第24話 一世一代の賭け

 ヘヴィメタさんのフィールドには《重機装甲強化ヘヴィメタルコート》でパワーアップした《重機装甲ヘヴィメタルーガトリングドラゴン》がいるのに俺のフィールドにはモンスターがいない。ライフも残り600。このままターンを渡すわけにはいかない。

「墓地の《虹彩騎士こうさいきしーオーバー・ザ・レインボー》の効果発動!墓地から《虹彩騎士ーバイオレットナイト》、《虹彩騎士ーフレアナイト》、《孤高のプライド》を除外してで復活させる!」


「おおっと、これはどういうことでしょう!?オーバー・ザ・レインボーは攻撃力2500でガトリングドラゴンは攻撃力3100!次のターンヘヴィメタがガトリングドラゴンで攻撃すれば600しかないユーグのライフは尽き、勝敗は決まってしまいます!」


「どうしたユーグ?表示形式を間違えてないか?」

「いえ、これは戦略ですよ。さらにカードを一枚伏せてターンエンドです」

「行くぞ、俺のターンドロー!」

ヘヴィメタさんから射るような視線が向けられる。俺の腹を探ろうと必死なんだろう。

「どうしました?攻撃すれば勝てるのに今更 怖気おじけづきましたか?」

「俺のガトリングドラゴンは《重機装甲強化ヘヴィメタルコート》を装備しているから、相手モンスターは元々の攻撃力で戦うことになる。お前がオーバー・ザ・レインボーを強化して返り討ちを狙っても無意味だ」

「そう思うなら迷わず攻撃するべきじゃないですか?」

「・・・俺は手札から魔法カード《重機装甲工房ヘヴィメタルガレージ》を発動!デッキから《重機装甲ヘヴィメタル》カードを一枚手札に加える!これで《重機装甲熱風ヘヴィメタルウィンド》を手札に加えて発動!このカードは自分のフィールドに《重機装甲ヘヴィメタル》モンスターがいる時に発動でき、相手フィールドの魔法、トラップカードを全て破壊する!お前がどんなカードを伏せていても破壊すれば怖くないぜ!」

ガトリングドラゴンがガスを噴出し、俺の伏せカードを吹き飛ばす。


・・・来た!!こいつを待っていた!!


「あなたが破壊したカードは、これです!トラップカード《ブレイクハザード》発動!このカードは相手のカード効果で破壊された時、相手のモンスターを全て破壊する!これでガトリングドラゴンは爆殺!」

ガトリングドラゴンは内側から爆発して装備された《重機装甲強化ヘヴィメタルコート》ごと破壊される。


「これは意外!ユーグの狙いは伏せカードをわざと破壊させて《ブレイクハザード》を発動することでした!一発逆転を狙うためにヘヴィメタを誘導していたようです!」


「・・・・・まったく、無茶なデュエルをやるもんだな。俺が伏せカードを警戒せずそのまま攻撃してればお前の負けじゃないか」

「どんなに有利な状況でも決して警戒を怠らず堅実な勝利を狙う、それがあなたのデュエルスタイルだ。俺が何の考えもなく自滅するわけがないと考えたヘヴィメタさんなら、必ず伏せカードを破壊してくると思ってました」

「ああ、《重機装甲強化ヘヴィメタルコート》は魔法に耐性を与えるだけでトラップの効果は受けてしまうしな。俺の戦術を逆手にとって反撃してくるとはな・・・。チームドランカード時代のお前はこんなハイリスクな戦略はとらなかったはずだ。・・・本当に変わったんだな」

「このデュエルに勝つためならどんなリスクも背負います」



           ―――――観戦席のエリアル視点―――――


ユーグとヘヴィメタさんは楽しそうに笑っていた。このデュエルにはユーグがプロになれるか、ヘヴィメタさんが出所できるかどうかが懸かっている。二人にとって絶対に負けられない真剣勝負。楽しんでる余裕なんてないはずなのに・・・・・

きっとこの二人はデュエルの先に待っている結果なんて考えてない位デュエルを楽しんでいるのね。なんか、羨ましいな・・・


            ――――――ユーグ視点―――――


「ガトリングドラゴンは破壊されたが、まだ俺のターンは終わってない!伏せカードを一枚セットしてターンエンドだ!」

ガトリングドラゴンを倒してやっと俺にチャンスが巡ってきた。俺のフィールドにはオーバー・ザ・レインボーが温存された。ライフは残りわずかだが、攻めるなら今だ。

逆に言うと、ここまでヘヴィメタさんは一度も隙を見せていない。このターンで決着をつけなければ・・・

 俺は全身に力を込める。金色こんじきのオーラをまとい、意識を集中する。を使うならこのタイミングだ!

