第17話 初配信日…決定!

二週間後


この二週間、俺は、ファミールの配信や動画、ライブを見たり、歌・ピアノの練習、『神とともに』を聴いて覚えるなどなど、さまざまなことをして、時間を潰していた。


そして今日、俺はまた、イルコードで連絡のあった時間にファミールの事務所を訪れていた。

まだ、今日やる事とか何も知らないけど…、何をやるんだろう。


「あ、レンさん、お久しぶりです」


「鈴木さん、お久しぶりです」


俺が、事務所の入り口に入っていくと、前と同じように、マネージャーである鈴木さんが待ってくれていた。


「部屋は前と同じですので、そこで待っておいてください。私は、シズさんを待っていますので」


お、前は一番最後だったけど、今回は2番目か。

少し早く家を出た甲斐があったかな。ま、そんな順番なんて関係ないんだけどね。


「わかりました」



鈴木さんの指示通り、俺は前と同じ部屋に向かっていった。


ガチャっ


「失礼します…」


前回と同じ部屋だが、なんと言って入っていけばいいのかわからなく、失礼しますと言ってしまった…。まあ、何も言わないで入るよりかはいいでしょう。


「あ、レンくんお久しぶりです」


「もみじさん、お久しぶりです」


「はい。ちゃんと、vtuber名で呼べていますね」


そうなのだ。前回社長から言われた通り、今日からはvtuberとしての名前で呼ばないといけない。


「もみじさんは、前と同じ呼び方ですからね。けど、くら…、シズさんは前と呼び方が違うんですよね」


「そうですね。レンくんも同じ呼び方ですので、そのままでいいんですけど、シズさんは前と違いますから」


そっか、もみじさんも倉井さん呼びだったのか。

俺も倉井さん呼びだったから、シズさんと呼ぶのはまだ慣れないな。本当は、凪威さんと呼ぶのもいいかなと思ったけれど…、これから一緒にやっていく仲間なんだし、名前で呼ぼうと考えた。


