第2話 緑溢翠樹海 1階 未知の詰まった冒険へ


 1階の地図を描きつつ、メリネアの戦闘力を見ている。

 というのも、メリネアの職業は巫女という特別役職。

 巫女みこという職業は、深淵より昔の古代人の失われし職業であり、サポートに特化した職業である。

(意外と強いというか…、流石は姫といった感じだな)


 的確にその場その場での発動するスキルが分かるという点から、訓練されてきたのだろうと判断できた。


「この角の先は、行き止まりだった」


 メリネアの探索魔法で予め何もないという事を聞いたのちに、方向を確認するために移動していたブラストが戻ってくる。


「やはりメリネアの探索魔法は、最適解っぽいな」

「でしょ」


 さらっと、ペンを持ち地図を描いていくが。

(探知魔法は、地図と共有することで書きやすくなるしな)


 ブラストは、スキル構成をバランス型から防衛寄りの型になった。

 負担が減ったからだと思う。

 メリネアはというと、探知魔法で周辺の魔物の気配を察知するため。

 その場で座り目を瞑っていた。


「東方向から、魔物数匹」

「おう」


と淡々と呟くメリネア。

ブラストが、迎撃態勢を取り出現した瞬間撃破する。

というのが続いている。ある程度の魔物を倒すことが出来る。

1階層では、危険な魔物は殆どいない。3階からは危険な魔物がちらほら出てくるとは聞くけどね…。あっ、それはどこの世界樹でも共通だったが。

ここでもそうなのだろう。1階の地図を描き上げる作業は順調に進んでいた。


「さて、1階も残すは北側のみだな」

「1階といってもあれだよね。元々入口が3カ所あるんだっけ? 」

「この世界樹の作りが特殊だからな」


 ブラストのいう通り、世界樹の入口が3つあるといわれている。

それぞれに冒険者が、別れて上がっているとの事。そのどれもが、相応の難易度であり。全滅しているとの情報は今のところ入っていない。今入ったのは中央の入り口から。比較的冒険者の数が多く、攻略速度も速いとのことだ。


「迷宮って集団で攻略するものじゃないの」


 メリネアが、探索中に聞いてくるので授業みたいな感じで少し話す事にした。


「そりゃあ、そもそも迷宮は1つのパーティで攻略するもの。それは、太古の昔から変わらない。こういう伝承もあるんだ」


 特に強いもの達で構成された集団にてとある世界樹の第6階層を攻略している際。通常仕掛けられていない場所で罠が発動し分離させられたうえで……強力な魔物がやってくる。そして彼らの冒険は潰えるというものだ。

メリネアは、へえって頷きながら話を聞いていた。


「そうだとしたら、3人で攻略してるのっていい訳? 」


との疑問にブラストは、


「普通は5人だが1階層の敵は弱いのが多いからな」


とさらりといいつつ、ブラストは側面からやってきた新たな残党の群れを銃で掃討して素材を回収する。


「周辺から魔物気配はしないよ。先へ進もう」


メリネアの探索魔法は、一度発動すると消えることはない。

それが凄いところだ。複数の加護魔法を発動できる存在は本当に稀だ。


「ありがと、巫女のバフ再度掛けて」

「はっはい、雨の舞」


このスキルは、味方全体に体力回復MP回復などをしてくれる優れもの。

発動者本人はMP回復しないが、これはお得といってもいいだろう。


「さていきましょう」

「まあな。回復薬などを駆使する事はなく。商店での購入が巫女みこのMP回復関係だけでいいってのも」

「色々資金的に楽できると思うよ」

「それは助かるな」


 という風に迷宮内部で話しながら安全に過ごしていく。

何度も戦闘になったが、敵が来る方向が分かっている以上。

苦戦することもない。


安全の空間を確保した後に昼飯を食べた。

そこからはというもの何も問題が起きることなく1階の地図埋めは順調に進んでいき……。階段の場所を見つけた。

階段の場所を記したのち、周りに何もないのかを確認し。


「さて、帰るか? 」

「黄昏に近いしねー」


ブラストとメリネアは帰る気満々であるが…

1階の比較的完成した地図を広げ考察する。

1か所だけ、気になる場所がある行ってみるか…。


「2人とも来てくれ。この地図、中央の右端少し寄っていいか 」


2人とも地図を身にやってくるので、右端の方を示す。


「…、なんかあるのか? 」

「古代文明の痕跡を、調査する。そのためにも怪しい場所は探らないと」

「そういやそうだったな。行くか」


 ブラストは、納得する。

メリネアは、どういうことか分からない様子だったので。

俺とブラストで説明しながら移動することにした。


「なるほど、古代文明の痕跡探しか…。なんだか楽しそう」

「まあな。こういう何かを探すのも面白いだろ」

「うん」


 広場を複数抜け道を歩いていくと、前とは違った空間の場所が見える。

そこに、はじめ通ったときは分からなかったが、異質な感覚を覚えた。

頭がそこへ行けといっているような、なんだか分からない感覚に襲われつつも歩いていく。ここの世界樹の中は緑生い茂る道だが、そこだけ石の模様が入った石レンガの道なのだ。異質だともいえる通路、メリネアとブラストは、


「おいおい、そこ行き止まりだぞ」

「…うーん。なんだろう」


と双方とどまっている。言われてみてはっと気づくと目の前に壁が見えていた。

(先程まで通路が見えていた…。見えていなかったものが? )

不思議な感覚に襲われたが、頭を振り己の中で否定する。


「…メリネア、なんとかして」

「幾ら何でも…無茶ぶりが過ぎる」

「サポートなんだしなんかあんだろ


 メリネアはそっと目を瞑った、


「どうにでもなーれー」


思考を放棄したのか杖を地面にたたきつけた。

(ごり押しかい)


「何するんだよ。って、ええ」


 次の瞬間、迷宮が轟音とともに地面が胎動する。

こっちへおいでといわんばかりに石レンガの道が姿を現し揺れは収まった。


「どうするアーシュ 」


とメレニアはきくので俺は、少し考えたのち


「一度帰ろう…、この奥は深い気がするしな」


という事で、世界樹1日目の探索は終了した。

その後、冒険者ギルドへ戻ると対応に追われていた。

原因は恐らく、先程の轟音と激震だろう。

ギルドに報告を済ませた後に古代遺跡の事を伝えると、ムーナムは一晩考えさせてくれと伝えたうえで。

今日はゆっくり休むようムーナムに促され宿屋に帰ることに。


 その際、最初のミッション攻略記念に、アリアドネの糸購入権が与えられ冒険者として認められ冒険者カード仮から、認定冒険者の冒険者カードを渡され。

晴れて正式な冒険者へと昇格したのだった。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る