第3話 二ホンの休日

声の大きさを下げ、周りに聞こえないように話し始める。


「今からの会話は周りに聞こえないように話してくれ、まず俺はこの状況事態がクレアさんの身近な人もしくは親に作られてるかもしれないと考えてる」


二人を交互に見ながらゆっくり説明を続ける。


「前提条件としてクレアさんは母国ではそれなりの地位、もしくは立場

にいると考えてるけど問題ないかな?」


周りを軽く見渡しながら静かに答える。


「詳しくは言えないですけど、そう思って貰って大丈夫だと思います」


「ありがとう、そうなってくるとクレアさんにはボディガードだけじゃなく

最低でもスマホか何かにGPSくらいはついてると思ってる」


「なら私達が買物したり遊んでる間にボディガードの人達が来てないとおかしいんじゃないの?」


「その通り、だからあえて泳がされてると俺は思ってる、それに仮にGPSとかがついてなかったとしても、外国でそんな重要な人が居なくなったもっと躍起になって探すもんじゃないか?」


「確かにそうかも」


「待って下さい、私は本来この時間はパーティーに参加してるはずだったんです

ならすぐにでも捕まえてパーティーに連れていきませんか?」


「だから俺の仮説が正しければクレアの身近な人がこの状況を何でか分からないけど作ってると思うんだ」


「確かにそれならこの状況は説明出来ますね」


「だろ、だからこの状況を交渉に使おうと考えてる、交渉相手はクレアの親だ」







カフェを出ると辺りはもうとっくに暗くなり、町の明かりが輝いていた。

そこからしばらく歩くと少し広い公園に出る。


「ドキドキしてきました」


「大丈夫、クレアならできるよ」


「そうだよ、クレアはこんなに可愛いんだから自信持ちなさいって!」


「いや、今可愛さは関係ないだろ、可愛いけど」


「関係あるでしょ、あんたよく可愛いは正義って言ってるじゃん」


「なら関係大有りだ、その点クレアの可愛さはとてつもないからもはや法律ほどの力を持ってると言っても過言じゃないな」


「あの、緊張してるこの場面で可愛いを言い続けるのは止めて貰っていいですか!?

恥ずかしさと緊張でどうにかなりそうです!」


顔を真っ赤にしながらうろたえる姿に思わず心ときめく。


「うんうん、そのままどうにかしちゃえ!」


「もはや春香はノリで言ってますよね」


「人生のノリと勢いは大切よ」


「それっぽく聞こえちゃうんだからずるいですよ」


「まああれだ、もしこれがダメでも悪いのは俺の作戦のせいだし絶対にどうにかして

二人で遊びに行くから」


恥ずかしいセリフの自覚はあるので目を背けながら話す。


「本当に優しすぎますよ二人とも、ホントに何から何までありがとうございます」


「女の子には優しくしろってゆうのが俺の家の家訓でね」


「私には厳しくない?」


「ただし春香は除くってのも俺の家の家訓だ」


「なら私がその分、春香を甘やかしますね」


「もう私クレアの家の子になる」


「ならまずは、この作戦を成功させなきゃだな」


「そうだね」


クレアの手を取り真っ直ぐクレアを見つめる。


「頑張ってね」


「ありがとう春香、わたし絶対成功させる!」


「頑張れよ」


「はい、行ってきます」


俺と春香にしっかり目をみて笑うと少し離れた所にに歩いて行き、一呼吸置いてからスマホを開いた。


「大丈夫かな」


「今は信じるだけだよ」


今は二人でその背中を見守る事しか出来なかった。


*****



震える指先を何とか抑えながら秘書のアキソンに電話を入れる。


よく聞きなれたコール音が鳴る。


一回


二回


身近い時間が永遠に感じる。


「はい、バトラー・アキソンです、お嬢様心配しましたぞ」


「もしもし、エイミー・ド・グレイです、心配を掛けてすみませんでした」


「いいえ、ご無事なのが何よりです。」


この落ち着き方だとやはり、私の状況はある程度分かっているんでしょうね、

尾行や監視を私達にバレないようにやるなんてこの人達なら簡単なのでしょうし。


「ありがとう、父は今電話に出られそうかしら?」


「大丈夫ですよ、今変わりますがその前に失礼ながら一言よろしいでしょうか」


「はい、何でしょうか?」


さすがに今回の事で怒られるのだろう、こんな事したら怒られてもしかたないよね。

忙しい両親に変わってむかしから昔からよく私の面倒を見てくれた人で、遊んでくれたし、外の世界の事を教えてくれたしそれだけ私のことを大切に思ってくれてる事も

分かる。


「これはアキソン個人の言葉です、頑張りなさい。それでは只今電話を変わるので

少々お待ちください。」


予想外の言葉だ。でもとっても温かい言葉だ。

気がつけば手の震えは消えていた。


2~3分くらいだろうか、スマートフォンから馴染みの声が聞こえた。


「エイミー、何をやってるんだ」


「すみません、お父様」


「取り敢えず今日は熱が出たとゆう事にはしたが、自分の立場を理解しているのか?」


当たり前だけど、感情的に怒鳴るような事はしないけどやっぱり怒ってるよね。


「本当にごめんなさい、いろんな方々に迷惑を掛けました」


「まあエイミーは今までわがまま言わずによくやってるとは思ってるが、こんなやり方は良くない分かるな?」


「はい、反省しています。」


「まあ話は帰って来てからだ」


「あのそれなのですが」


震えそうになる声を抑えながら私は話す。


「この国に留学さててください!」


「・・・、エイミー」


「今日この国を歩いていろんな事を学びました、金銭の流通の仕方の違い

価値観の違い、考え方の違いにマナーの違い。王女として学ぶことがまだこの国にはあると思いました」


「言ってる事は最もだ、だがそんな事は急に出来ない事も十分君は理解しいるだろ」


「でもこんな経験が出来るのはもうないと思います、もう少しすれば私も多くの務めを果たさなくてはいけなくなりません。それに日本は治安がいいですし、あまり私の事が知られていません、どうかお願いします。」


