第3話:進撃の英霊軍

 突如、靖国神社や護国神社から英霊達が出現して具現化した国内はある意味で大混乱状態であった。

 何しろ、北海道以外の日本国内に巣食う反日精神を持つ者達は政治家を始めとする財界人や芸能人、コメンティ-ター等が無残に惨殺されたからである。

 残りの者達は我先に日本から命からがら脱出する。

 勿論、この出来事を歓迎する者達も多々いて主に各自衛隊や警察官であった。

 テレビも反日放送が無くなったため、真の日本人による日本の放送が連日組み立てられてつい先日までの日本と言う国がいかに外国勢力に乗っ取られていたかということが日本国民に知らされる。

 半数の日本人はこの暴露によって目が覚めたがやはりまだ救いようのない者達がいるのは仕方が無かった。

 日本人である故、金・女・地位にしがみ付く者や政治家及び資産家達は特に粛清されることは無かったが彼らはいつ自分達に矛先が向けられるのかを恐れて英霊達を何とかして消滅させる方法を捜す。

 内閣総理大臣『貴志田』の名の元、東京都に戒厳令を発令して午後二十三時から翌朝の六時まで一切の外出禁止を発表する。

 彼ら英霊達が動くのは大体、丑三つ時であったからである。

「しかし、こんな状況になるとはつい数日前には想像がつかなかったがこれからどうなるのだろうか?」

 貴志田総理が外務大臣『早矢仕田』に質問すると暫く何か考えていた彼は急に笑みを浮かべて今しがた浮かんだ方法を総理に言う。

「宮内省に連絡して陛下か上皇様に鎮めて頂くのはどうか? 何しろ、昔の亡霊達は皇室を最大限、敬っていたからね?」

 この提案に出席していた者達から賛成の手が挙げられると早速、宮内省に連絡する為に秘書官が退室する。

 それと同時に北海道の件に触れて対策を練ることにするが全然、良い意見が出なくて小田原評定であった。

「幸いに北海道を除く日本国内は反日分子が全ていなくなったから色々とやりやすくなったが……」

「いっそ、あの亡霊たちが北海道に一斉に攻め込んでくれれば安心なのですがね?」

 金金に溺れた者達は日本の為に戦って散って逝った若者や軍人を英霊という高貴な存在ではなく地位を脅かす悪霊と同じ位置に思っているのである。

「私が懸念している事はあの亡霊たちが再び米国や中国に戦争を仕掛けるという可能性なのですがいかがお考えですか? 総理」

 副総理の天羽が総理に質問すると総理は困惑して皆の意見を良く聞いてそれから決定したいと思うからここ数日の間に臨時国会を開こうと思う。

「まあ邪魔な野党の殆どが消えてくれたからね? 憲法改正を勧められるよ。まあこれに関しては亡霊たちのお陰かな?」

 その時、会議室の扉が乱暴に開けられて秘書官が転げ落ちるように飛び込んでくる。

 この一様な出来事に総理は何が起こったのだ? と聞くと彼の口からとんでもない事が発せられる。

「何だと!? 靖国神社から旧日本軍の戦車が続々と出現しただと!?」

 この報告を皮切りに続々と信じられない報告が飛び込んできて総理以下の者は思考停止して椅子に崩れ落ちる。

 報告によると明治天皇陵が白銀色に輝くと同時に靖国神社に祭られていないがかつて明治時代に活躍した偉人達の墓から続々とその本人? 霊体が出現して一瞬に靖国神社に集合する。

「め、明治天皇に伊藤博文・乃木希典・東郷平八郎・児玉源太郎・山縣有朋等の日露戦争に関係する者達が出現だと?」

「総理、恐らく彼らは北海道に侵攻する為に出現したのでしょう! 私達は高みの見物で見守りましょう」

 総理以下皆の者が頷いた時に警察庁から緊急電話が鳴り総理秘書官が受話器を取って内容を確かめると青醒めた表情で総理の近くまで来て喋る。

 その内容は皆が驚天動地であった。

「はあ? 明治天皇以下伊藤博文を始めとする者達が行進しながらこの国会に向かっているだと!?」

 乃木希典・東郷平八郎が先頭になって明治天皇を始めとする日露戦争時の元勲が続きそれを、日露戦争に参加して戦死した陸軍の英霊達が周りを囲んで粛々と国会議事堂に迫っていたのである。

