悪役令嬢は王国最強の男を味方につける

 場所は変わって、豪華な接待室、先ほどの激戦によってボロボロになった服を着替えた、守護者・バルバッセロと、闇魔法・闇纏によってドレスを保護していたため、先程と同じ豪華なドレスを来た状態のマリアンヌがいた。


 なお、今この場にはマリアンヌと守護者・バルバッセロの二人しかいない。

 これは、守護者・バルバッセロがマリアンヌとの話は二人きりで話さなければらないと確信しているためである。

 それもそのはず、今から話す内容は、国家反逆、マリアンヌ主導によって起こされる、国王殺しについてであるのだから。


「バルバッセロ、さて、じゃあ私の立てた計画について話をしようか」


「国家反逆についてですね。どのような計画で行うか、私もかなり気になってた所です。マリアンヌ様がどうするのか、実に実に楽しみですよ」


「話の内容は凄くシンプルです。私がこの国の女王として君臨するために、国王をぶっ殺して、民衆の前で晒首にして、他の王位継承持ってる王子も殺すか幽閉して、私が貴方の他の貴族達、そして民衆から圧倒的な支持を受けて、そのまま女王になる。以上終わり」

 

 ・・・・・・・・・


 少しの沈黙が流れる。


 現在公爵家当主という王に最も近い位置で仕える、忠実なる家臣が同じ公爵家の当主に向かって「私はこの国の王を引きずり降ろして、私が王になります。謀反を起こします」と堂々と宣言したようなものであるのだから。

 それは【国家犯罪】という最も重い罪であり、今この場で切り捨てられてもおかしくない、そんな発言であった。

 だけど、先ほどの戦いによってマリアンヌによって文字通り惨敗して忠誠を誓ったバルバッセロにとって、王家に対する忠誠と言うのは微塵もなかった。むしろマイナスまであった。

 だからこそバルバッセロは盛大に笑う。


「ハハハハハハハハハハハハハハハ。マリアンヌ様最高ですね。確かにその通りです。王様ぶっ殺して、他の王子様殺して幽閉して、後は支持さえあれば、確かに薄いとはい王家の血筋を引いているマリアンヌ様ならば女王として君臨出来るでしょう。いやはや。愉快愉快。それで、マリアンヌ様、私は何をすればいいですか?


「私がバルバッセロ、お前に要求することは3つですわ。一つ目は帝国からの侵略が激しいだの、魔物がいつもよりも多いだの、とにかく何でもいいので理由をつけて王都から援軍の要請を最大限してくださいわ」


「それくらいならば簡単にできるな。任せてください。これでもかってくらい王都の人員を減らして見せますよ」


「あ、だけど、一部騎士団や、魔術師は私の派閥として、私の駒になってくれているから、そこは避ける様に、そこら辺はここに資料置いておくから、よろしく」

 マリアンヌは魔法を使って異空間からセリカがまとめてくれた現在の味方陣営一覧の写しを机の上に置く。


「では、少し拝見しますね。おお、これは凄い数ですね。なるほど、あそこの貴族にあの貴族まで仲間にしているとは、お、しかもアレン君がいるじゃないですか。いや~彼はかなりの実力者で私も気に入ってたので仲間になってくれているのは非常に嬉しいですね。大体は把握しました。これなら、少し工夫をするだけで、敵対派閥にいつ傭兵や貴族の私兵だけを引っ張ってくることが出来そうです」


「それは良かったです。期待してますわよ。バルバッセロ」


「ええ。存分に期待してください。マリアンヌ様」


「じゃあ、二つ目ね。バルバッセロ、貴方は自分が国王には絶対にならない、公爵としてこの国を帝国から守る守護者であり続けると宣言してください。それも出来る限り盛大に明確に確実に」


「なるほど。確かにそうしないと、何かしらの拍子に私が国王になってしまう風に民の意思が傾くかもしれませんからね。納得です」


「そういうことです。よろしく頼みますよ」


「かしこまりました。それで、最後の三つ目はなんでしょうか?」


「はい。最後の三つ目は、おそらくもうそろそろ王家に対する不平不満が民や貴族の間で大流行します。それと同時に私に対する賞賛の声が増えると思います。その声に油を注いでいただきたい。バルバッセロにも立場があることは理解しているので、無理して国王や王家に対する批判はしていただかなくても結構ですが、私を認めるような発言を公の場で貴殿、自ら口からしてください」


