第39話 誘惑 in TAXI
私達が大広間から出てクロークの前に差し掛かった時、前方の車寄せに停まったタクシーに乗り込む相沢と美咲ちゃんの姿が見えた。
私達は疑われないように門の前まではゆっくりと歩き、門を出てから一目散に山下新之助の軽自動車へ向かってダッシュした。
軽自動車に乗り込み、スマホのGPSアプリを立ち上げる。
珍之助のバイクにGPSトラッカーをセットしてあるので、美咲ちゃんと相沢の乗ったタクシーを追う珍之助のバイクの位置がリアルタイムで分かるのだ。
アプリの地図上では、珍之助のバイクが246号線を東に進んでいる。
え?高輪とは反対方向だぞ!?
優子が予約した高輪のホテルに相沢を連れて行かなければ、この計画は失敗だ。
でも私達がどうこうできる状況ではない。ここは美咲ちゃんに任せるしかないのだ。
私達は予定通り、高輪のホテルへ向かう事にした。
美咲ちゃんの事が心配だけど、彼女が上手くやってくれる事を祈るのみだ。
その時、ふいにLINEメッセージ着信。
誰かと思ってスマホを見ると・・・げっ、さっきデートクラブで相手をしたドMで幼児プレイ嗜好の脇坂国土交通省大臣からだ!
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マコチャン、ヤッホー💕(笑)何してるの❗❓🤔オジサン明日も、仕事だけど、なかなか寝れないよ〜(^▽^;)(^_^;😱(T_T)
マコチャンが、可愛すぎて、僕お仕事に、集中できなく、なっちゃいそうだよ(^_^;💔どうしてくれるんダ(^_^)💗😃☀
今日は、楽しい時間を、ありがとうね(^_^)(^з<)すごく、楽しかっタヨ🎵😘(^o^)
次に会う時は、もっと、オギャらせて欲しいな❗❓(-_-;)(^▽^;)ナンチャッテ(笑)
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うひゃぁ・・・・
痛すぎる・・・
こんな文面にどんな返信すればいいんだよ・・・
仕方ないので「今日はありがとうございました。またお会いできるのを楽しみにしております」と無難な返事を返しておいた。
が、返信してから30秒ほどでまたメッセージが。
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早くマコチャンに、会いたイヨ(T_T)冗談😃😃♥ 💗(^_^)
でも、きっと、夢で会えるヨネ🎵ドキドキ♥♥♥(^▽^;)
🎵夢でまた会えたらーステキなコトねー🎵😘ナンチャッテ😍(^_^)😃☀
ゆっくり、身体休めてね😃✋オヤスミナサイ🤑😤( ̄▽ ̄)(# ̄З ̄)
バブバブー😍😘(^_^)
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ハァ~、何がバブバブーだよ・・・
アタマ痛くなってきた・・・
こっちはそれどころじゃねぇんだよ!
これが国土交通省大臣だなんて・・・日本終わってるな。
車は麻布通りを直進し、清正公前交差点のY字を右に入って目黒通りへ。
そして目黒通りに入ってすぐ左手にあるのが、今回優子が予約してあるホテルだ。
この辺りでも高級な部類に入る4つ星ホテルで、私みたいな庶民にはまったく縁が無い様な高級ホテルだ。
ここは場所柄、芸能人がプライベートやお忍びで使う事が多いらしい。
車を地下駐車場に停め、私と山下新之助は優子の待つ最上階の部屋へ向かう。
エレベーターを1階で乗り継ぎ、最上階に着いてから長い廊下を歩いた一番右の突き当りの1230号室。
ドア横のインターホンのボタンを押すと、しばらくして静かにドアが開いた。
「凛子ちゃんっ!!」
ドアが開くなり、いきなり優子が私に抱き着いてきた。
「優子っ!どどど、どうしたの?」
「ごめんね、ちょっと怖くなっちゃって・・・凛子ちゃん大丈夫だった?」
優子はずっとこの部屋で一人で待っていて不安で仕方なかったらしい。チェックインしてから3時間。確かにこの広い部屋で一人じゃ心もとないだろう。
それにしても豪華な部屋だ。
12階だからそんなに眺望が良いわけではないが、それでも高輪、品川の美しい夜景が、大きなベランダの窓ごしに輝いている。
私達は窓越しにあるソファーに座り、スマホの画面にリアルタイムで表示される珍之助のGPSトラッカーの様子を確認する。
現在、大手町に交差点付近でGPSのマーカーは静止している。
恐らく渋滞にハマっているのだろう。
でも高輪とは全然反対方向、相沢と美咲ちゃんの乗るタクシーはどこへ行こうとしているのか・・・
赤坂から大手町方面・・・このまま北上するとすると・・・押上だ!
