第9話

 「こんな風に彷徨っている魂には色々な形があるんだ!見えている人間やその精神や魂に影響を与えようとする!いわゆる戦おうとしてくるのさ!」

 荒岩さんが話しているうちに熊は前足を地面の砂を握りしめるようにして、畳の上に降ろした。するとその四本の足は力強く蹴り出され、全力でこちらに走ってきた。

 「「「…!」」」

 3人とも声を出すことができていなかった!踵を返し、全力で熊と反対方向へ駆け出す!

 「戦う時には、武器をイメージするのが大切だよー!それと神力には特性っていうのがあってそれが見つかるとそれを使うこともできるよー!武器を想像してみてー!」

 遠くで荒岩さんが普段より大きな声で話している。武器、刀とかかな?そうか、弓道部だから弓と矢をイメージすれば…。

 すると、モンの手元に懐中電灯。ケンの手元に一眼レフのカメラが現れた。

 「「なんで!?」」

 「荒岩さんが武器って言ってたじゃないのー!」

 「ぼくでもこれは使えないのわかるよ!」

 走りながらでも、大きな声で2人とも文句を言っている。確かにこれはおかしい。

 「俺も弓矢をイメージしたんだよ!」

 モンは、渋い顔をしながら熊の方に向かって体の向きを反転させた。

 「こうなりゃ、やけよ!うりゃー!!」

 黒いスーツには似つかわしくない声を発しながら、肩まである長い黒髪をなびかせて、クマに向かっていった。大きく振りかぶった懐中電灯と熊の太い腕がぶつかる。

 すると意外にも、熊の右腕が弾かれた。今度は左腕が上から遅いかかってきた。モン振り切った懐中電灯を今度は両手でテニスのバックハンドのように腕にぶつけた。すると先程より、左腕は大きく弾かれ、一歩後退した。

 「すごいよ!モン!その調子!」

 「ぼくも、やるやつだと思っていたよ!」

 我ながら調子のいいやつだと思った。自分もケンも。その遠くで荒岩と天が話をしていた。

 「やはり、わしが思った通りに彼らの魂力は大したものじゃ。お主が手を抜いているとはいえ、あれを跳ね返すほどの力があるとは」

 「ええ!確かにそうですね!おそらくあの武器にも特製に関係する何かがあるのでしょう!」

 荒岩は天に話していた内容を3人にも伝えた。

 「ケンくん!その一眼レフには君の特性が何か反映されているかもしれない!試しに使ってみたらどうだ!」

 「ぼくのカメラにですか?わかりましたー!…ねぇ、武。一眼レフってどう使うの?」

 確かに、家にもないし使い方わからないか。というか自分もわからないかも。

 「多分このスイッチで撮るんだよ。んで、これでズーム、拡大縮小?あれ?ピント合わない。ちょっと調べるね」

 スマホで検索を始める。モンは今だな熊の拳を打ち返してる。しかし、1人と一匹はそろそろ限界なのか、フラフラしながら戦っている。

 「武ー!ケンー!はやくー!つかれたぁー!」

 モンが振り絞って叫ぶ声が道場に響いた。

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