「俺のターン・・・デステニードロー!!!」


「どうやらユーグはこのターンで決着をつけるようです!ヘヴィメタの場にモンスターはいませんが果たして成功するのか!?」


ヘヴィメタさんのフィールドには伏せカード一枚のみ、そしてライフは残り3200。警戒すべきはあの伏せカード・・・だがデステニードローで引いたこのカードなら伏せカードを除去できる。

「俺は手札から装備魔法 《ソウルランス》発動!このカードは自分のモンスター1体に装備され、1ターンに一度装備モンスターの攻撃力を500下げて相手の魔法、トラップカード一枚を破壊する!」

「ならば俺はトラップカード《重機装甲射出ヘヴィメタルカタパルト》を発動!このカードは墓地の《重機装甲ヘヴィメタル》モンスターを攻撃表示で特殊召喚する。これでガトリングドラゴンを蘇生!」

墓地からガトリングドラゴンが蘇り、《ソウルランス》の破壊効果は不発になる。

「これでヘヴィメタさんのフィールドにはガトリングドラゴンのみ。さらにオーバー・ザ・レインボーの効果発動!カード効果で攻撃力が変化した時、攻撃力を倍にする!これで攻撃力は4000ポイントだ」

ガトリングドラゴンをオーバー・ザ・レインボーで攻撃してもまだライフは残る。

だが、勝負するなら今しかない!

「俺は《虹彩騎士ークリアナイト》を召喚!このモンスターが召喚に成功した時デッキから《虹彩騎士》モンスター1体を墓地に送る。これで《虹彩騎士ーダークナイト》を墓地に送りその効果を発動!墓地から《孤高の誓い》、《ブレイクハザード》を除外して墓地から特殊召喚!」

これで俺の場にはモンスターが3体。オーバー・ザ・レインボーでガトリングドラゴンを攻撃してダークナイトで直接攻撃ダイレクトアタックを決めれば俺の勝ち。

「バトル!オーバー・ザ・レインボーでガトリングドラゴンを攻撃!」

「手札から《重機装甲ヘヴィメタルーチャフ》の効果発動!このカードを墓地に送り、相手のバトルフェイズを終了させる!」

「・・・だがその効果を使うためには賭けをしなければならない。成功確率は二分の一。もし外れればヘヴィメタさんの負けだ」

「そんなことはわかってる。さぁ、運試しだ!」


フィールドにルーレットが現れてチャフの効果が発動できるか否かが決まる。ルーレットの針が回り始め、針が緑に止まれば有効、赤に止まれば不発で終わる。


「ヘヴィメタここで大きな賭けに出たー!このギャンブルに成功すればこのターンの攻撃を凌ぐことができます!ユーグとヘヴィメタ、どちらに運命の女神は微笑むのか!?」


針が・・止まった。針が指しているのは・・・・・緑だ。効果は有効。


「これでこのターンのバトルは終了。残念だったなユーグ!」

「・・・・・チャフの効果は自分の場の《重機装甲ヘヴィメタル》モンスターを一体リリースすれば確実に発動できた。ガトリングドラゴンを犠牲にせず、賭けに出た理由は何ですか?」

「今のお前はなんのリスクもなく勝てる相手じゃない。俺は生粋きっすいのギャンブラーだからな。このデュエルに勝てるならマグレでもなんでも構わない」

「やっぱり・・・あなたは最高のデュエリストですね!・・・ふふ、あはははは」

「ははははは!」

俺もヘヴィメタさんも声を出して笑っていた。まったく・・・大観衆の前でなんてデュエルをやってるんだ俺たちは・・・・・


「だがこの見返りは大きいぜ!俺のガトリングドラゴンはフィールドに残ったからな!」

「そうですね。このターンで決着を付けようとしてたのに・・・完全に想定外でした。俺はカードを一枚伏せてターンエンドです」

ガトリングドラゴンがその銃口を煌めかせ俺のモンスターをターゲットにする。


やはり「賭け」ではこの人が一枚 上手うわてだ。今のヘヴィメタさんは無茶苦茶強いぜ。

この状況は俺が圧倒的に不利だ・・・







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る