第18話 先輩


「うーん…」


一言コメントと言われたけれど…、いざ書こうと思うと思いつかないものだな。紹介PVで使うって言っていたから、自分を簡単に紹介する感じでいいんだろうけど。


「…これは参考までなんだけど、他のメンバーたちのコメントが残っていたから、少しだけ紹介するわね」


お!これはありがたい。少し参考にさせてもらおう。


「まずは…この子からいきましょうか。『ファミールに忍術を勉強しにきた古賀しのぶです!より良いクノイチになるために頑張ります!』これはもうわかっているかもしれないけど、あなた達の一個先輩であるWGLの古賀しのぶさんのコメントね」


確かに、これはわかりやすいな。立派なクノイチになるために、ファミールに入ったって言う目標をコメントにしている感じか。


「もう一人は…『我がファミールに入ったからにはもう安心。我に全てを任せておけ!』……、これは、ゾルディパートの竜那賀リュウが言った言葉ね。私もこれが、どう言う意味かはわかってないけど…」


「…ありがとうございます」


まあ、リュウさんっぽいなとは思うけれど…、参考にはならないよ!そんなコメントできるのリュウさんだけでしょ…。


「…もう一人だけ言っておくわね。『俺は、みんなに会うためにここにやってきた。みんなよろしく頼むよ』、これは輪廻の大廻アースが言ったコメントね。視聴者に問いかけているタイプね。見ての通りに、コメントには色々とあるから、好きに書いてくれればいいわ」


なるほど、視聴者に問いかけているタイプもあるのか。確かに、アースさんの配信とかを見ていると、視聴者と仲良く話していたり、面白おかしく色々とやっていたりするからな。


「さあ、どうするか」


ここは……、やっぱ、しのぶさんみたいに目標とかを書いておけばいいかな?それが一番無難だとは思うんだよな。

リュウさんのは、正直あまり参考にはならないし…。視聴者に問いかけると言っても、何を言えばいいのかわからないしな。


「うん、その感じで書いてみよう」


———————————————————————

歌をより良いものにするため、ファミールに入ってきた宇多黒レンと言います。ゲームや雑談も頑張ろうと思っているので、よろしくお願いします!