「なるほど。王家を下げてマリアンヌ様を立てる。そうすることで民の意思を今の王家はクソ、マリアンヌ様は最高という形にして、マリアンヌ様が王女として君臨しやすい土台を作るということですか」


「そういうことですわ」


「なるほどなるほど。かしこまりました。。三つ目もしっかりと行いましょう。いや何なら私の口から王家、ひいては国王の悪口を垂れ流してやる。これでもっと民の意思は王家クソに偏るな。ハハハハハハハハハハ。愉快愉快。どうせ王家はクソなのは事実ですし、私はもうマリアンヌ様に永遠の忠誠を誓った身、どうってことないですよ」

 豪快に笑うバルバッセロ、マリアンヌはその姿を見て軽く愛想笑いを浮かべながらお礼を言う。


「何、お礼なんてしなくてもいいですよ。私はマリアンヌ様に永遠の忠誠を誓った身、当然のことをしたまでです」


「そうね。確かのその通りだわ。じゃあ、バルバッセロ後はよろしく頼んだわよ」


「ええ。もちろんです」


「さて、私はこれで帰ろうと言いたい所ですが、さっきの戦いで魔力を使い果たしてしまったので少しここで休憩させて貰いますね」

 事実であった。マリアンヌは普通の人間の数千倍という化け物といって差し支えない魔力量を持っていたが、そのほとんどをバルバッセロとの戦いによって消耗させてしまっていた。

 それを全回復させるには、少なくとも数日は必要であり、帰るための転移結晶を使うための魔力量を回復させるにしても最低でも1時間は必要であったのだ。


「ええ。もちろんいいですよ」


「バルバッセロ、少し話をするわ」


「ええ。いくらでも付き合いますよ。マリアンヌ様」


「私は正直言うと、バルバッセロはもう少し弱いと思っていたわ。もっと楽に勝てると思っていたいし、まさかここまで魔力を使わせられると思っていなかったわ」


「お褒めに預かり光栄です。ですが、勝ったのはマリアンヌ様です。私は敗者です。私はこれでも王国最強の男という自負があり、私に勝つ存在がいるとすれば未知の魔物か帝国最強の男、もしくは何十万と言う軍隊ぐらいかなと思っていました。それが、まさかマリアンヌ様のようなお美しいお嬢様に負けてしまうとは。ハハハハハ。本当に人生何があるのか分かりませんね」


「どうしたのまるで負けるつもりがなかったって言い方ね?悔しいの?私に負けたことが」


「ええ。それはもちろん悔しいですよ。ええ、本当に、ですが、それと同時に歓喜してるんですよ。こんな身近に私以上の強者がいるという事実に、私を今、非常に満ち足りた気分なんです」


「あら、守護者・バルバッセロなんて呼ばれてるけど、その正体はとんでもない戦闘狂ね」


「ハハハハハ。戦闘狂、確かにその通りです。私は戦いが大好きですからね。マリアンヌ様との戦いは、それはもう最高でしたよ。たぎってたぎって仕方なかったです」

 少しだけ息を荒くするバルバッセロ。

 その股間の一物は激しく主張をしていた。


「バルバッセロ、貴方、想像以上に変態ね」

 マリアンヌはそれを見て虫を見るような目ではなく、むしろ好意的な目を見せる。


「ええ、そうかもしれませんね」


「でも、私はバルバッセロのそういうところは好ましく思うわ」


「そうですか、ハハハハハ。まさかそんな言葉をかけられるとは、予想外ですね」


「だって、バルバッセロはどっかの俗物と違って、感情が制御出来てるじゃない。今にも私を犯したくて犯したくて、しょうがないのに、それを理性でぐっとこらえている。それでいて、あの矮小な国王いや愚物にも使ったことのない不慣れな敬語を使って私に一生懸命尻尾を振ってくれる。それがもう可愛くて可愛くてしょうがないわね」