「はあ? 数万人規模だと!? 警察及び自衛隊を総動員して国会を護るのだ! 在日米軍にも要請するのだ、思いやり予算を増額してもいいと伝えてなんとしても暴徒から護るのだ!」

 総理の怒声が室内を震わす。

 椅子に座りながら総理は怒りに震えていたのである。

「何が明治天皇を始めとする者達だ? 最早大昔の亡霊に過ぎないのに何故、しゃりしゃり出しゃばって来たのだ? むかつく、むかつく! 日本の治安を乱すだけだろう」

 最もらしい事だが今の閣僚の中には自分の地位が無くなってしまう恐れを持っているだけであった。

 何しろ、政治資金が絶たれて今更、市井の生活を到底、出来るわけではないから。

 そうこうしている内に遂に国会議事堂正面に続々と英霊達が集合してくる。

 警視庁や警察庁及び自衛隊が出動して銃器を構えて英霊達を狙っていた。

「いいな、お前達! あれは亡霊だ、英霊とか今の現代にそんな存在はない!」

「狙うは明治天皇だ、あれを倒せば奴らは消えるはず!」

 同じ日本人であるが愛国心が無い者達にとってはかつての偉人達の凄さが分からないのである。

 警告を続けて三十メートルをきれば一斉射撃しろとの命令が下されて機動隊や警察官・自衛官達に緊張が走る。

 ちなみにここにいる者全員が現実主義で亡霊とか英霊という未知の存在は全く信じなくて己の欲求を叶えてもらう為に神社や寺に詣でる者達ばかりであった。

 なので何の躊躇なく発砲できるのであった。

 こんな異常事態の中でもやはり愛国心を持つ者は国会に怒鳴り込んできて総理達に気持ちよく迎え入れるべきですと抗議するが総理達はそれを否定として英霊達に関して平和を乱すテロリストとする位置付けを全国に放送する。

 この放送は完全に裏目に出たのである。

 明治天皇を始めとする元勲の英霊達をテロリストとして発表したので良識ある者達からは非難轟々であった。

 そうこうしている内に行進は三十メートル手前で突然、止まり英霊達が一列横隊の陣を敷く。

 その様子を見ていた総理は椅子から立ちあがりモニターの傍に行くと怒鳴る。

「何があったのだ? 命令を下せ、一斉射撃開始だ、日本の平和を乱すテロリストを排除するのだ!」

 総理の命令の元、国会議事堂前に展開している数百名の警察官や機動隊から一斉射撃が開始される。

 それを満足そうに見ていた総理だったが一斉射撃が終わった後の情景を見て信じられない形相をする。

「一人も倒れていない……? んな馬鹿な!」

「ほ、本当に……亡霊なのか?」

 それからも引き続いて一斉射撃をするが彼ら英霊達には何の損傷も与えられなく銃弾はすり抜けているが消滅していた。

 この実況は全国主要のテレビによる生中継が為されておりこの行為について日本中から非難轟々の声が上がる。

「非国民が! お前達こそ逆賊だ、とっとと消えろ!」

「日本の為に散って逝った英霊達が私達の不甲斐ない状況に激怒して現世に蘇られたのです」

 現実主義な者達は自分が持っている常識が崩れるとパニック状態になり常識に説明できる存在ではなければ正気を失うのである。

 そして、彼ら英霊達が再び前進を開始するがこの時点になれば誰もが蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

「大帝、情けない連中ですな? 我らの子孫たちの不甲斐なさは?」

「ここまで落ちぶれていたとは……嘆かわしい」

「やはり、隣国の併合は間違っていたのだな」

 元勲の英霊達が会話をしている横で明治大帝は静かに頷く。

「皆の者、朕は今の総理を始めとする欲にまみれた者達に喝を入れる故、皆も協力を頼む」

 そう言うと英霊達は、国会議事堂のバリケードをすり抜けて玄関に向かって行くがその時点で警備の者達も恐れをなして職場放棄していた。






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