取引
服を真っ赤に染め、口も見たことないほど血が付きポタッポタッと血が滴る。それをシワ一つないスーツの袖で拭うとニコリ。
「全て美味でした。そうですねぇ、金額にしたら数十万の取引で如何でしょうか?」
味見ともに変態なコメントは終わったか。満足げに立ち上がり、レジに向かうや今どき珍しい小切手を切る。綺麗な小切手も赤く染まり、はい、とカニバルは平気な顔で狂に渡す。
「あい、確かに。これ、“烏”に渡せば振り込んでくれるんだっけ?」
「はい。彼らは配達人ですがある意味何でも屋な面もありますからね。それはそれでいいとして」
食すことに満足したのだろう。散らかした臓器に興味を示さず。新たに興味を示したのは剣崎。
「ところで刑事さん。ボクに聞きたいことがあるのでは?」
目を覆っている狂の手を軽く叩き、不機嫌な剣崎の目を見る。だが、汚いんだよ、と訴えかけるめにカニバルは自分の服を見て笑う。
「なるほど。死こそが美なのですね」
と、クスッと小さく笑うとジャケットを脱ぐ。ジャケットよりは汚れてないが第一ボタン周辺が赤く染まったワイシャツとベスト。「まぁ、いいだろう」と、剣崎は溜め息を漏らすと口を開けた。
「部下をどこで見つけた」
「部下は私の
予想してない言葉に剣崎は目を丸める。
「血がない、どうのこうの言ってなかったか?」
「えぇ、言いました。女性の血が好きな“ベマトフィリア”がいましてね。吸血鬼みたいに血を抜いちゃうんですよ。だから、青年くんが持ってくる臓器がボクは大好きで彼女が持ってくる血のないカラッカラな死体が大嫌いなのです」
楽しくない、とボーッと二人の会話を聞く狂の頭にカニバルの大きな手が乗る。剣崎に撫でられた時と同様ヨシヨシと撫でられ、嫌だ、と頭を振るも辞めてくれず叩く。
「狂、歳上に失礼だ」
剣崎に叱られるも名を呼ばれ目が点。
「ん、今呼んだ?」
刑事さーん、と抱き付こうとする狂の頭をガッチリ掴み「やめろ」と怒鳴る声にカニバルは羨ましそうに言う。
――親子みたいですね、と。
その言葉に「は?」と剣崎は返すとクスクスとカニバルは笑い、続けて。
「部下さんを殺した時の女性とボクは”性癖の関係上“仲が悪くてですね。嫌がらせで女性を殺しては送りつけてくる時があるんです。多分それでしょう。食べ方が汚いのよ、って」
フフッと一人笑う。
「で、居場所なんですが。そこは普通の人から見たら普通の場所ですが、ボクらから見たらある意味馴染み深い場所になる。刑事さん一人では見つけられないと思うので青年くんをお供にすると分かるかと。ね、青年くん」
二人の視線が集まり、目をぱちくりさせるも話を全く聞いていなかった狂はエヘヘと笑い誤魔化す。そんな彼に優しくカニバルは言葉を添える。
「たまに貴方が暇だと服装合わずに行く場所のことです。お分かりですよね?」
カニバルの言葉に「あーねぇ」と狂は小切手をヒラヒラさせるとパーカーのポケットに突っ込む。
「あそこ、好きじゃないんだよね」
独り言のようにそう言うと、ご馳走さまも言わず狂は店を出た。
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