第13話

小川家から逃げてきたの?


彼女は大人っぽく言う。


父の親戚が小川で、毎日勧誘されました。

小林さん、貴女、母方の苗字を選んだと言いましたよね。でも、小林さんの母方の苗字は、


「小川が嫌いだった。」


私の言葉を静かに彩美さんが遮る。でももっと嫌いな名前ができたの。と続ける。


下の名前よ。


「彩美に比べれば、小川なんてもうね、この街では私が生きていける名前なの。」


小川彩美は続ける。


でも下の名前を変えるのは大変そうだと思って、私は、母についた。この町ならもう安全だしね。


「在有さんはどう?」


私は、エスカルゴを一つ皿の穴から出したり、くり抜くようにスプーンでいつ食べようか思案していた。この料理はすごく熱いのだ油の部分が。


わたし、真中さんとちょっとじゃれあいました。


熱そうなエスカルゴを諦めて白状した。


小川彩美は言う。


「推しカプだったわ。」

「はっ?!」


私は叫ぶ。小林彩美、小川彩美。一体人間最高いくつ名前が持てるのだ。

「女子校育ちと男子校育ち、二人が出会い、北と南で恋をする。」

やめてください!おねがい、やめて。そんな。

まっぴらごめんです!私にはもう、あの人がいるの。


あの時の彼氏だったら素敵ね。


彼女の言葉に私はあの時の彼氏です。と心の中で言う。

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