第8話姿無き家族

霊が今もあの物件にいるのか決定的な映像を撮影するために、我々は例の物件へと向かった。

不動産会社から許可をもらうと、二人はカメラの設置に取りかかった。

今回三吉は五つの監視カメラを持ってきた、そして前回の取材で霊が出そうだと判断した一階のリビング、キッチン、トイレ付近、二階の子ども部屋、階段の五ヶ所にカメラを置いて監視することにした。

二人が部屋から出ると、こちらを怪訝な様子で見つめる高齢の男性がいた。そして男性は話しかけてきた。

「あんたら、この家で何しているんだ?」

「ここに霊が出ると聞きまして、調査しにやってきたんです。」

「そうか、ここは霊が出るよ〜」

「やっぱりそうですか、ところでどちら様ですか?」

「隣の家の愛宕あたごといいます。」

我々は隣人の愛宕さんに、事故物件のことについて取材してみることにした。

「確かにこの家は、幽霊が出るって近所の話題になっていたね。幽霊を見て悲鳴を上げた人の声を何度も聞いているし、その一週間後には引っ越しのトラックが来ているのを見たよ。だからちょくちょく住人が変わる家だなぁ・・・という実感があったね。」

「ここが子ども会で使われていたということは、ご存知でしたか?」

「ああ、十年前ぐらいにね。たくさん子どもたち来てたよ。それで子どもたちが『あそこは幽霊が出るよ』ということを、ちょくちょく言っていたなぁ・・・。」

「あの家の中に上がったことはありませんか?」

「無いなあ、ワシも幽霊は苦手だからな。最近腰抜かしてしまったばかりだし・・・」

「え?幽霊を見たのですか!?」

「見たよ、一ヶ月前だったかな・・・。夜中の九時ごろに、ふとあの家を見たら、一階のガラス戸に女の子の霊が張りついていて、思わず腰抜かしてしまったわ。」

「そうですか・・、では最後にあの家に少女とその両親が住んでいたのはご存知でしたか?」

「ええ、春子ちゃんね。昔はよく庭に来て遊んでいたよ。両親とも顔見知りだ」

「そうですか、取材にご協力ありがとうございました。」

そして我々は愛宕さんと別れた。





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