———————————————————————


「お、いいんじゃないか?」


俺的には、結構いいコメントが書けた気がする。

歌を頑張りたいのは本当だし、ゲームや雑談をしたいのも事実だしね。

やっぱこういうコメントでいいと思うのだよ。



それにしても…、紹介PVかー。

どんな動画になるんだろうか。俺たちのアバターも出るとは思うから、それがどんな感じで紹介されるのかを楽しみにしておこう。

…あまりにもスケールがデカすぎると、ネットとかで話題になって、初配信の時とか大変な目に遭いそうだから、そこまでデカくしないで欲しいけど。

うん、今は楽しみに待っておこう。このコメントもどこで出てくるのかもわからないから、それも楽しみにしておこっかな。



「…みんな、書き終わったかな?」


「私は書き終わりましたー」


「私もです」


「俺も大丈夫です」


全員がそれぞれ返していく。


「そう、なら次は…、レコーディング部屋を案内しましょうか。初配信の準備はそのあとで」


レコーディング部屋か。vtuber事務所にそれがあるって、今思うと本当にすごいな。

俺は今まで歌ってみたをとる時は、家にある少しだけ高いマイクで歌っていたから、そういうちゃんとした部屋でとれるっていうのは嬉しいな。

一体どんな部屋になっているんだろうか。


「鈴木さん、案内してくれる?」


「わかりました。みなさん、私が案内しますので着いてきてくださいね」


「わかりました」


こうして俺たちは、レコーディング部屋に向かった。



——————————————————————


「…ここが、レコーディング部屋です。隣にもう一つレコーディング部屋があるんですが…、こっちも後々みなさんも使うと思うので覚えておいてくださいね」


「わかりました」


レコーディング部屋が二つもあるのか…。マジですごいな。

そして、これが少し驚いたことなのだが、ファミールの事務所は何個かの館に分かれていたのだ。

俺たちが集まっていた場所は南館らしく、俺たちは今中央館にいる。他にも、北、東、西の館もあり、とても広くなっていたのだ。


これは早く場所を覚えていかないと、事務所内で迷子になってしまいそうだな…。


「では、入りますね」


ガチャっ


鈴木さんはそう言うと、レコーディング部屋をゆっくりと開けた。


「わぁ…、綺麗」


「とても広いです」


「これは…すごいな」


部屋に入ると、そこには広くて、綺麗な部屋が目に入ってきた。見渡すと、マイクが何個か立っていたり、少し奥の方にいくと個室も何個か設置してあったのだ。


「ここがレコーディング部屋です。マイクが何個か立っていると思いますが、そこで何人かと一緒に歌ってみたをとることもできるようになっています。奥の方には個室もあるので、そこでとることも可能になっていますね。もちろん、練習のために来るのも大丈夫ですよ」


「え…、私達ってもうここで歌ってみたをとっても良いんですか?」


もみじさんが鈴木さんに聞く。


「はい、大丈夫ですよ。ただ、他のメンバーもよく使っているので、レコーディング部屋がある中央館3階の広間にある、ホワイトボードを見て、空いていれば使ってもらっても大丈夫ですよ」


あ、確かにそんなものがおいてあった気がするな…。それを確認して空いていれば、とっても大丈夫なんだな。

歌いてをやっていた身からすれば、ぜひこのレコーディング部屋でとってみたいな…。特に奥にある個室を使いたい。


「さっき確認したら、次使う人までまだ時間があるので、少し見てきてもらっても大丈夫ですよ。時間になったらこちらでお知らせしますので」


「良いんですか!?」


俺はその言葉を聞いてすぐに反応してしまう。

そんなこと言われたら、反応しちゃうって…。


「はい、大丈夫ですよ。変なことはしないでくださいね」


「わかりました。ありがとうございます!」


「ありがとうございます」


俺の返事に次いで、シズさん、もみじさんも返事をする。二人も見て回れることが楽しみにしているように見えるな。


俺は早速、レコーディング部屋を見回りまわった。


——————————————————————


「皆さんー。もうそろそろ時間になりますので、こっちに集まってもらえますか?」


俺たちが部屋を見回ってから、約30分が経ったぐらいに鈴木さんから集合の合図があった。

30分も時間があったおかげで、俺も結構たくさん見ることができて、マイクなどの録音機械など様々なものを見ることができた。


中でも一番すごいなと思ったのが、奥にあった個室だ。その中にもマイクなど色々とあったのだが、歌の練習もできるようにカラオケのようなものもおいてあったのだ。ヘッドホンもおいてあり、自分の声が聞こえてくるようにもなっているらしい。もちろん、歌ってみたの収録もできるようになっている。


「皆さん集まりましたね。では、これから戻りますので、また着いてきてください」


「わかりました」


俺たちは、レコーディング部屋をでて、はじめの部屋に戻るために、同じ道を戻ろうとした。



……



その時だった、


「あれ、あまり見ない顔の子達がいるな」


「そうね、私もみたことないわ」


俺たちが、ちょうど廊下を戻っていた時、知らない人に声をかけられた。


……いや、知らない人ではないな。俺はこの声に聞き覚えがある。

太陽さんの一件以来、俺はいろんな人の配信を見まくったからな。


「あ、エリスさん、ノイロスさん、お久しぶりです」


ミスロジーに所属している、エリス・アンバーさんと、ノイロス・オットバーさんだ。

ミスロジーは、エリス・アンバー、ノイロス・オートバー、アラジア・ミーズ、イクロス・ポッセ、クレイ・オーズの5人からなるグループでそれぞれ、エリス、ノイロス、アラジア、イクロス、クレイとよく呼ばれている。配信を見ていると、たまに下の名前で呼ぶ人がいたり、ニックネームで読んでいる人もいるけれど。


