「ちっかい!」

「連絡網とかで知ってたクセにっ」とキャッキャッとしつつ、スマホを触りながら乗り込み。

あとはひたすら休憩室での会話の続きをした。ツアーガイドはその国の特徴や穴場、女性相手なら喜ばれるスイーツに金額交渉。相場がどうだか現地の人たちのことはわからないし、利用したこともないが、本気で旅行代理店に勤めたいのかという質問。そもそも何でツアコンの話になったのか。真中の方はちょっと自身の発言に引け目を感じながらそれを思い出すと後で過去のバカな発言ワースト何位かに入るので思ったことを逡巡したのか、パッと言っちゃっただけで就職とか企業の研究もしてないし正直受かりそうなトコロ片っ端から受けて受かったとこにとにかく決めるだけ、長期戦は無理。仲間達と就活の話しながら初めてタバコ吸ったけど、就職したらもっと吸いそう。私はもう、真中に彼氏とは違う親しみに近い愛を感じていた。後にそれがメロンソーダフロートに乗った赤いチェリー見ただけで泣きたくなるくらい後悔することうなろうとは。二駅をしゃべりまくりで過ごす私には人生の眺望が出来なかったし。

真中は真中でこの先。

二本の電話で大学生活どころか、卒業できるかどうか、故郷の親は大丈夫なのかと、休憩室の回転椅子に体育座りしながら、別人のように、項垂れていた。それが多分この夏の、もう思い出したくない。

事件を過ぎた二月ごろ。先に回復したのは、というか、決意したのは、いつだって先手の私だ。

それにあの、こばやし、さんが関わっているのは、切り捨てる。その方が生きやすい。

とにかく未来の話はいい。私達は今、何もわかっていない小林サンをからかえて、最高に気分が良かった。なぜなんだろう。人生サボってる人タチ、みんなにしたい。

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