第4話

日記に独特な表現を思いつく様に思案しながら。

ライトノベル風に、友達との会話を書くときもあれば。

とある男からの言動に大学ノート五、六ページ分くらい思ったことを鬼気迫る思いで、ボールペンを走らせて怒りを露わに記すこともある。

ある日の大学の、池袋の居酒屋で行われた飲み会。

先輩の一人から言われたのだ。


「秋ヶ瀬ってさ、コスプレ、ちょ〜お、似合いそっ!」


レイヤー、という言葉が浮かび、えー、例えばどんなやつですか、と私。と周りの空気に溶けながらサングリアを飲みながら。隣の友達はカシスオレンジ、左の男性の先輩はマンゴーラッシー。


コスプレ支持の先輩は反対側のななめ右。何人かが冷め、何人かはエロい話でもしている様に笑む。


女子高ではこんな空気と下卑た笑み、なかったな。


そう、私は女子高ではエロいBL漫画とエイトフォーと素敵な男性教諭、そして彼氏のいる子話はするものの。生々しいものとはまだ無縁だった。いっそエグいのかもしれない。


あとで聞いた。


あのコスプレの、そう、三田先輩?

あの人トイレでコスプレのえげつない雑誌見てたって。そうあの日。それもさ。


そんなに聞きたくなかった。

ロリータ系と裸エプロンが合体した感じで片足開いてるやつ。


「片足開いてるやつ?」


その友達の説明ではよくわからなかった。


後から知る。コスチュームを着た女性が頭にはヘッドドレス、上半身は前掛けの様なフリル付き生地の、面積の少ない、裸に胸だけ縦に隠れるデザインのエプロン。腕には途中から広がる半透明な生地の三段フリルの姫袖という、三角形の腕留め。腰からは、丸出しの秘部を隠す気のない、これまたパニエでスカートを膨らませた。白と裸体の、胸と秘部を雑誌というかたちだけでも味わう、一部の男性が好む成人雑誌。


見たわけじゃない。友達の情報を元に本屋で彼氏に同じものを見てもらった。


雑誌をためしにパラーとして、見つけてから二秒見て彼氏はすぐ閉じた。


一年浪人してうちの大学に入学してきて、行事の打ち合わせをするうちに、三回遊びに誘ってくれて、その三度目で告白してくれた誠実な人だ。


「僕が守るよ。

あとストーカーの話、いつも家まで送る。」


たのもしい!

わたし、このひととけっこんするかも。


私は、将来。ひらおか書店の給料の安さを覚悟して二年勤め、彼と結婚した。もちろん仕事は継続だ。


実は大学から駅までストーカー被害に遭っていたのだが、彼の行動のおかげでこれは解決する。


そして、私が生まれた県民の特徴の一つ。

とにかく働いてないと気が済まない!


私は転居先でもアルバイトを始めた。

駅の近くの大手百円均一店だ。

アングラでドン・キホーテやヴィレッジ・ヴァンガードじみた隠れ家的な魅力のある。言ってしまえばクセのある、濃ゆい店だ。


私は大学生。生まれた県の駅での書店。転居先の百均。三足の草鞋を履くことになる。


そこで、わたしは生まれて初めて心底冷やかしてやりたい、この世の何も分かってないんじゃないかと思うほど、大学生の闇を知らなすぎるお気楽なフリーター女、小林彩美と出会う。彼女は私の名前に心打たれ、目を輝かせていた。しかし、


そのフリーター女を刺激するための、

仲間、真中と出会う。

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