第9話・授業。1
昼食が終わり…。
午後の講義が始まる前の騒がしい教室に入ると…。
一斉に僕に視線が集まった。
”ほら…。あの人”、”ハイソクラスのお誘いを断った。”、”やべぇ奴じゃん。”
静寂な教室内に同級生が囁く低い声。
”確か入学試験で貴族と言い争ってた。”、”今日断ったのは貴族じゃなくて王族、王太子の取り巻き。”、”クソヤバ案件”
三歩で止まって硬直する僕を…。
追い越しざまにグラントが呟く。
”俺を巻き込むな。”
目を合わせもしない。
”ごめんなさい、目立ちたくないの。”
素っ気なく後ろを通るリリーさん。
言う事は理解できる。
只でさえ帝国の人はこの国で良く思われない。
でも…。
不条理を心に押し込め、そのままぎこちなく席に座る。
何故か僕の周りに空間が出来ているような気がする…。
講師が入ってきて恐らく上級生と思われる生徒が数人続く…。
皆、水差しを抱いている。
「はい、席に着きなさい。今日はマグカップを使った基本操作から始める。」
全員が入学したときに買わされたマグカップを机の上に出す。
僕は母から貰ったマグカップをカバンから出す。
講師が説明している間に水差しを持った上級生達が各席に配置される。
10人程度に上級生が一人の様子だ。
長机を挟んで水差しの中身を順番に注ぎながら生徒の前を通過する。
次は僕の番だ。
僕の前に立つ女生徒が水差しを机の上のコップに注ごうとして止まる。
「先生、コレは良いのですか?」
空のコップを指さし教壇に叫ぶ上級生。
講師が遠目で机の上のものを見ている…。
「その生徒、コップを持ってきなさい。」
指示に席を立ち。
「はい、」
コップを持って教壇に進む。
視線が集まっている。
「ふむ。見せなさい。」
教壇を挟んで講師に渡す。
「どうぞ、」
銅製の古いコップを受け取った講師は…。
上下左右から銅のコップを観察する。
水差し女生徒が追いついた。
ちょっと恥ずかしい。(御古な為)
「うーん。ああ、初期型だね。」
珍しい物を見た様に観察する講師。
「初期型?」
水差しを持った上級生が首を傾げる。
「うむ、初期型だ間違いない。前の学園長が持っていたのと同じカップだ。授業には問題ない。」
カップは返却された。
「「初期型?」家宝か?」
ざわ・・。ざわ・・。する生徒席。
「はい、母がこの学園の卒業なので…。お古です。」
語尾がかすむ。
「ふむ。」
手元の冊子を見る講師。
「ああ、君はナンバーズか。」
「はい?」
勝手に納得した様子の講師。
「あの…。何でしょうか?」
水差しを持った女生徒が講師に尋ねる。
「うん。問題ない。こちら側の問題だ。席に着きなさい、授業を進める。」
講師のいい加減な返事で生徒が不安毛になる。
いや、僕を見るのはヤメテくれ。
「席に着きなさい。」
「「「はい!」」」
「では始めよう。君達のカップの中には魔力を持った液体が…。」
ああ、散々邦国で行った初期訓練だ。
幼年でやる内容だ、逆上がりと懸垂の方が難しい。
僕は剣術がモッサリで弓と斥候で単位を取った。
幼い頃から弓は母から教えてもらった。
斥候の座学は計算だけなので楽だ。
地図上の山頂で現物を2つ以上見つけて
現地で目視の地図の作り方と紙の地図による地形の予測。
僕は自作の四分儀での天測の方が得意だ。
携帯日時計しかないので、制度が悪い。
早く機械式時計が欲しい…。
高額なので買えない。
このカップもそうだ。
母はこのカップをご領主様から授かった。
「僕には何も与えられていない…。だから考えないと。」
魔力が満たされた水が入ったカップを握る。
「がんばるぞい!!」
近くの席のリリーさん気合の入った声が聞こえる。
そうだ!
僕も頑張らないと!!
人の役に立つ!
(#◎皿◎´)身を建て名を揚げ!
(´・ω・`)…。(イザさらば。)
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