「うーん、筋は通ってる。でもそうしてしまうとスケジュールの調整はどうするんだ、ん?アキソンなんだこれは、スケジュール変更案?妻から?」


なんだろうか、やけに電話の向こうが騒がしい。


「全く、有能すぎるのも困るな。アキソン、君もこれがどれだけ無茶な事がわかるだろ?こんな事をすれば私達だけじゃなく周りにも迷惑がかかる。」


他にも協力してくれた人が居るみたいけど、まだ許可は出そうにない。

そしてここまで拒否されるのは光さんが想定していた、後残っているのは私の気持ちだけ。


すぅー、っとゆっくり呼吸し気持ちを落ち着けてゆっくり話し始める。


「お父さん、いままで言いつけをしっかり守って勉強も務めも今日まで頑張りました。でも、だから私の最後のわがままです。

日本でできた友達と今はもう少しだけ一緒に居たいです!」


光さんは言っていた、最後の最後はどんな理屈よりも感情で人は動くと。

なら私の素直な気持ちを最後に伝えるだけ。


「お願いします!」


・・・沈黙に緊張が走る。


それを打ち破ったのは他でもない、父の笑い声だった。


「はは、娘にそこまでいわれちゃ断れないな、分かったよでも期限はビザの日数だけだ、そこまでが期限、その後は務めを果たすこと分かったな?」


「はい!ありがとうございます」


「すぐ住む場所を手配するからそれまでは、私の友人のホテルに泊まりなさい。

あと行動するときは、最低でもテッサと行動しなさいそれが条件だ」


「分かりましたお父様」


「詳しい話は追って伝えるからな、あと一日に一回は電話をくれな、寂しいから。

体調に気を付けてな」


「ありがとうございます!」


「あと近くに君の逃亡を手助けした男がいるだろ、変わってくれないか?」


「えっと、それは・・・」


光さんに迷惑だけはかけたくない。


「ああ、責めたりとかそうゆうのじゃないよ、多分この彼は監視とかこの電話とかいろいろ考えたんだろ?彼だけが周りを警戒していると連絡が来ていたし、この交渉の仕方は私の娘のやり方じゃないからね、ただ純粋にどんな人か気になったんだよ」


「そうゆう事なら今変わりますね」


*****



「オッケー貰えたみたいね」


「うん、良かったよ」


取り敢えず一安心と思ったらクレアが手招きしてる。


「おれ?」


確認の為自分を指さすとうなずいている。


「ちょっと行ってくる」


まずいな、なんかやらかしたかな。

もしかして俺つかまっちゃう?どうしよ今期のアニメ見逃しちゃうよ。

いやいや考えるののが今期のアニメとかおかしいだろ!

これからの生活とか人生とかだろ!

人間現実逃避したくなると人は頭おかしくなるな。


「えっと、父が光さんと話したいみたいで」


「あー怒ってる?」


「いえいえ、なんか凄く興味があるみたいですよ」


「え~」


俺なんか興味持たなくていいのに。

スマホを受け取り、取り敢えず丁寧に話し始める。


「お電話変わりました、クレアの友人の光です」


「お前か、俺の可愛い娘に手を出した男は!」


「すみません!」


「冗談だよ、一度言ってみたかったんだ」


「そうでしたか、ハハ」


寿命が今ので3年な縮まったのでやめて頂きたい。


「君はクレアをどう思う?」


「えっと、物凄く可愛いくて、美人でスタイル良くて性格がよくて

全てが満点で完璧だと思います」


「クレアが最高に可愛いのは私も思う、そうじゃなくて人格的な所、考え方とかはどうかね?」


「そっちですか、そうですよね。頭の回転は速いと思うし、模範的な回答を考えればすぐ出せるし、あの性格なら人望も厚いと思います。」


「いい目をしてるな、なら弱点は?」


「逆に言えば悪意や、少しひねくれた物が苦手かもと思ってます。」


「案外と日本での留学はありかもな、君一日一万でクレアの近くにいてあげてくれないか?」


この人達一万好きだな、単位的に区切りが良く、この人達なら支払が一番容易なのだろう。

一万円か、あればバイトもしなくていいし、趣味もはかどるだろうな。

お菓子もゲームも買いたいほうだいだろう。でも


「とても嬉しいお話ですが、お金は結構です、僕はクレアさんの友人として彼女の近くにいたい。お金を受け取ってしまうと、何か違う気がして。」


「いいね、ますます気に入った、今度家に来なさい、いい仕事を紹介するよ」


「その時はお願いします」


絶対嫌だけど。


「お金の件は一応言えばすぐその日の分まで振り込めるようにしておく、お金の流れは僕の家と君との関係の証明でもある、お金は別の使い方もあるって事は覚えておきなさい」


「分かりました、覚えておきます」


「じゃあクレアを頼んだよ」


「はい、分かりました」


「ではクレアに変わってくれ」


ふー、っと一息つきクレアに電話を渡した。


「ではクレア、テッサを今そこに送ったからもう少し待っていてくれ」


「分かりました」


「うん、ではまたな」




















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