…当たり前のことだが、この名前はvtuberとしての名前であるから、実際に会うとバリバリの日本人なんだよな。すこーしだけ違和感を感じるけど、慣れていかないと。


「鈴木マネージャーさんか。そこの三人は?」


「はい、新しくデビューする新人の方達です」


「…え?!もう新人さんがくるのね!太陽がなんか言ってるのは切り抜きで見てたけど…まさか本当だったなんてね。私は、エリス・アンバーよ。よろしくね」


「俺は、ノイロス・オートバーだ。よろしくな」


お二方が俺たちに挨拶をしてくれる。

これは俺たちも挨拶をしないといけないな。

やばい…先輩に会うのがこれが初めてだからか、めっちゃ緊張するな。これから、何十人の先輩方と会うって言うのに…。


「は、はじめまして。新しくファミールにデビューすることになったRINGの凪威シズと言います。よろしくお願いします」


シズさんが、先に挨拶をしてくれる。

少し緊張してそうに見えるけど、はじめに挨拶をしてくれるのは、マジでありがたい。


「同じく、RINGの和泉もみじです。よろしくお願いします」


「お、同じく、RINGの宇多黒レンです。よろしくお願いします」


もみじさん、俺と順に挨拶をしていく。

緊張がすごいせいか、少し噛んでしまった…。

こう言うところは直していかないとな。確か、シズさんやもみじさんと初めて会った時も、こんな感じになっていた気がするからな。


「へえ、RINGって言うユニット名なのね!よろしくね」


「鈴木マネージャーさん、この子達っていつデビューなんですか」


「7月8日の土曜日を予定しています」


「お、もうすぐじゃないか。…初配信はマジで緊張するから頑張れよ」


やっぱり緊張するのか…。ノイロスさんが言うってことは本当なんだろうな…。


「緊張してたのはあなただけじゃない?私は楽しくやってたけどね!」


…逆に、エリスさんは楽しんでいたらしい。


「それはお前がすごいだけだ。他の3人も緊張したとは言ってたじゃないか」


「ええー…、あんなに楽しかったのに…。あなた達は楽しみなさいよ。初配信なんて、一生に一回しかないんだから」


「…多分、俺は緊張すると思いますよ…。今でさえ、緊張してるんで…」


「私も…、少しは緊張すると思います」


「私も今は大丈夫ですけど、当日になると…」


俺、シズさん、もみじさんの順に言っていく。

うん、初配信なんて緊張するに決まってるんだよな。…初めての配信なんだし。


「ほらな。やっぱお前がおかしいだけなんだよ…」


「…絶対楽しんだ方がいいと思うのに。まあ、緊張はするかもしれないけど、楽しめばそんなの消えるから、頑張りなさい!私たちも楽しみにしているわ」


「そうだな、楽しみにしているよ」


うっ、そんな事言われると余計に緊張してきちゃうんですよ…。先輩方…。


「すいません。こちらも時間があるので、これで失礼しますね」


「あ、時間取らしちゃってごめんなさい…。じゃあ、またね、シズ、もみじ、レン。またコラボとかしましょうね」


「困ったことがあれば、気軽に話しかけてもいいからな」


…マジでいい人達なんだな。

名前ももう覚えてくれているし、困ったことがあれば頼ってもいいって言ってくれるなんて…、本当に嬉しい。


「ありがとうございます!その時はよろしくお願いします」


「ありがとうございます」


「ありがとうございます!」


先輩方は、俺たちの言葉を聞くと、手を振ってどこかに歩いて行った。


「いい先輩達でしょう?ファミールの方達は本当にいい人だらけなので、気軽に話しかけてみてください。では、改めて部屋に向かいますね」


俺たちはまた、部屋に向かって歩き出した。

ああ言う先輩達になれるように頑張ろう。



——————————————————————

投稿が遅くなって申し訳ありません。

少し体調を崩していて、書くことができていませんでした。

けど、今は大丈夫なので、また少しずつ書いていこうと思います!


そして、コメントもありがとうございます。

もし、文章などで読みにくいところ、直して欲しいところなどあれば、是非コメントをしてください。

僕の文章力も上がると思いますので、よろしくお願いします。


また引き続き、評価や誤字脱字の報告もよろしくお願いします。



















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る