エピローグ
第42話 これからも一生エレンの事をそばで守っていきたいって思ってる
エレンと初めて一つになったあの日から早いものでもう一年近くが経過していた。3月1日の今日は全国的に高校の卒業式の日であり、うちの学校もその例外では無い。
「ついに今日で俺達も高校を卒業するのか」
「思い出もたくさんあるからちょっと名残惜しいよね」
正直辛い事も多かった高校3年間だったが楽しい事も同じくらいたくさんあったのだ。だから明日からもうここに来なくなる事を考えるとそこはかとない寂しさを感じていた。
「後は大学の合格発表がどうなるかだよな」
「私達2人とも受かってるといいな」
東京州立大学を受験した俺達だったが、合格発表はもう少しだけ先だ。滑り止めとして受験した私立大学には合格しているため4月からは一応大学生になれる。
できればエレンと同じ大学に進学したいと思っているが、どちらかが不合格になった場合も大きな問題は無い。
なぜならお互い東京の大学以外には進学する気が無く、4月から2人で同棲する事も既に決まっているからだ。つまり俺達2人が離れ離れになる事はない。
これから始まる大学生活に色々と不安な事もあるが、エレンと一緒なのだからきっと大丈夫なはずだ。
「……そろそろ時間だし行こうか」
「あっ、もうそんな時間なんだ。卒業式に遅刻とかちょっと洒落にならないもんね」
朝登校してから屋上で話していた俺達だったが、そろそろ教室に戻らなければ間に合わなくなってしまう。
俺達は抱き合ってキスをしてからそれぞれ教室に戻った。それから体育館へと並んで移動し、卒業生が全員が着席したところでいよいよ卒業式が始まる。そして国歌と校歌を斉唱した後、卒業証書の授与となった。
うちの高校では全員が名前を呼ばれて起立するものの、校長先生から卒業証書を実際に受け取るのは代表者だけで、その他大勢は教室で渡される形になっている。
クラス順に名前を呼ばれて次々に起立し始める俺達卒業生だったが、水瀬有紀と飛龍ヒカル、如月アランが呼ばれる事は無かった。
理由は簡単で3人とも既に学校を退学をしているからだ。水瀬さんは結局テストで赤点を取り続けた事が原因で強制退学になっていた。
アランが家から勘当されて退学するまでは何とか頑張って赤点を回避していたらしい。だがアランが居なくなってからは駄目だったようだ。ヒカルとアランに関しては言うまでもない。
ちなみにアランの退学の余波で彼女だった佐伯さんが発狂したり、千束から復縁を申し込まれるなどのイベントが発生した事はまた別の話だ。そんな事を思い出しているうちに時間はどんどん過ぎ、気付けば卒業式が終わっていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
卒業式が終わった夜、私と快斗君はお洒落なレストランで2人きりの打ち上げをしている。お互い仲の良いクラスメイト達から色々誘われてはいたものの、どうしても2人きりが良かったため全て断っていた。
ただし、私と快斗君のバカップルぶりは学校中に知れ渡っていたため、2人きりになりたいと話すと皆んなすんなりと納得してくれた事は言うまでもない。
料理を食べながらしばらく2人で色々な話をして盛り上がっていたわけだが、突然快斗君が黙り込んでしまう。そんな様子を見た私は快斗君がアクションを起こすまでただひたすら待つ事にする。
「実はさ、今日はエレンに大切な話があるんだ」
「うん、勿論いいよ。よろしくね」
「……えっ、俺まだ何も言ってないんだけど!?」
話の内容を一切聞く事なくそう答えると快斗君は驚いたような表情になった。だが別に私は快斗君から何を頼まれたって構わない。だって私の身と心は快斗君だけの物であり、快斗君の身と心も私だけの物なのだから。
「まあ、そこまで決心したような顔になったのに何も聞かないってのは流石に可哀想だから聞いてあげるよ」
「うーん、なんか調子狂うな……」
快斗君は何とも言えない表情でそう呟きつつも、一旦仕切り直してから改めて口を開く。
「今までエレンの事は何があっても必ず俺が守ってみせるって言っただろ」
「言ってたね」
それは小学生時代から快斗君が度々口にしてきた言葉だったため忘れるはずが無かった。実際に私は何度も助けられてきたため、快斗君は有言実行していたと言える。
「その気持ちは今でも全く変わってないよ。これからも一生エレンの事をそばで守っていきたいって思ってる」
それは紛れもなく快斗君から私に対するプロポーズの言葉だった。将来は快斗君と幸せな未来を歩む事が分かっていても、嬉しいものは嬉しいのだ。そんな事を思っていると快斗君はそのまま言葉を続ける。
「本当は今すぐにでも結婚したいところだけど経済的な事とかを考えると残念ながらそれは難しい。だから大学を卒業する日に結婚しよう、その時に改めてもう1回プロポーズするよ」
「そっか、じゃあそれまでは婚約者だね」
「ああ、これからもよろしくな。エレン」
「うん、こちらこそよろしくね。快斗君」
こうして私達は恋人から婚約者へと無事にステップアップを果たした。
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