第4話 握る手のひら
私は「時の加護者」アカネ。
飛行機の中で世界が砂に変わってしまう幻覚を見た私は異世界アーリーに何かあったのではないかと心配になった。異世界へ行こうと「審判の瞳」を使おうとしたが力が発動しない。異世界へ渡る手段を無くしてしまった私が思いついたのが依美ちゃんの存在だ。サイフォージュの香りがする依美ちゃんはどこかで異世界に違いない。私は彼女に会いに行こうと思った。
—留美子おばさんの自宅—
「あらぁ~、茜ちゃんが私の誕生日を祝ってくれるなんて感激だわ。私、ますます茜ちゃんのことが好きになるわ」そう言いながら留美子おばさんはその大きな体で私を思いきり抱き締めた。
「はは..(苦しいよ)」玄関のやり取りはそれくらいで、私たちはリビングに案内された..
『いた! 』
香菜さん、そしてその横のフカフカの長座布団の上で寝ている依美ちゃんだ。
「ようこそ、茜ちゃん」
「こんにちは、香菜さん。依美ちゃんは元気? 」
「うん。でも、昨夜は泣き止まないで熱でもあるのか心配したのよ。だけど、朝になったらケロッとしていてね。今は寝ているけど、さっきまでは皆に笑顔を振りまいていたわよ」
依美ちゃんの桃のようなほっぺに触れてみる。何て柔らかですべすべなんだろうか。
「 ..ヴェ ウェ~ん」
や、やばい、起こして泣かしてしまった。
「あらあら.. 」
「ご、ごめんなさい、香菜さん」
「じゃ、茜ちゃんにあやしてもらおうかしら。私、昨晩ずっと抱っこしていてちょっと腕がね」
「あ、はい。いいんですか? 」
座布団から抱えると香菜さんが抱っこの仕方を教えてくれた。温かい。この安らぐような温かさ。なんて可愛いのだろう。
「はぁい、依美ちゃん。大丈夫だよ。もう、泣かないで笑ってね」
その瞬間、サイフォージュの香りが部屋中に広まった。
そして世界の時が停まる。
いや、実際は動いているが、それは止まっているようにゆっくり動いているのだ。
「お姉ちゃん、アカネお姉ちゃん」
この声! 子供の声だ!私はこの声に聞き覚えがあった。光鳥の光によって14歳に若返ったヨミの声だ。その後彼女は私の腕の中で命を終えたのだ。
「アカネお姉ちゃん、来て! 私を通じてこちらの世界に戻ってきて! 」
「うん。どうすればいいの? 」
「私を抱いていて。決して離さないでね」
すると私の体はまるで背中からグンニャリと曲がってしまったような感覚となり、どちらが上か下か、右か左か、わからなくなった。そして次第に意識が遠のきそうになったが、ただ一つはっきりした感覚だけが私の意識をつないだ。
それは私の体に伝わる依美ちゃんの温もりだ。そして依美ちゃんの手は私の指をしっかり握っていた。
***
「おねぇちゃん! ねぇ、起きてよ! おねえちゃん! 」
「ん.. ここは.. 」
意識を取り戻すと周り一面がミントの香りがする。いや、ここはサイフォージュの森だ。天から眩しい光が降り注ぐ。
「おねえちゃん、大丈夫? 」
女の子の声? それにしても酷い感覚だ。まるで船酔いをしたようだ。
「ライン? そこにいるのは.. ラインなの? 」
「ううん。違うよ。ツグミだよ」
「え.. 依美ちゃん! 」
しかし、私はまた意識を失ってしまった。
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