相沢は京英女子大附属病院に向かおうとしているに違いない。
マズいな・・・
もし相沢が美咲ちゃんと連れて京英女子大附属病院に行ったら、何されるか分からない。
美咲ちゃんの事だから力ずくでどうこうされる心配は無いけど、今回の計画は失敗してしまうし、デートクラブを利用して相沢に近づく作戦も、今後は使えなくなってしまうだろう。
どうしよう・・・とりあえず珍之助に連絡してみるか?今は渋滞にハマっているはずだから、電話に出られるかもしれない。
私は珍之助の携帯を呼び出してみた。
ププププ・・・・
「珍之助です。ちんこか?どうした?」
「どうした?じゃないよっ!今どうしてるの?美咲ちゃんの乗ったタクシーは?」
「渋滞で動いていない。この先で事故があったみたいだから」
「あのね、相沢はきっと押上の京英女子大附属病院に行こうとしてるみたいなんだよね。でもそれじゃマズいんだ。何とかこっちの高輪のホテルに来させるように出来ないかな?」
「ん・・・・・そうか・・・分かった」
ぶっきらぼうに返事をすると、珍之助は勝手に通話を切ってしまった。
なんだよ、機嫌でも悪いのか?渋滞でイラついてるのか?
でも分かったって言ってたよな?
いったいどうする気だ?
何か案でもあるのか?
----------大手町交差点 珍之助-------------
凛子との通話を終えると、珍之助はヘルメットを被り、バイクを発進させた。
渋滞している車の間をすり抜け、虎ノ門の路地へ入って新橋仲通りを進み、赤レンガ通りへ抜ける。
辺りを見回しながらゆっくりと走り、とあるビルの前でバイクを停めてそのビルの6階にあるインターネットカフェへ向かった。
エレベーターのドアが開くと、すぐ目の前に受付のカウンターがあった。
「らっしゃいあせぇー」
カウンターの中にいるアルバイトと思しき若生男性は、珍之助には目もくれず携帯を弄っている。
「個室、30分」
「個室ですねー、えーっと、お客さん会員の方ですかー?」
「初めて」
「それじゃあ、身分証のご提示をお願いしまーす」
どことなくダルそうに対応する店員。だが珍之助は身分証を持っていない。
「身分証・・・無いが」
「あー、身分証が無いと会員登録できないんスよねー、すいません、免許証とか保険証とか持って来てもらえますー?」
店員は面倒くさそうに言うと、カウンターの椅子に座ってしまった。
珍之助は無表情でジャンパーの内ポケットから何かを取り出すと、カウンターの中に居る店員の前にそれを置いた。
「えっ!?お、お、お客さん、これ、な、何ですか?」
「これで会員登録して欲しい。心配はいらない、決してあなたやこの店に迷惑は掛けない」
珍之助が店員の目の前に置いたのは10枚ほどの1万円札。
「え?い、いや、これ・・・参ったな・・・マジかよ・・・、絶対大丈夫なんですね?ホントに問題無いですよね?」
「大丈夫」
「・・・・・ 一番突き当りのブース、A12号室です・・・絶対に30分以内で出て来てくださいね」
店員は札束を素早くポケットに入れると、ブースのキーを珍之助に渡してくれた。
珍之助はブースに入ると、ポケットからUSBメモリを取り出し、PCに挿入した。
そしてUSBメモリの中にあるバッチプログラムを起動させる。
Windowsのコマンドプロンプトが立ち上がり、ネットカフェのサーバーにバックドアを作り、さらにプロバイダーのサーバーに侵入した。
次に東京都の交通管制センターのサーバーに侵入を試みる。
コマンドプロンプトに交通管制センターのサーバーのアドレスを入力し、USBの中にあるもう一つのプログラムを起動させると、そのプログラムが海外の匿名サーバーを経由して一斉に交通管制センターの制御プログラムにハッキングを開始した。
暫くすると、ロシア経由のルートから侵入することが出来た。恐らく交通管制センターではもうこちらの侵入が察知されているはずだ。早くしないと切断されてしまう。
次にサーバーの中の膨大な数のプログラムの中から、東京都東部の信号制御プログラムを探さなければならない。
珍之助はウクライナのハッカーにコンタクトを取り、助けを求めた。
凛子はいつも『珍之助はエロフィギュアのサイトばかり見ている』と思っていたみたいだが、実は世界各国のハッカーと連絡を取り合って情報共有をしていたのだった。
ウクライナのハッカー、通称『サイラス』がすぐに珍之助の問いに答え、予想される制御プログラムへのルートを送ってくれた。
サイラスが送ってくれた10個ほどの侵入ルートを順番に試してみる。
1個目・・・×
2個目・・・×
3個目・・・×
4個目・・・通った!!
