第4話 深い森


 天の逆鉾の霊夢と皇子。狭霧が舞う山中、礫石の山肌へ少年が蒼天から舞い降りてきて、夕霞の闇の華を溶かし、小糠雨が地肌に降り、架空の佳境で舞い狂う。


 深い森の中に太古の神のまにまに草野姫たちが棲み、少年はそれを開き入れた森の精霊と歌いながら夕神楽を一心不乱に舞い続ける。


 


 夕霧は晴れる、夕日隠の聖なる花の舞も終わる、終わりの終わりが到来する。


 夕靄に馴染んだ山林がそぞろに夕風のコンチェルトを鳴らす。御池の水が夜に向かうために青くなっていく。


 夕霧の中の舞は終わらない、夕さリにだけ表出する、夕陽の森の精霊が消え去るまでは。


 面影揺らぐ、遮光が差し込む夕霧の中で舞え、舞い狂い、舞え、舞い続け、と天津神の血筋を引く少年は水辺のほとりで舞う。普段、寡黙なお父さんが熱演してそんな風に語ってくれたから何か、おかしかった。


 


 あの夢のことはそれ以来、誰にも話していない。


 逃れられない運命かのように私の記憶の底には刻印され、記憶の湖底に沈んである。


 夢の中で出会った少年が果たして、何を暗示するのか、あの頃の私には分からなかった。



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