 マリアンヌは闇魔法を操ることが出来る。

 そして、闇魔法の中には相手の欲望を盗み見する闇除きという魔法がある。

 そんな闇除きを使い、見たバルバッセロは戦闘によって火照った体を暴れ狂う性欲を何処かにぶつけたいという欲望に渦巻いていたのだ。

 そしてバルバッセロが国王にすら敬語を使ったことがない、これも事実であった。

 バルバッセロはディステリア王国の公爵である。公爵であるために、表向きは国王に仕えているが、その実、国王のことには真に認めずに、ずっと敬語を使わずに接していた。

 もちろん、普通の貴族であれば即処罰なのだが、ことバルバッセロに限ってだけは違う、バルバッセロはディステリア王国最強の男にして神器を二つも所有し、帝国からの進行を防げる唯一の人材であった。

 そんなバルバッセロに敬語を使っていないという理由だけで処罰なんてのは到底出来なかった。

 ある意味でバルバッセロの権威というのは国王よりも勝っていたのだ。

 そんなバルバッセロだからこそ、今まで敬語というものを使ってこなかったし、これらかも使うつもりはないと習ってこなかった。

 しかし、マリアンヌという真に仕えるべき主に出会い、慣れない敬語を無理やり使いだしていたのだ。


「ハハハハハ。そうですね。マリアンヌ様には全てお見通しですね。しかし、何ですか、それを言葉にするということは、私のこの欲望をマリアンヌ様が受け止めてくれるのですか?」

 バルバッセロは冗談交じりにいった。

 永遠の忠誠を誓った主に対しての発現としては無礼なんて言葉では言い表せないレベルの無礼であるが、しかし、少々、性欲が頭に溜まってしまっていた、バルバッセロにとって、無礼という発想は抜け落ちてしまっていたのだ。


「ええ。いいわよ。だけど私が受け止めるじゃないわ。私が私の為に吐き出させるよ」

 マリアンヌの口から出た言葉はバルバッセロにとって最も予想外の言葉であった。

 まさか、自分のこの欲望にオッケーをしてくださるとわ。

 バルバッセロはマリアンヌを見る。

 その髪は長く綺麗な黒髪であり、自分と同じ黒色の筈なのに、マリアンヌの黒はまるで宝石のように輝いていた。

 そしてマリアンヌの肌は白く、手足は筋肉こそしっかりとついているがパっと見は力強く握ったらまるで雪の様に溶けてしまいそうな程柔らかく細い。

 その胸は程よく実っており、大きすぎず小さすぎず、男も女も含め、ほぼ全ての人間や羨み求め憧れるような丁度いい大きさであった。

 顔の話をすれば、言わずもがな、そもそも論として公爵家という代々美男美女の血を取り込んで来た家の出であるのだ、顔が悪いわけがなかった。

 まだ若く10代であり、シミ一つない肌を持っており、マリアンヌを絶世の美女と言わずに、誰を絶世の美女と言おうか、そう思える程には顔は整っていた。

 そして何よりもバルバッセロが気に入ったのはその目であった。

 絶対に誰にも負けない、自分こそが一番であるという自信に溢れた目であった。

 バルバッセロは女好きで有名であり、戦場帰りに幾多の女を抱いてきていた。

 そんなバルバッセロからみて、マリアンヌは今まで抱いてきた、否、今まであって来た女の中で最も魅力的に映った。

 

「しかし、本当にいいのですか、マリアンヌ様?」

 バルバッセロはこのまま押し倒したいという欲望をこらえて、そう問う。

 マリアンヌという永遠の忠誠を誓った相手に対して、例えオッケーが出ようとも、いきなりそういう行為に及んでいいものか、もしも、魔力不足による疲れによって生まれる一種の気の迷いであったのならば、やめた方がいいのではと、バルバッセロは考えたのであった。


「正直な話をすれば、私も年頃の女の子、そういうことに興味があるの。ただ、これから私の計画が成功して、女王になれば、少なくとも数年間はそういうことをする機会がなくなると思ったわ。だから、せっかくの機会だし一度経験をしてみようってね」