ネットカフェのPCの画面に『東京都交通管制システム 交通信号機制御プログラム』の画面が現れた。
東京都東部・・・台東区、文京区、江戸川区、江東区・・・この区のすべての信号機を赤信号点滅スタンバイに変更、そしてUSBメモリの中からコンピューターウィルスを交通管制センターのサーバーに流し込んだ。
これで暫くは東京都東部の信号機は麻痺したままだろう。根こそぎ破壊したわけでは無いが、数時間は復旧しないはずだ。
USBメモリからターミネーションプログラムを起動する。
これでネットカフェのPCから珍之助が行った軌跡は完全に削除される。
珍之助はPCからUSBを抜き取ってポケットに入れると、ブースを出て出口へ向かった。
カウンターの中に居る店員にブースのカギを返却し、エレベーターへ乗り込んだ。
------ 大手町交差点 相沢と美咲が乗るタクシー ------
「ったく、どうしたんだよ、全然動かないじゃねえか・・・」
相沢はイライラした様子で窓の外を見ながらつぶやいた。
かれこれもう30分近く立ち往生している。
「お客さん、なんか信号機が故障してるみたいですよ」
タクシーの運転手がそう言いながらFMラジオのボリュームを上げると、交通情報のアナウンスが車内に流れた。
『午後22時20分現在、都内東部、台東区、文京区、江戸川区、江東区は信号機故障により、すべての交差点および首都高速出入口で渋滞が発生しています。東京都交通管制センターの発表によりますと、復旧の見込みは立っておらず・・・』
「マジかよ、ツイてねぇなあ、運転手さん、何とか押上まで行ってくんない?」
「うーん、そうですねぇ、文京区、台東区、江東区の信号機がダメって言ってますからねぇ、回り道も出来ないですねぇ、どうしたらいいかなあ・・・」
運転手は日比谷通りから横道に入り、何とか押上方面に進もうとするが、どこもかしこも大渋滞している。
「ねえ。私の部屋に来ません?高輪だからあんまり渋滞してないと思うし」
美咲はわざとニットのワンピースから伸びた足を相沢の方に向けて組み直した。白い太腿がネオンに照らされて艶めかしく光る。
「君の部屋か・・・でもなあ・・・」
相沢は迷っていた。押上の京英女子大附属病院の自分の部屋にはクスリを準備してある。
こんな上玉で好き物の女子大生とクスリをキメたら・・・絶対に得も言えぬ快感が待っているはずだ。だからどうしても押上に行きたいのだ。
だが、身体にぴったりとフィットしたニットのワンピースを着ている美咲の姿を見ていると、どんどん欲情が沸き上がって来てしまう。
ふいに美咲が相沢にもたれかかり、スーツの胸元に顔をうずめた。
相沢の腕の辺りに、美咲の胸の感触が伝わって来る。
「これ、男の人のニオイ・・・私、好きなんです、このニオイ、これ嗅ぐとすっごくドキドキしちゃう・・・」
そう言うと美咲は相沢の手を取って、ワンピースの胸元からその手をブラの内側に滑りこませた。
「ね?分かります? 私の心臓、ドキドキしてるでしょ?」
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