シワシワの化けの皮

あれ?何か悪いことでも言った…?

一瞬考えようとするも、考える余地など与えられる暇はなく、義母ンヌは『待ってました』とばかりにニヤリと笑った



義母ンヌかつみ「ゆかりちゃん、「噓」ついたでしょ?」



と、一言



私の真向いに座っている義母ンヌ

正面からの義母ンヌの破壊力は凄まじい。顔がシワシワだからではなくて。それはそれはもう、意地悪な顔をしていたから


少し笑みを浮かべたような、睨みつけるような…獲物を捕まえた鬼という例えがふさわしいかもしれない。人はこれほどに表情が変わるのだ

今までの穏やかで優しい義母ンヌは幻だったんだ、化けの皮をかぶっていたんだ



私は義母ンヌからの唐突な攻撃に頭がパニックになりながらも

何の心当たりもなく

「…何のことですか?」と聞き返した



 義母ンヌかつみ「クッキーのことよ! あれ、あなたが作ったんじゃないでしょ?お店で買ってきたものでしょう?」



  



ゆかり 「え・・・?そんな!違いますよ!

 あれはちゃんと自分で作ってきたんです…!」




  

 私が“自分が作ったもの”だと否定するも、義母ンヌは返事もせず席を立ってキッチンへ向かった


 一体なんなんだよ・・・


知り合ったばかりの相手に真正面から「嘘つき」呼ばわりされるなんて。こんなことは人生初かも。

私はいまこの瞬間、義母ンヌの優しい笑顔の裏にずっと隠れて見えていなかった“シワシワの化けの皮”が剥がれるのを見ちゃったの


間違いない・・・義母ンヌは、性悪。あぁ…これからこの人と上手くやっていける自信がない…

全てが終わったような気がした



キッチンから戻ってきた義母ンヌの手には、私が作ったクッキーの袋が。驚くことに義母ンヌは嘘であるという証拠を提示してきたのだ

義理の両親からすると、私は詐欺事件を起こした犯人ってとこなんだろう…



義母ンヌかつみ「ほら、見て。この間あなたから貰ったクッキーの袋。これは、お菓子屋さんの袋でしょ?

しかも、ここ。ほら!封もしっかりとめてある。これはお店屋さんでしかできないの。

お父さん(義母ンヌの夫)にも袋を見せてふたりで確認したのよ。お店のもので間違いないって。ね!?お父さん?」

  


義父ンヌゆきお「・・うん、そうだね。」  




義母ンヌかつみ「嘘ついたでしょ?これを自分で作っただなんて!嘘でしょ?」




とにかく全てが予想外すぎて衝撃的だった


心を込めて作ったクッキー

心を込めたラッピング

喜んでもらえたと思っていたのに


こんな事になるなんて。手土産なんてわざわざ作らずに買っておけばよかった?

いや、そんな事ない…

人からの贈り物をそんな目で見るなんて、人として最低すぎるよ…



私があの日渡した手土産を、あの後二人にじっくり査定されて、嘘をついてる、今度問い詰めてやろうなんて話をされていたと思うと、恐怖を通り越して『軽蔑』でしかなかった


そうか。これを言うために今日は呼ばれたんだなぁ…

この間の結婚のあいさつもいい感じだったけど

食事会の会話もすごくいい感じだったけど

そうかそうか。全部演技だったのね。


初めから嫁として歓迎されてなかったことを悟った


落ち着け、私

  


ゆかり「嘘なんてついていません!

この袋は、ネットショッピングで業務用の袋を買ったものです。

袋を熱で閉じる道具も持ってます!お菓子を贈り物にする時は、昔からいつもそれを使ってるんです。」



敵だとわかってしまった以上、口調はいつもより強く、大きくなっていく

でも仕方ない

ここまで濡れ衣を着せられて、責め立てられて、穏やかではいらるはずがない

そうさ。声が大きくなるのなんて仕方ない、仕方ない。いや…むしろ、よく噴火しなかった!出来た嫁じゃないか!

自分で自分を褒めてあげたい




義母ンヌかつみ「あらそう…でも、そんな自分で売り物と同じようにラッピングできるなんて、聞いたこともないけど?」




ゆかり「本当です!業務用の菓子袋も、袋を閉じる器具も今から持ってきましょうか…!?」




義母ンヌかつみ「…あら、やだ!そこまでしなくてもいいのよ。ふ~ん…最近はすごいのね~そんなものがあるのねぇ?

この袋を見て、お父さんも「嘘ついてる」っていうもんだから…」




義父ンヌゆきお「おっ、俺は、お母さんが言うことに、そうだねと言っただけだけど!」

  


…ん?義父ンヌ。それは言い訳だよ?

同意してたのなら、君も同罪だよ?


なに自分だけ “自分は嘘ついてるとは言ってません感” 出してるの?


ていうか。

今は誰だってお菓子屋さん並にラッピングできる時代なんですけど。ラッピング1つ見ただけで「これはお菓子屋さんのお菓子に間違いない!」とな?

それって判断材料少なすぎやしません?

そんなんで探偵気どりするんじゃないわよ!

嫁の粗を探して楽しかった?


最低よ、あんたたち! てい!!←パンチ



義理の両親二人の目の前

冷静なふりをして無表情を貫く私の奥深くでは

怒りに怒りまくった闘犬ゆかりが牙を剥いて嚙みついていた


大丈夫。心の中では本性を出していいのです!毒も吐き放題

表面上だけは顔は涼しい顔でキープ。あ、口角を少し上げておくのもお忘れなく





さあ。これから長い歳月をかけて、バチバチと幾度となく義母ンヌから嫁に戦いが仕掛けられることになるんでしょう


この日から私は、二人を要注意人物として見ることにした。絶対に信じてはいけない危ない人というか…敵として戦う事にもなるんだろうと、ちょっとした覚悟みたいな気持ちも芽生えた




ちなみに義理の両親はというと。

人の想いを踏みにじって、嘘つき呼ばわりした事を謝ることはなかった。きっと自分らの方が立場が上だから、別に嫁なんかにわざわざ謝らなくてもいいと思ってるのでしょう



でもね。嫁を敵にまわすと後々、後悔するかもしれないわよ

世の中の常識的には「姑の方が偉い」感じがあるけど。あれ、なんでだろう?


冷静に考えたら嫁の方が若いからバイタリティーもあって、力も強いし、頭も回るんだから。


結局どっちが強くなれるのかって、嫁次第なところあるんじゃない?



女の戦い。こわや、こわや。

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