第8話 あっと言う間にアイドルも……

母や兄は喜んでくれているだろうか、夕張を思い浮かべている暇も与えられない程の

スケジュールがビッシリ詰まっていた。

 「ミサキちゃん、明日は福岡だからね。羽田空港まで今の内に寝ていな」

 寝るといっても蒲団じゃない空港に向かう車の中だ。それから二年間、休みは年に三日あったのだろうか、スターともなれば莫大な収入があると思われるだろうが私の報酬は月給制で三十万円、税金と保険料を差し引かれると手取りは二十四万程度にしかならない。

それでも普通の女性の月収に比べたら高いと思われるが、年間労働日数三百六十日超で一日の休み時間は最高で六時間の睡眠をとるだけだ。つまり十八時間超労働となり、とても高い給料ではない。普通の人の倍の時間を働き更に休みもなし。三十万も倍働くから十五万と同じだ。もちろん金を使う暇も与えられないから給料はそっくり残った。その半分を実家に仕送りする日々が続いた。そして私の悪夢はここから始まった。


つづく

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