第9話姿無き家族(2)

日が落ちて暗くなった午後七時、監視カメラの映像はすっかり真っ暗になっていた。

椿と三吉は事故物件の近くに停めてあるワゴン車から、遠隔で監視カメラの映像を見ている。

「今のところ、とくに怪しいものは映りません。」

「そうか、ではこのまま様子を見よう。」

しかしそれから何も映らない時間が過ぎていく、テレビの静止画を見ているような時間が過ぎていく。

「しんどいっすね・・・」

「ここで音を上げたらダメだ、必ず幽霊は映りこむ・・・」

椿は真摯に映像を見ていた。

そして九時四十分・・・・、ついに動きがあった。

映ったのは二階の子ども部屋、少女の霊があのぬいぐるみの前に立っている。

「本当だ・・・、本当に少女の霊だ!」

すると今度は階段の映像から、人の足音が聞こえてきた。

すると少女の霊は、それに気づいたのか子ども部屋のドアをすり抜けていった。

「おい、見たか!今、少女の霊が現れたんだ!」

椿はすっかり寝ている三吉を揺さぶったが、彼は爆睡していて起きなかった。

椿が再び映像に目を通すと、トイレ付近を映した映像に男の霊が映りこんだ。

男の霊はトイレへとゆっくり歩いていき、そしてトイレのドアをすり抜けていった。

「ついにとらえたぞ・・・!」

椿は心の中でガッツポーズをした。

それから時はすぎて日付が変わった午前0時すぎ、再び子ども部屋に少女の霊が映りこんだ。

「またきたぞ・・・!」

しかも今度は母親の霊も一緒に映りこんだ。

二つの霊はまるで親子のように仲良く遊んでいた。

そして少女と母親の霊が消えると、今度は父親の霊が現れた。父親の霊はリビングに腰を据えると、そのまま動かなかった。

「なんか日常の生活を映しているみたいだな・・・」

するとトイレ付近に少女の霊が現れた、姿勢を低くして何かをしているように見える。

すると母親の霊が慌てて出てきたかと思うと、少女の霊にビンタをした。

「えっ・・・!?一体何だこれは?」

しかし突然トイレ付近のカメラが落ちてしまった・・・。

椿はガックリと肩を落として、そのまま寝落ちしてしまった。





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