ワインボトル
「誰がコイツの彼女ですって」
狂の言葉が逆鱗に触れる。
「ブラッド止しなさい」
冷静に止めるカニバルだが、彼女の怒りは収まらずパンッとド派手な平手打ち。
「バッカじゃないの」
余程カニバルの事が嫌いなのだろう。本来なら、その平手打ちは狂に来るはずだが何故かカニバルへ。もう!! と独り言を言うブラッド。あまりの痛さに頬に手を当て目を閉じるカニバル。二人の複雑な関係に狂が変に口出さないよう剣崎が話を切り出す。
「取り込み中、悪いが部下を捜してる。知らないか?」
カツカツと高いヒールを鳴らし歩くブラッド。バックヤードに行くや戻ってくるとワインにしてはドス黒い血の瓶。
「探し物はこれかしら?」
日があるときとは違い、裏ならではの態度だろう。堂々と刑事である剣崎と真っ正面で向き合い、愛想良く手渡す。
750mlのワインボトル。
ラベルには、こう記されていた。
『20XX年1月○日
○○都○○区○○産』
それを見た剣崎は言葉を失う。
「お気に召さなかったかしら? 彼女、あまりにも可愛くて良い目をしていたから美味しそうで殺しちゃったわ。ごめんなさいね、刑事さん」
嫌みたっぷりの言葉に睨み付けるも逮捕どころか文句は言わない。スッとワインボトルを返すと一言。
「人を殺したときの血より
その言葉にブラッドは「作り方教えてあげましょうか?」と剣崎に興味を示す。
「あぁ、是非」
ンフフッと彼女は鼻で笑う。飾っていたワイングラスを手に取り、ワインボトルのコルクを外す。
ドボドボと注がれた血はまさに“深紅”。光に当てるとルビーのように輝く。見とれる剣崎の目を汚すようにブラッドはわざとそれを一口飲むと「はぁっ」と色気ある声で近付き言う。
「簡単よ。私の大好きな拷問道具のアイアンメイデンに閉じ込めて一瞬で刺し殺すの。滴る血をそのままボトルに詰める。酸化する前に――素敵でしょ?」
甘い声に誘惑されそうな剣崎をさらに誘惑しようとブラッドは続ける。さりげなくボディータッチしながら。
「もし、あまりにも暴れてダメなら……首を切って、手首を切って、勿体ないけど入れ物に血を溜めるの。価値は落ちちゃうけど言うこと聞いてくれないからぁ」
二人のやり取りにカニバルはムッとし、狂は思いっきり剣崎の足を踏み付ける。それにハッと我に返りブラッドを優しく突き飛ばすや手で顔を覆う。
「俺は……」
自問自答し混乱する剣崎に狂は声をかける。
「剣崎刑事、綺麗なのは分かる。でも、それに呑まれちゃダメだよ。ほらほら、目的思い出して。刑事さん」
と、真相突き止めなよ、と手助けするも悪な剣崎降臨か。剣崎の葛藤する姿に口が開く。
「刑事さーん、ファイト。部下の真相突き止めないと首切られちゃうよ」
軽い煽り。
「お前に言われたくないわ!!」
悪に勝ち、ぶちギレる剣崎。
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