第13話

7年の年月が流れた。


神音は静かな時を取り戻し、今はコンスタントな音楽活動を続けていた。

麗歌の子供の奏(かなで)も大きくなり高校生となっていた。

フキはかなり年老いて、家の事はほとんど出来なくなっていたが、それでも神音のそばを離れる気にはならず、相変わらず楡屋敷に住んでいた。

今野は命を取り留めたが、後遺症で心身喪失のようになり静岡の施設で養生していると聞いている。


シャミ・・詩織の消息はいまだに分からない。どこかで死んでしまったのではと言う憶測が誰しもの心にも宿っていた。

そして娘の紗織の消息についても語って置こう。

事件の後帰国したが、父親が心神喪失、母親が行方不明の状態で、また今野の父親の会社も倒産し余裕が無いことから、神音が申し出て引き取っていた。


神音は45歳になり、髪に白髪も混じるようになったが、いまだ独身。一方17歳の沙織ははつらつとした元気いっぱいの女子高生だ。両親は居ないが時折麗歌がやって来ては、かいがいしくと言うかおせっかいに身の回りのことを気使っていた。男の子しかいない麗歌にとっては絶好の話し相手だ。また、息子の奏にとっても良い遊び相手になっていた。

「沙織、このカメオどう?私のママが昔プレゼントしてくれたの。ルネッサンスの女性の横顔。なんか沙織に似てない?」

と麗歌。

「えーそんな大事なものもらえませんよオ」と沙織。

「実はさ、もう一個貰ったのよ。そっちは私が持ってるのよ。要らないなら良いのよー。」

「えーっじゃ頂きます!!」

2人ははしゃいで大騒ぎしていた。


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