 事実であった。

 マリアンヌとて、年頃の女の子、その上で第二王子の婚約者として、幼少期より夜伽の勉強もしていた。

 それは興味を持つという話である。

 しかしながら、第二王子の婚約者という訳で当たり前の話であるが夜遊びというのは許されておらず、ずっと処女を守り続けていた。

 しかし、セリカと共にとある計画を立てて第一計画が成功してから事情は一変した。

 今現在、マリアンヌが処女を守り続けるという意味は失われていたということだ。

 しかしながらマリアンヌにも男の好みがあった。

 最低でも神器なしの自分と互角に戦えるレベルの武力に現在公爵家当主である自分以上の権力と金銭を持ち、しっかりと鍛えられた筋肉を持ち、身長は自分よりも10センチ以上高いイケメン。

 それがマリアンヌの考えていた条件であった。


 こんな条件をクリアできる人なんていないだろ、マリアンヌ自身もそう考えていたが、バルバッセロはこの全ての条件を満たしていた。

 バルバッセロが神器を持てば神器一つ分・グリモワールのみを装備したマリアンヌと同レベルどころか持久戦になれば勝利をもぎ取れるという武力。

 現在公爵家当主としてマリアンヌ以上の権力と地位と名誉・名声と金銭を持ち、幾多の死線を潜り抜けたことによって、出来た頭の傷と実戦用のがっちりとした筋肉に身を包み、公爵家当主ということで代々美男美女の血を受け継いできたということで顔的にもイケメンであり、身長は2メートルを超えていた。


 つまり、100点ということであった。


 むしろ、マリアンヌからしてみれば、この機会を逃してしまえば、下手をしなくても一生処女を捨てられない可能性すらあった。

 王女となれば下手に結婚が出来なくなるし、結婚するとなっても、自分の条件をクリアできそうな人は限られていた。

 もしも守護者・バルバッセロと結婚となれば、自分も含めて現存する公爵家が2つもなくなるということで国がそもそも論として成り立たなくなる可能性があったので出来ないという大きな壁もあり、深く考えれば考える程、マリアンヌにとって今というチャンスしかないのではと思ってしまった。

 ならば、ここで捨ててしまうというのは大いに有りという話であった。


「かしこまりました。マリアンヌ様がそう、おっしゃるのであれば、私は喜んでお付き合い致しましょう。ですが、マリアンヌ様その前にこの2つを飲んでください」

 バルバッセロは近くの机の引き出しから2つの小瓶を取り出して机の上に置く。


「これは何かしら?」


「右側が最高級の避妊薬です。飲めば1週間は何をしようが絶対に妊娠はしない優れものです。副作用は一切なしです。そして左側が最高級の媚薬です。鎮痛剤も混ざっており、飲めば初体験にありがちの痛みを完璧に消すとともに、初めてでも非常に上手くことが進められるように調合されている優れものです。副作用は精神力が弱い場合はかなりの依存性があることですが、まあ、マリアンヌ様であれば大丈夫だと思います」


「これはありがたいって、たんま。待て、何故こんなものが当たり前のように机の引き出しに入っておる。まさか、バルバッセロ、お前初めからそのつもりで・・・」

 

「いや。違います。違います。マリアンヌ様。いつも接客室や私が個人的に使う部屋には何かあった時の為にと入れているだけです」


「いや、待て、それはそれでとんでもない変態だぞ。女好きとは聞いていたが、まさかここまでとは」


「あ、いや。まあ。はい。確かにそこら辺は一切否定できません」


「まあ、いっか。じゃあバルバッセロ思う存分この私を楽しませてくれよな」

 マリアンヌは2つの小瓶の液体を一気に飲み干す。


「ええ、もちろんですよ。マリアンヌ様。天国へと連れて行ってあげます」

 そうしてバルバッセロに連れられてマリアンヌは近くの大きなベットのある部屋に運ばれるのだった。













――――――――――――――――


2時間後


――――――――――――――――


 流石に経験値の差から、バルバッセロに完全敗北してしまったマリアンヌ様は重く響く腰の痛みとゴロゴロと違和感が酷いお腹をさすりながら、転移結晶を使って公爵家へと戻るのであった。

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