第10話 カムラによる世界樹講座 

 あの魔物”ヒュプノス”を倒したところで気絶し気付いたら『ウラフェルカムラ』のベッドで上半身裸の状態で寝ていた…。体を起こそうとしたところで自らの腕を見る。そこには、双葉の紋章が描かれていた。


(あの声が言っていた。成長する紋章だったか…。どうしてこの力が目覚めたのか分からないし、己の中に光を入れたとき暴走してた感じで制御できていなかった。今度戦うときは比較的止めといたほうがいいだろう)


と考えていると、コンコンという音ともにヴァレッサが入ってきた。どうやら様子見に来たようだ。


「おっ起きていたかアーシュよ」

「はい」


心配するヴァレッサは、下で3人で話していることをつげた後腕を見る。

変色された訳でもなくただ肌の上に描かれた紋章を見て。


「認められたか」

「えっ? 」

「あの声が言っていた彼らが、私とカムラって訳だよ、少年」


ヴァレッサは俺の事を名前で呼ばず少年と呼んだ。

その少年というに文字には何か意味ありげに聞こえるが何だろうな。

(彼らが導くって、こういう事なのかな)

「夕食が出来ている。一度降りようか」


という事で、俺はラフな服を着て外に出る。

そして階段を降り彼らがいる1階へと向かった。

3人とも、起きたか大丈夫かというような会話ののち俺はメープルを見る。

メープルは、羊毛で作られたと思われるだぼだぼの服を着てる。


「彼女に服がなかったから私が服を貸してあげてるんだ。明日か明後日には買いに行くから大丈夫だよ」

「まあ、流石に宿屋に泊まる時のオフの服は…持ってこれなかった…。私の大事なコレクションが…」

「また集めりゃいいじゃねえか」

「そうじゃないよ…。女子の事をもっと理解しなさい。コレクションはね…」

「そこら辺にしな。飯が冷めちまうだろ」


女子の事を理解していないブラストが、メープルに怒られる。それをヴァレッサが止めた。そのあとメープルとブラストはヴァレッサに外へ連れ出され


「ああ、メリネアありがとな。地図描いてくれて。それに心配してくれてな」

「もう誰も失いたくないからね」

「そうだな。無理しないように過ごすから、そっちも無理すんなよ」

「うん、勿論だよ」


 和やかな会話の後に2人は戻ってきた。彼らは恐ろしいものも見たかのようなげっそり顔だった。


「喧嘩はしないでいいね」

「はい…」

「…怖いわ…あれ」


何を見たのか分からないが、とても獰猛なものを見たのか。

おびえている様子だった。そのあと料理が運ばれてくる。


「今日の料理は、エビのカルパッチョ、アラスタ鶏の丸焼き、アラバスル米の白飯、後は迷宮四つ葉茶さ。まあ全体的にスタミナ回復や精神力回復、失われたものを取り戻せるものばかりで作った。さあ、食べな」


 丸いものが何か蒸された料理や、アラス鶏という初めて聞く鶏の丸焼きといっても骨はなくなっているっぽい。後は白飯というものだ…。とあるものが持ってきた文化で今も根付いているのだという。そして飲み物は、迷宮四つ葉茶。四つ葉というと、稀な魔物だったはず。


「「「「いただきます」」」」


と食事前の挨拶を終えて食べ始める。

総ての食べ物がおいしく、サクサクと進んでいく。

ヴァレッサは、食べながらカムラに告げる。


「カムラ、そろそろ話してもいいんじゃないか」

「ああ、その件か。幾ら隠してても無駄だしな」


と立ち上がると詠唱を唱えモニターや色々なものが出現する。

食堂だった空間は、ちょっとした未来の空間へと変わった。


「驚かなくていいからな。これがうちでは普通だ」

「食べながら聞いてくれ。恐らく遺跡で知ったことだと思うが、アーシュとメープルに浮かんでいる紋章は異なっている。メープルは、完成された紋章まあ…面倒だから固定型紋章といい。そして、アーシュに刻まれたのが成長型紋章だ」


という事らしい。このことについては古代遺跡で知ったことなのでいいだろうという事でカムラは続ける。


「メープルの執行人というものについてだな。太古の昔に栄えた文明には、色々調和が乱れていたといわれてるんだ。その執行人というものは、それらのバランスが崩れた際に是正するという役割を持つ」

「そうなんだな。でメープルどうだったの? 」

「うん。比較的正しいと思うよ」


 含みがあるが何も聞かないでおこう…。執行人の紋章が表示された状態で説召されたので落ち着いた感じであった。そして次に出てきたのは、双葉の紋章。俺の腕についたもの。


「それで、今回の本題。アーシュについた成長型紋章についてだ。アーシュについたものは、世界樹型だな。世界に訪れた危機の強さが強ければ強いほど成長しやすいというものでな。成長方法は、階層級のボスを倒す事と…伝承を解き明かし。その伝承に潜む真相を解明するだな」

「で…、”伝承”に潜む真相って何ですか? 」

「ああ、それについてはまず”伝承”というものを知る必要がある」


と告げる。成長方法はいろいろあるけど大体はボスを倒せばいいって事なんだな…。それで、”伝承”って何のつながりがあるんだろ。


「”伝承”というものはな、本来の時系列である古代から続く本当のものと偽物の二種類があるんだ。それで解明しようというのは、現状踏破されていない世界樹及び踏破された世界樹における伝承を解明するって役割がある」

「その偽物の”伝承”っていうのは具体的には…」


と挙手をして聞くメープル、それに対してカムラはとある写真を掲示した。その写真には世界樹のあちこちが継ぎはぎのようなもので繋がった世界樹みたいなのが投影された。


「メープル鋭い質問だね。”偽物”の伝承というものは…、この世界樹の屋上には万物を叶える何かがあるという伝承を創ることで未知の冒険をしたいという冒険者を誘い、踏破しようとしたものは何かしらで消すという事をするような強大なボスを配置し彼らを狩るというものがある。一種の盛大な詐欺だよ」

「なぜそこまで詳しく知ってるんだ」


 色々と情報を持っている2人に率直に質問してみたら2人は少しこっちを見て頷くと…。


「実際にその経験をしたんでな。何かの縁で、ヴァレッサと出会い冒険した頃。当時怪しいという話題であった俺達は最上階が15階の世界樹を踏破してみたんだ。すると見事に当時の元老院である存在が、古代文明の技術のようなものを使って作った総てが偽装の世界樹であることが判明した。まあそいつらは討伐したが…」


(というかさらっと凄い事言ってるな。いつの事だろう)

色々考えていると、カムラがまとめる。


「これが”伝承”を解き明かすって事についてだな。各地に”伝承”は残っているが案の定解き明かされていないやつがあるんだ。それを解き明かすってのは、いつでも大丈夫なものだと俺は思うぜ。冒険者をやっていた宿屋の俺らが専属冒険者として雇う者達への願いみたいなもんだよ。隠すようなことでもないね。俺達は経験してることが多いから色々語れるしこうして講座をするからな」


といい、パンと手をたたくと食堂へと戻る。

俺達は、食べる手を止め呆然と聞く事しかなかった。


「さて、再度温めてくるから待てよと」


冷めた料理をヴァレッサが持っていくことになった。

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