悪役令嬢は民衆を操作する

 そして、大連合・メセアは動き出した。

 最初に行われたのは、国王の悪評広めと王家の悪評を広めであった。

 国王は様々な悪事を働いており、権力に物を言わせて今まで隠蔽して来た。

 それを、ありとあらゆる所に広めたのだ。

 貴族に魔導士に騎士に民衆に聖職者に。それこそこの国の全てに国王の悪事を広めた。

 その中でも貴族は約半数以上が大連合・メセアに加入している上にかなりの人数が実際に王家が行った悪事を知っているので恐ろしいスピードで広がりを見せた。

 魔導士や騎士への広がりはイマイチであったが、それでも大連合・メセアに加入している人達を中心にじわじわと広がりを見せた。

 聖職者に至っては、そもそも教皇がマリアンヌの協力者であった為、大連合・メセアが結成される前から、王家・国王に対する批判的な考え方を広めていた為、もう既に王家の悪事を知っていた。

 そして民衆は最も民の近くで民の為に教えを施す、聖職者達経由で王家・国王の悪事を知り、王家・国王に対する批判的な考えを持っていた。

 そこに多数の貴族に魔導士・騎士が王家への強い批判を見せた。

 民衆はこれに同調。彼らは分かっていると、逆に王家・国王に対して非難を見せていない貴族・魔導士・騎士はおかしいのではないかという世論を生み出した。


 とどのつまりどういうことかというと、この国全体で王家・国王に対する批判的な意思を持たないというのがおかしいという風潮を生み出したのだ。

 そういう意思の風というのを作り出したのだ。


 王家・国王=悪である。

 それを擁護する者は悪である。

 そして今、自分たちを統治している存在は、その悪である王家であり国王だ。

 その即ち、悪であるのだから、王家・国王というのは引きずり降ろさなければならない、正しき貴族に統治をさせなければならない。

 そういう世論を大連合・メセアの手によって生み出したのだ。


 もちろん、その動きは簡単に王家にバレた。

 王家は反逆罪として、マリアンヌの公爵家含む、いくつもの貴族家を処刑しようとした。

 しかし、処刑は行われなかった?

 理由は簡単である。単純に王家そのものが【守護者・バルバッセロ】の要請で多数の兵を出しており、残った使える兵力も半分以上が大連合・メセアに加入しており、処刑しようにも処刑する為にマリアンヌ含む貴族を捕らえるに足る兵力が足りなかったのである。


 もちろん他にも明確で大きな理由が一つある。

 それは王家そのものが、国王が国王の側で甘い汁を吸ってきた貴族・大臣達が、大連合・メセアに加入している貴族が恐れ、騎士が恐れ、魔導士が恐れ、民衆を恐れ、聖職者を恐れたからだ。

 もし、ここで処刑をしようと無理やり動いたらどうなる?

 今の国の王は貴族、それもいくつもの貴族に自分の行った悪しき事を広められたからと処刑しようとしている狂った王だと思われる。

 そんな王に従がえるか?そもそも、国王の悪事を知ってしまった民衆は国王に付き従えるか。

 従えるわけがない。従えたいわけがない。

 じゃあ、どうする反乱だ。

 そうして今の大連合・メセアに加入しているほぼ全ての存在が大連合・メセアという自分達に都合の悪い存在を処刑しようとしたという憤りから暴徒となって反乱するのを恐れたのだ。


 かくして王家はろくに何の対策も取れないまま、時間だけが過ぎていく。


 そうして、時間が立てば立つほど、王家の力は大連合・メセアに吸収されていき反乱の波は国王を殺すという強い意志の波は各地へとより強く広がっていった。


 そしてとある段階まで大連合・メセアに力が集まり、民衆の怒りが増大された時、第五計画が始まった。



――――――――――――――――



「セリカ、上手くいきましたわね。第四計画・大連合・メセアの設立。そして、国王に不信感を抱かせて民衆に反乱の波を作り出す。ハハハハハハハ、本当に上手くいきましたわ。

 実際今の国王はクソ野郎ですが。別に恐ろしい無能ではない、この国を上手く統治して、ある程度は貴族を御している。バルバッセロ殿はかなり悪くて言ってましたが、私は割かし、しっかりとこの国の統治をしてる、まあそれなりの普通の王だとは思いますよ。

 それなのに、こんな仕打ち。まあ、そう仕向けたのおは私なんですけどね。大体国王の悪事って言っても、平民の妾を取って気に触れれば殺害とか、ストレス発散と奴隷を買って殺すとか。自分に逆らった貴族を簡単に処刑とか。精々その程度ですのに、似たようなことをやっている貴族は山のようにいますのに。それこそ私の父だってやってましたのにねね。ハハハハハハハ、本当に本当に愚かですわ」


「そうですね。お嬢様、さあでは、第五計画・国落としを始めましょうか」

 セリカが恐ろしく歪んだ顔でニヤリと笑ってそう言った。ただ、マリアンヌはそれに気が付いていなかった。





 ―――――――――――――――


 かくして、第五計画は行われる。


 ―――――――――――――――


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