第5話 森での再会
私は「時の加護者」アカネ。
異世界アーリーを心配しても、懐中時計を手放した私には行く手段がなかった。そこで私は、異世界と強いつながりがある依美ちゃんに会いに行く。 なぜならば彼女はヨミの生まれ変わりであるからだ。 依美を抱きかかえると、思った通り私を異世界アーリーへ連れて行ってくれた。
—タイサント ドライアドの森—
(ああ.. なんか乗り物酔いみたいに胸がムカムカする)
「ウッ ブヘェ.. 」
急な吐き気に身を起こし、空腹の胃から少量の胃液を吐いた。
「大丈夫? おねえちゃん。この枝を咥えて」
ありがたい、サイフォージュの枝だ。
瞬く間に気持ち悪さが無くなり、気分がスッキリする。
「ありがとう。あ、あなたは? 」
「私はツグミだよ」
「え? 嘘だぁ。 だって依美ちゃんはまだ1歳未満だよ。あなたはどう見ても5、6歳でしょ? 」
「うん。6歳だよ」
私はツグミちゃんをまじまじと見る。
(う~ん。確かにどことなく香菜さんに似ているような.. )
ツグミは服を着ておらず、ただタオルケットをあてているだけだった。さすがに服を着ていないのはまずい。私は自分のパーカーをツグミちゃんに着せて、タオルケットをスカートのように巻いてあげた。
「ツグミちゃん、ここはどこかわかる? 」
「ここは南極タイサントのサイフォージュの森ですよ」
耳元の声に驚いて振り向くと、長い髪、光る布が複雑に絡まるドレスに身を包んだ美しい女性が立っていた。
「お久しぶり。『時の加護者』のアカネ」
「あ、あなたはドライアド」
ドライアド、光鳥ハシルが私の記憶を覗いてファンタジーゲームに出て来るキャラクターに変身したのだ。ドライアドは森の精霊として今はタイサントに広がるサイフォージュの森を守っているのだ。
「あ、あの? なんで、 あっ、そうだ、私の秩序の力が.. いやそれよりも世界が、あ、私の世界の事なんだけど—」
私の様子をみてドライアドは口に指をあてた。
「いろいろ混乱しているみたいですね。では、まずここがどこなのかを説明しますね」
「え? ここは異世界。私がアーリーと呼ぶ世界じゃないの? 」
ドライアドはゆっくり首を横に振る。
「ここはあなたが知る異世界アーリーであって、そうじゃありません。この世界はあなたが知る異世界から6年後の世界となります」
「え? そんな馬鹿な。だってほんの1週間ほど前に私は遊びに来ていたのに、それから6年て.. 」
「あなたが困惑するのもわかりますが、本当です。でも、あなたが6年後に来てくれてよかった。可能性としては100年、1000年後という事もあったのです」
「そ、そんな.. 」
「あの者たちがこのアーリーにやって来て、何もかも変えてしまったのです。あの光る眼をもつ男と光る体を持つ3人が.. 」
ドライアドは私の頭に永久蝶(とこしえちょう)から得た映像を交えながら知っている限りのことを教えてくれた。 それは目をそむけたくなる残酷な場面すら混じっていた。
「そ、そんな、あの人たち小さい子供たちの目を.. 」
私は、私の中のトバリの血が怒りに震えている気がした。
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