第8話
広い道場のような場所があった。空調などもあり、体育館のような広さがある。神社ってこんな感じだったろうか。おじいさんが話し始めた。
「それじゃあの。ちょっと適正見るからの。おーい」
そう言うと反対側の扉から神職用の白衣を着た強面のおじさんが出てきた。四角い顔にヒゲ、下は紺の袴で上は白い。一歩一歩の踏み出しで道場に振動が伝わっているような…。
「こんにちは!荒岩です!」
大きな声に圧倒されて、腰をついてしまいそうになった。
「こんにちは…」
蚊ほどの声で返事をした。
「そうじゃ、わしの自己紹介もまだじゃったかな?わしは天じゃ。ここで神主をやっておる。宮司というものじゃ。荒岩は補佐をしているのじゃ」
「よろしくね!話は聞いてるよ!アルバイトしながら、お祓いしてもらうよ!」
天さんと荒岩さんの声量の温度差がすごいなぁと思いながら聞いていた。
「主に人間や動物の魂が彷徨っているものをあの世に送り返して欲しいんだ!そこで送り返すためには詞が必要となる!武くんには祓詞を覚えてもらったり神力、魂力を鍛えてもらう!」
「武、大変そうね」
呑気そうにモンがいう。
「もちろん、モンさん、ケンさんにも魂との戦い方を学んでもらう!」
「え、ぼくらも働くの?」
ケンは拍子抜けして呟いた。
「じゃあ、早速練習してみようか!後は練習しながら説明するよ!あんまり遅いと親御さんも心配するしね!」
そう言うと、荒岩さんは祓詞の書かれた紙を渡してくれた。紙には、
掛けまくも畏きかけまくもかしこき
伊邪那岐大神いざなぎのおほかみ
筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原につくしのひむかのたちばなのをどのあはぎはらに
禊ぎ祓へ給ひし時にみそぎはらへたまひしときに
生り坐せる祓戸の大神等なりませるはらへどのおほかみたち
諸々の禍事・罪・穢もろもろのまがごとつみけがれ
有らむをばあらむをば
祓へ給ひ清め給へとはらへたまひきよめたまへと
白すことを聞こし召せとまをすことをきこしめせと
恐み恐みも白す
と書かれていた。思っていたより長い。
「これを読むんですか?」
「そうだね!ちょっと長いかな?すぐ覚えるよ!」
そう言うと、荒岩さんの周りに精神と魂が出現した。赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の七色の玉。そして少し大きめの白と黒の絵の具が混ざったような玉が出現した。白黒の玉を中心に七色の玉がぐるぐると回っている。すごく神秘的だった。
「これが、私の魂はハイと精神のニジだよ!それじゃあ行くよ!」
そう言うと全ての玉が白黒の玉に混ざっていった。そして、玉がスライムのように伸びたり縮んだりしている。道場の畳の上にべちゃりと落ちた。そして少しずつ膨らみ、体長3メートルほどの熊が目の前に仁王立ちで立っている。
「ぐぉぉぉぉおおお!」
熊の雄叫びを聞いてこのバイトに来たことを激しく後悔した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます