第10話
「あ!あった!このボタンを半押しするんだ!」
「ほんとだー!だからすごーい!」
2人で盛り上がっていざ使おうとケンはカメラを戦場に向けた。一匹は息を切らしながら手を振り下ろし、1人は両手で懐中電灯を振っている。空振りしたり時にぶつかりふらふらとどちらも満身創痍である。ごめん、モン。時間稼ぎありがとう。
ケンは、シャッターを半押しして、ピントを合わせた。そのままシャッターを押した。すると、一瞬それぞれの動きが止まったのであった。タイミングが合わなくなった熊とモンは、大きく空振りをしてふらふらと転倒し、道場の天井をみていた。
「今ですよー!祓詞を読んでくださいー!」
荒岩さんが大きな声で知らせてくれた。慌てて紙を読み始めた。祓詞を読み終えた時点で、天さんが手を大きくパンと叩いた。するとふらふらだった熊も元のハイとニジに戻っていた。モンも元通りに戻っていた。
また、始まった時のように道場の真ん中にみんなで集まった。
「いやー!なかなかでしたね!私のニジもハイも本気ではありませんでしたが、なかなかでしたよ!私の特性は両方とも変化なんですよ!」
荒岩 魂…ハイ
精神…ニジ
特性…変化
「まー!こんなことは他の同業者には大っぴらには言わないのがルールなんです!覚えておいてくださいね!」
荒岩さん思いっきり言ってるけど大丈夫かなぁ…。
「今日は、ケンさんの特性が停止?とかかのう?それがわかってよかったわい。モンさんもよく頑張りなさった」
天さんが我々の労を労ってくれた。俺は思い出したかのように聞き始めた。
「ということは…バイトの方は…」
「もちろん合格じゃ」
「「「やったー!」」」
3人で大喜びした。ハイもニジもぐるぐる回って喜んでくれているようだ。荒岩さんも拍手している。
「それじゃあの、疲れてると思うから早く帰りなさい。あとこれは雇用契約書じゃからよく読んでおきなさい。保護者の方にも読んでもらうのじゃよ。とりあえず、夏の短期バイト用にしておいたからのう」
そう言うと天さんは封筒を渡してくれた。
「ありがとうございます」
少し暗くなってきた。今日は曇りだ。蒸し蒸しと暑い1日だった。家に着くと自分の部屋に着いて封筒を開けることにした。ハサミを取ろうとした時ふと思った。
冷静にバイトって除霊的なことだよね。除霊のバイトなんて言ったら母さんなんて言うだろう。
『あんた、頭大丈夫かい!?ちゃんと勉強しなさいよ!!』
『大丈夫?疲れてるのかい?病院でも行こうか??何科に連れてけばいいのかしら精神科…』
いい未来が見えない。とりあえず、契約書を見よう。名前とか住所とか書くのか…。
…そっか。神社の短期バイトだから受付とかするバイトということになってるのか。なんだ…。
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