「なんか…、vtuber名で呼びあうと、いまさらになってvtuberになったなって実感しますね」


俺は、思っていたことをもみじさんに聞いてみる。


「わかります!やっと、ずっと好きだったvtuberになれたんだって…。本当に嬉しいです」


そういうと、もみじさんは少し微笑む。

やっぱり、もみじさんもvtuberになれたことを実感しているらしい。

宇多黒レン。vtuberとしての名前があるだけで、ここまで違うとは…。


ガチャっ


「失礼しますー…。あ、レンくん、もみじちゃん、久しぶりー」


俺たちが、少し雑談をしていると、シズさんも部屋に入ってきた。

これで、RINGの3人が揃ったな。


「お久しぶりです、シズさん」


「久しぶりです、…シズさん」


うん、なんか面と向かって、名前で呼ぶと少し緊張するな。


「お、ちゃんとvtuber名で呼んでるね。私は、二人とも前と同じ呼び方だから、変わらないけどね」


「…まだ、全然呼び慣れてないんですけどね」


「まあまあ、こらからは三人で色々とやっていくんだから、そのうち慣れるって!」


「…そうですよね。これから私たち、長い付き合いになると思いますし、慣れますよね」


「うんうん。けど…、やっぱりそんな風に呼ばれると、やっとvtuberになれたなって感じるね」


そう言うと、シズさんは、少し微笑む。

おーー、俺がさっきもみじさんと話していたことを、シズさんも感じていたらしい。


「それ、さっき俺たちも話してたんですよ。やっと、vtuberになれたんだなって」


「そうだったの?やっぱ名前があって、それで呼ばれるってだけで全然違うんだね。私なんて本名の”倉井静”と同じ名前なのに」


「俺も、”伊東蓮”で同じ名前ですよ」


そう、俺も、本名とvtuber名が同じになっている。


「私だけが、”紅葉沙耶”で、苗字が名前になってるんですよね。けど、私もよく、紅葉と呼ばれていたので、そんなに変わらないと思います」


確かに…、俺ももみじさんのことは、紅葉さんと呼んでいたしな。…まあ、いきなり名前で呼ぶことなんてできるはずがないんだけどね。あの時の俺、緊張しっぱなしだったし。


「じゃー、みんなよく呼ばれてる名前になってるんだね。それなのに、嬉しく感じるなんて……、流石はvtuberなだけあるね」


「そうですね」


…うん、いい感じにvtuber雑談が進んでいて、いいな。今回は、前回よりも緊張していないから、俺もスムーズに話すことができていると思う。

やっぱ、vtuberっていう共通の話題があると話しやすい。


こんな感じで、俺たちはトークを続けた。




ガチャっ


「入るわよ。全員揃っているかしら?」


「失礼します」


そうこう話しているうちに、社長とマネージャーの鈴木さんが入ってきた。


「はい、全員揃ってます」


「そう。なら、今日やることを話すから、ちゃんと聞いておいてね。とっても大事なことだから。あ、座ってもいいわよ」


「わかりました」


俺たちは、社長の言葉を聞くと、近くにあった椅子にそれぞれ座っていく。

とっても大事なこと…。社長が言うんだから、それほど大事なのだろう。緊張してくるよ…。


「うん、みんな座ったわね。なら、もう一番初めに大事なことを話しちゃうわね」


その言葉を聞くと、俺、もみじさん、シズさんは、真剣な顔をして、社長の話しを聞く。


「…初配信日が決まったわ。一ヶ月後の、7月8日土曜日、19時から順次行っていく予定よ」


「「…!」」


ついに…ついに決まったのか。

初配信と言えば、vtuberとしての初めての配信であり、やっとファミールの一員として、vtuberになれるということでもある。

いつなのだろうとは思っていたけれど、一ヶ月後か…。やばい、いきなり緊張が…。



「で、その初配信の順番なんだけど…、鈴木さん教えてあげて」


「はい、わかりました」


そうだ、この初配信の順番も大事だ。一番初めとかだったら、緊張がえげつなくなると思うし…。いや、早めにやってしまう方がいいのか…?

…もう、何番目でもいいや。


「まず一番初めが…凪威シズさんです」


「…!わ、わかりました。がんばります」


確かに…、シズさんなら、トップバッターに向いてそうだ。なんとなく、リーダーシップみたいなものを持っているなと感じたし。


「次に行うのが…和泉もみじさんです」


「…、はい、わかりました」


2番目にもみじさん…、女性二人を先に行うパターンか。

…てことは…、


「そして、最後に行うのが、宇多黒レンさんです」


「…、わ、わかりました」


やばいっっって………!

まさかの一番最後だよ…。最後って、二人の配信を見てから行えるけど…、その分ハードルとか上がりそうじゃないですか…。


「順番に関しては、こちらで決めましたが、深い意味はないので、それぞれ頑張ってくださいね」


「ありがとう、鈴木さん。次に、初配信について少し説明していくわね。これも大事だからよく聞いておいてね」


俺たちは、首を縦に動かし、また社長の言葉に耳を傾ける。


「まず、配信時間は一人30分となっているわ。19時から19時30分がシズさん、19時30分から20時がもみじさん、20時から20時30分がレンくんっていうことになるわね。そして、初配信で必ずやっておいてほしいことが自己紹介ね。それと、これはできればいいんだけど、配信のタグや、リスナー名とかも決めれたら決めちゃって。けど、これは後々決めていくでも大丈夫よ」


なるほど…。

一人30分だと、今は結構長く感じるのだが、やって見ると意外とすぐだったりするんだろうな。

うーん、自己紹介か。やっぱ特技とか…、長所とか…、ファミールに入っての目標とかだったりを話せばいいのかな。けど、自己紹介だけで30分持たせることは絶対できないから、タグとかを決めるのもいいかもなー。ちょっと家に帰ってから、初配信でやることを考えておこう。


「そして、今は初配信について話していたけど…、その次の日の日曜日にも配信をしてもらうわ。この配信は三人…、プラスαで行って、チャンネルはファミール公式でやる予定よ。土曜日の初配信は各々の家で行ってもらうけれど、この日曜の配信は、ファミール事務所で行ってもらうことになっているわ」


日曜にも配信があるのか。しかも、三人…、プラスαってなんだ?


「あの、プラスαっていうのは…」


「まあ気になるわよね。けどそれは、当日の楽しみってことで」


社長が少し微笑みながら言う。

マジかよ。だったら、その日に初めて会って、一緒に配信するってことか。…初配信だけでも緊張してるのに、少し増してきたよ。


「すいません、日曜日の配信っていうのは、何をやるんですか?」


シズさんが質問をする。

確かに、何をやるんだろう。


「うーん、これも当日の楽しみって言いたいけど…、まあ、アナログゲームやクイズとかをやってもらう感じね。それを通して、どんな人物なのかを知ってもらうためにね。だから、楽しんでくれれば大丈夫よ」


おー、なんだか公式番組っぽいことをやるんだな。

これはちょっと楽しみだ。俺も、公式番組とかは、見ていて面白いなとは思っていたから、こういうことをやれるのはちょっと嬉しい。


「質問はもういいかしら?なら次は…鈴木さん、お願いするわ」


「わかりました」


社長の言葉を聞くと、鈴木さんは、三枚の紙を取り出して、話しをし始める。


「イルコードでも連絡しましたが、三人のアバターが決定致しましたので、三人にも見せようと思います。まだ自分以外の二人が、どのようなアバターかを知らないと思いますので」


そう言うと、鈴木さんは机の上に、三つの紙をおく。


「「おーー」」


「わー!二人とも可愛いし、かっこいいじゃん!」


「シズさんも可愛いですよ!」


「そう?ありがとう!」


うわー、本当に綺麗に描けてるな。さすがは、小説や漫画、アニメなどの絵を描いているだけあるなって感じる。

それにしても…


「もみじさんは、白髪なんですね」


「そうなんですよ、三つぐらい案があったんですけど、意外と白髪がいいなって感じて」


「うん、似合ってるよ!それに、和服な感じの服にも合っているし」


そうなのだ、もみじさんのアバターは、肩にかかるぐらいの長さの白い髪に、それに合うような白色をメインにした和服を着ている。

今の、もみじさんと似ている部分もあるけけど、白髪というのは驚いた。


そして、シズさんはと言うと、


「シズさんは茶髪にしたんですね」


そう、シズさんは茶髪にしていた。

これも少し意外かもしれない。


「そうなの、私も案は色々と合ったけど、茶髪かつこの服装っていうのが一番ピンッときたからね」


シズさんのアバターは、茶髪をショートカットよりかは長め、肩に少しかからないぐらいの長さにしており、服装は現代風のおしゃれなものになっている。今のシズさんとも、似ているところが多いな。


俺のアバターは、前送られてきて、選んだものであるので大丈夫だろう。


「これが、三人のアバターですね。同じRINGの仲間ですので、ちゃんと覚えておいてくださいね。そして、もしアバターが動かせれるようになれば、すぐに送りますので、それまではお待ちください」


そっか、このアバターを動かせるようになるのか。

楽しみだな。それと、初配信までにちゃんと動かせるかどうかも確認しておかないとな。




「よし、これで一番大事なことは言い終わったから…、今日やることを言うわね」


あ、そうだ、まだ今日やることを聞いていなかった。もう、初配信とアバターについてで、頭がいっぱいになっていた。


「そうは言っても、そこまでやることはないんだけど…、まずは、今月末ぐらいに、新人紹介のPVを動画にしようと思うんだけど、そこで一言コメントがほしいから、そのアバターの書いてある紙の裏に、そのコメントを書く。これが一個目ね。そして、初配信で何をやるのかを考える。これが二個目。で、三個目なんだけど…、確か貴方達、歌ってみたを出したいって言ってたわよね?だから、それのレコーディングができる場所を紹介するわ。今日はこの三つぐらいね」


なるほど、コメントに、初配信準備に、歌ってみたについてか。

これは、三つとも大事だな。

特に、初配信の準備については、二人が何をやるのかとか、他のファミールメンバーが何をやっていたのかなど、聞きたいことが色々とある。


「まずは、コメントね。時間を取るから、ゆっくり考えてちょうだい」


その言葉を聞き、俺たちはコメントを考え始めた。


——————————————————————


やっと初配信までいけそうです。長かった…。


もし誤字脱字等があればよろしくお願いします。

また、引き続き評価の方もよろしくお願いします。





















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