第11話・放課後俱楽部。
「今日はここまで、各自、自習を怠らないこと。」
講師の宣言で授業が終わる。
初日なので早い解散だ。
グラントが既にカバンに収納してイソイソと席を立つ。
追い越しざまにグラントが呟く。
”噂は直ぐに消えるさ、ソレ迄は…。”
言いたいことは分かる。
続きは”俺を巻き込むな。”であろう。
仕方がないので…。
寮に戻ろう。
廊下を出ると…。
下校で込み合う廊下に謎の空間が出来ている。
空間の発生源が壁に立つ一人の女生徒だ。
生徒達に謎の緊張感が走っている。
犬耳幼女が居ないのが気に成ったが状況判断で自然に行動に移す。
極自然に生徒に紛れるように通過する。
僕は斥候の講習では褒められた!
常に遮蔽物を利用すること!
「バリエンテさん、ちょっと宜しいでしょうか。」
声が掛かると一斉に
謎の空間が繋がる。
隠れ様がない!
「はっ!なんでしょうか?」
直立敬礼で上官に向き直る。
「え、なに?なにこれ。」
謎空間に取り残されているリリーさん。
僕の三歩後ろを歩いていたのか、王国庶民の危険察知に付いていけない様子だ。
「軍人みたい…。」
呟くお嬢様。
仕方がない、ビゴーニュ幼年学校は初期教育で行き成り行進練習だ。
静かに距離を取った生徒達が一斉に走り出している。
急速に廊下が無人になる。
敬礼のまま傾聴。
「バリエンテさん、わたくし達は放課後俱楽部の図書室研究会と言う活動を行っています。」
絶対面倒事だ!!
「はい!」
「バリエンテさん参加しませんか?」
「お断りします!」(即答)
「そうですか…。(フン)」
何故か鼻で笑われた。
「活動内容は、魔法の技術向上とトーナメントへの上位を目指すこと…。魔物を倒す訓練もあります。」
断ったのに普通に説明してきた!!
「僕は剣術が苦手…。いえ、感がありません。」
「そうなの?男の人なのに珍しいわ。」
驚くお嬢様…。良いぞ。
「はい、向いてません。」
「そうですか…。」
強調する。
「はい、大変残念です。お断り申し上げます。」
「こまったわ、この研究会はお父様が立ち上げた由緒正しい研究会なのよ。
にこやかに困った顔をする…。
貴族特有の意思を押し通す表情。
これは断れないヤツだ。
「あの…。では、体験入会と言う事で。」
よし、23回出てこっそり消えよう。
「あ、あの、わたくしも参加させてください。」
リリーさんの声だ。
たぶん帝国式の貴族の礼をしている。
「あら、どなたかしら。」
何か…。お嬢様は冷たい。
「わたくしの名はリリー・デ・フロンタル。カルロス・ペニャーリア帝国、フロンタルの出身で亡くなった父は騎士で男爵を名乗っていました。」
「帝国の貴族…。フロンタル…。南のほうね。カーレーの方かしら?」
酷く冷たい顔の…。
え?なにこわい。
「いえ、カーレー領とは…。馬車で5日位ですね。お天気が良ければ。」
「行ったことはあるのね?」
「はい…。」
「カーレー伯爵とは会ったことがあるのかしら?」
「いえいえ、そんな偉い方とはお会いできる身分ではないので…。本当に田舎の騎士で…。」
全力で首を振るリリーさん。
「バリエンテさん。」
声が冷たい。
「はい!」
思わず気を付けをしてしまう。
「この方とはお知り合い?」
「合格発表で初めて知り会って…。席も近いのでよく話をします。」
リリーさんを見る。
「帝国から一人でこの国に来ました、魔法使いを目指しています。まだ知り合いも少ないのです。」
リリーさんが説明した。
「では、クロデラート公爵とは?」
「クロデラート…。領地に入ったことは無いですが…。出身の商人は知っている程度です。」
「そう…。」
難しい顔のお嬢様…。
「僕と同じ体験入会ということで…。」
リリーさんだけ残して僕だけこっそり消えよう。
リリーさんなら貴族だから何とか成るだろう。
「まあ…。良いでしょう。バリエンテさん、リリーさん放課後俱楽部、図書室研究会にようこそ。わたくしはエリザヴェータ・フランチェスカです母は男爵、父はビゴーニュ辺境伯です。歓迎しますわ。」
「ありがとうございます!」
喜ぶリリーさん。
「変な事をすると死んでいただきます。」
フランチェスカ様がゆっくりと言い放った。
「へ、変なこと!」
顔を青くして叫ぶリリーさん。
さすがに僕も引く。
「変なことってなんですか!!フランチェスカ様!」
「さあ…。思い付かないのならソレで宜しいでしょう。警備に騎士の方がおりますので。度が過ぎれば切られる事もあるでしょう。」
当たり前の事を質問された…。
そんな困った顔をするフランチェスカ様。
そんな命懸けの放課後俱楽部は嫌だ。
反応を十分に楽しんだフランチェスカ様が笑顔で答える。
「多分あなた方が思いもしない様な変なこと…。です。」
「はいっ!大人しく倶楽部活動に勤しみます。」
流石貴族のリリーさん。
復活が早い。
「僕も節度を守り倶楽部活動に参加します!!」
「では図書室へご案内しますわ。」
「「はい!!」」
3歩進んでお嬢様が振り向いた。
「ああ、わたくしはエリザヴェータと呼んで下さい、長いならエリザでいいわ。」
振り向いた笑顔はあの時の初めて見た笑顔と同じだった…。
ああ。
絶対。
面白がっている。
(#◎皿◎´)モブ式奥義!こっそり消える。
(´・ω・`)作者も2次会の宴のたけなわ位で…。(支払いの話が出る前に消えます。)
次の更新予定
2024年6月3日 08:00
婚約破棄された伯爵令嬢は悪女を目指す。-そうしないと御家の危機だそうです。- 焼肉バンタム @arino_ryousi
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