俺と義妹、関係を進めたい涼香。






「気付いてくれた、かな……?」




 涼香は窓の外、浮かぶ満月を見上げてそう呟く。

 さっきの言葉は彼女にとって、かなり大きく踏み込んだものだった。もっとも、義兄が自分をあくまで義妹としか見ていないなら、意味のないことだけども。それでも、ほんの少しでもいい。考えて、悩んで、意識をしてくれたら嬉しかった。



 貴方に助けられた女の子がいます。

 貴方に救われた女の子がいます。

 貴方に恋する女の子がいます。



 本当は真っすぐに、そう伝えたかった。

 だけど、それはどこかこそばゆくて、なかなか口にできない。



「うーん、義兄さんは鈍感さんだからなぁ」




 そこに加えて悩みの種は、義兄の鈍さ、だった。

 彼は決してモテないわけではない。昔から彼のことを慕う後輩は多く、中には恋をする女子生徒だっていたのだ。しかしそれに目もくれず涼香の傍にいたのは、実に義兄らしい。

 そのことに安堵していた義妹だが、それがいま逆に自分を苦しめていた。


 どうすれば振り向いてくれるか、と。

 そんなことを考えて、寝不足になる日はたくさんあった。




「んー、やっぱり積極的に行くべき……?」



 今日も今日とて、少女は思い悩む。

 ああでもない、こうでもない。


 鈍感な王子様を振り向かせるには、いったいどうすれば良いか。

 ナース服も駄目だった。ネコミミも、駄目だった。

 それなら――。




「うぅ……これは、少し恥ずかしいけど……!」




 涼香は以上の二つと同時に購入したものを引っ張り出し、顔を赤らめる。

 しかし、行くならこれしかない。



 そう考えて、決意を固めるように。

 彼女は胸の前で、小さく拳を握り締めるのだった。




 

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