第4話:聖断!

 明治大帝を先頭とした明治時代の元勲達が国会に続々と入って行くと国会内に残っていた人物たちは蜘蛛の子を散らすように悲鳴を上げて逃げていくが中には涙を流しながら平伏している者もいてその者達には優しく声を掛けて首相がいる執務室に進んでいく。

 執務室内では貴志田総理を始めとする閣僚達が震えながらお経を唱えて悪霊退散、悪霊退散と呟いていたがそれも無駄に終わり乱暴にドアが蹴破られてそこに明治時代の軍服を着た明治大帝が入ってくる。

 その場にいた者達は自分達とあまりにもの違う別次元の存在である明治大帝の闘気に貴志田総理を始めとする者達は身動きできなかった。

 その者達に明治大帝の大喝が飛ぶ。

「この腑抜け者達めが!! 太平の世に慣れて金まみれの欲しか考えない愚か者だ。靖国で眠っている数々の同胞たちが泣き叫んでいるぞ? 我慢の限界を超えてこの世に再び出たのだ」

 明治大帝の言葉は現代の令和の人間には別次元の言霊であり皆が度肝を抜かれて何も出来なかった。

 その時、首相達がいる部屋に数十人の拳銃を手にした警察官がやってくる。

「おとなしく手を挙げろ! でなければ撃つ! お前達は首相達を護るのだ!」

 二十代の若い警官達皆が明治大帝他元勲達を犯罪者として見ていた。

「不法侵入罪、脅迫罪、騒乱罪、その他多数の罪状を以てお前達を逮捕拘禁する!」

 真剣な目をした警官達を見ながら伊藤博文がフムフムと感心していて若いのに気迫があり任務を全うする姿勢は中々いいではないかと言う。

 東郷平八郎がギョロリと大きな目玉を警官達に向けると地響きみたいな声を発する。

「無礼者! 頭を垂れて跪け!」

 圧倒的な迫力の言葉に数十人の若い警官達と首相達が次々と膝を折って土下座態勢になる。

 明治大帝は苦々しい表情になり喋り始める。

「朕がこの世を去って百数十年なるが今この現在の日本を取り巻く情勢は非常に悪すぎる! それもこれも私欲をむさぼる輩ばかりだ」

 明治大帝の言葉を聞きながら貴志田首相は心の中で悪態をついていた。

「(そんなこと、私達に言っても仕方がないじゃないか! 前の首相達が悪かったのだ)」

「ほう? そんなこと、私達に言っても仕方がないだと?」

 明治大帝の言葉に貴志田首相は飛び上がらんばかりに驚く。

「貴様に聞くがお前は今まで日本国および日本国民の為に何をした? 命を掛けて国民の為に何かしたか? お前は日本の首相たる地位に就きながら隣国を始めとする外国の者達に金を掛けたり優遇したりしている。外国の留学生は日本の宝? 日本の宝と言うのは朕の臣民たる全ての日本国民の事だが? お前は生きている価値はない故……処分いたす」

 明治大帝の指パッチンと共に何もない空間に次元の扉が開く。

「命を獲るとは言わんが……この世界とは違う異世界に追放する事にする!」

 明治大帝の冷酷な言葉に貴志田首相は喚きながら自分は悪くない、悪いのは私よりも前の首相達だと散々喚くが明治軍人の英霊達により簡単に持ち上げられて異世界への扉に放り込まれる。

 絶望な叫びをあげながら異次元へと飛ばされる首相を見て早矢仕田外務大臣が震え上がる。

「早矢仕田と言ったか? 貴様は外務大臣の身にありながら日本よりも隣国を始めとする外国を優先的に便宜を図っているが?」

「ち、違います! 隣国を始めとする外国と友好を持つ事こそが我が国の安全を護る事です」

「朕のいう事が間違っていると? ならば不法に占拠されている領土の奪還にお前は命を掛けたことがあるのか? 陸奥宗光や小村寿太郎は己の命を掛けて当時の我が国に掛けられていた不当な条約を撤廃する事に成功したぞ? それに比べてお前は何をしていた?」

「昔とは違って今の外交は複雑なのです……ひっ!!」

「貴様は朕の言葉を否定すると言うのか? 万死に値する」

 ガタガタと身体を震わせながらお許し下さい、なにとぞ慈悲を! と叫ぶが明治大帝は再び指パッチンして次元の割れ目が出現すると横に控えている英霊に目配せすると彼らは早矢仕田を担ぎ上げて放り投げる。

 この一連の出来事を見ていた国家公安部長の女性はこいつらは頭が狂った気違いの集団だと叫んでその場から逃げ出して部屋を出ていこうとしたがその寸前、彼女の頭上に次元の割れ目が現れてパックンと呑み込まれる。

 それを見た明治大帝は哀れな目で見ていた。

「現代で言う異次元ガチャは大失敗だな、あれは」

 残りの二名の内、警察庁長官が思いきり叫ぶ。

「陛下! 私は陛下のお役に立てます、陛下の神気を分けて頂ければこの国の治安を建て直します!」

 彼の言葉に明治大帝は鼻で笑うと冷酷な笑みを浮かべて宣告する。

「甚だ図々しい! 何故、朕が貴様に神気を分け与えなければならないのか? お前も処分いたす」

 そして彼も又、異世界への次元に飛ばされる。

 最期に若い警官達を引き連れて来た定年間近の巡査部長は感激の表情で明治大帝直々に処分を下されるとは光栄の極みですと本心から答える。

 その時、彼の身体が白銀色に輝く。

 吃驚する男性に明治大帝は厳かに言葉を発す。

「お前にはふんだんに朕の神気を分けてやろうではないか? まだまだこの国には隠れた売国奴が沢山いるがそれを炙り出すのだ、そうすればもっと神気を分け与えてやるが?」

 そう言うと明治大帝は背後に控えている臣下達に引き上げると合図をすると続々と元来た道を引き返していく。

 ちなみにこの一連はTV局によって全国放映されていたのであった。

 勿論、世界もこれを見ていた。

「所で東郷平八郎よ? これより北海道へ向かうことになるが英霊数十万人を載せる霊艦はどうするか?」

 東郷平八郎……日露戦争時の日本海海戦でバルチック艦隊を撃破した名将は心配する事はありません、あるではありませんか? 横浜にという。

「……そうだったな、戦艦“三笠”が!」


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