第8話 《ハンドルの付いてる車》でないと行けない公園

夫はブログを更新していた。

私は内容までは知らなかった。


1歳の頃に車を触らせていて、ブログ記事がある。

コメント欄もある。


私は買い物をしていた。

出産で体重が17キロも増量していたので、

衣類の物色にかなりの時間を費やした。


結局、体型が落ち着いてからの方がいいから、購入を断念したように思う。


その間に、夫は息子に車を触らせていた。



3歳の頃。幼稚園に通うようになった。

道すがら、公園を見かける度に。

手当たり次第に息子に遊んでみようと、

よく声を掛けていた。


飛行機公園で初めて遊んだ息子を、

鮮明に覚えている。

とても楽しそうに遊んでいた。


遊具のハンドルが破損しそうな程、

夢中になって、ガチャガチャ遊んでいた。


私は、そんな無邪気な息子に、

とても満足した。


数日後、息子が飛行機公園で遊びたい

と言うので、遊びに行った。


が、到着しても、車から降りようとしない。

相当ゴネられた。


「総司から遊びたいって言ったんだよ。

どうしたの?」

いくら説得しても、行きたくないと

言い張るばかりだった。


仕方ないので、私は息子を車に残し、

車のキーを外してから。

私だけ飛行機遊具の上で、

楽しそうに見えるように遊んでみた。


携帯を眺め、きっかり5分後に車に戻ると、


とても楽しそうに遊んでいた。

夢中になって、ガチャガチャ遊んでいた。



私の車のハンドルで。運転席で。

「こら!駄目でしょ!」

叱りつけ、飛行機公園で遊ぼうと誘ったが、

すっかりムクれて、話もしてくれなかった。


帰宅の為、エンジンをかけ、

ハンドルを操作しようとすると。


ハンドルが動かない!


車が壊れた…?とりあえず夫に連絡すると。

ハンドルロックとの事。

対処法を聞き実行してみるが、

なかなか上手く行かない。


何度も何度も試行錯誤して、

やっとハンドルが動いたのは

約30分後だった。


その夜。私は夫に事細かに説明し、

怖い怖いと話した。


夫は、あまり叱らないでやってほしい

と言ってたかな?



でも、今なら思うんだよね。息子は。


ハンドルの遊具のある公園で

遊びたかったのではなく。


《ハンドルの付いてる車》でないと、

行けない距離の公園を

指定したのだろう……って!


1歳の頃から、夫が

ハンドルを触らせてたから。


遊具ではない《ハンドルの付いてる車》で、

本物の車で遊びたかったのだろう……って!


私は狭い場所での駐車は苦手だから。

最寄りの公園は、徒歩とか三輪車だから。

車はあまり使わない方だったから。



…考え過ぎですか?…本当に?

不安でなりません。

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