第6話 時を待つ敵
私は「時の加護者」アカネ。
依美を通じて何とか異世界アーリーへ渡ることが出来た。そこには6歳に成長したツグミと精霊ドライアドがいた。ドライアドはここが私の知る異世界から6年後の世界だと教えてくれた。困惑する私だったが、ドライアドは6年間に何があったかを私に見せてくれた。
—フェルナン国 オレブランの森—
それは突然の事だった。
闇から輝く空間が開くとひとりの青年が現れた。
彼は自分自身に何が起きたのかわからない様子だ。
その姿はファミリー〇-トの制服を着ている。歳は20歳前後の学生アルバイトなのだろう。
何かの大きな力でこの世界に連れてこられたのだ。
青年は不安に駆られながら、森の中の1本道を辿っていく。
やがてその先から聞こえてくる太鼓の音と人々の大きな歓声。
どうやら祭りらしい。
その木の壁で覆われた町を見て青年は驚く。
自分の知る世界と違う世界に戸惑っているようだった。
町に入ると、宴が行われている。
祭りに人々は派手な服装をしているため、青年の服も今宵は目立つことはなかった。
『あんたも若いのだから遠慮せずたくさん食べなさい! 』
中年の女性に背中を押されて青年は空腹を満たした。
特に振るわれた鍋料理が絶品だった。
青年は飲兵衛の親父どもに付き合わされグデングデンに酔っぱらうと、いつの間にか地べたに寝てしまった。
翌日の昼になると宴の片づけが始まる。
青年はファミリー〇-トの服を脱ぐと、片付け作業に紛れながら町から出て行った。
目と鼻の先にある森の茂みに隠れ、二日酔いの気分の悪さの中、ここが自分の知らない世界だと改めて認識する。
誰かこちらにやってくる。
青年は草むらに身を伏せると、そこに自分と年齢が同じくらいの少女や青年を見た。
声をかけたかったが、兵士も混じっているため、身を起こすことを踏みとどまり、その様子を固唾をのみながら見守る。
幼い子供2人が泣きながら少女にしがみつく。
どうやらあそこにいる少女を見送っているようだった。
それぞれが抱擁を済ませ、少女がこちらに振り向くと同時にその瞳から白い光が放たれた。
その光は青年の瞳の奥まで貫いた。
すると青年の魂の奥から過去の記憶、いや未来の記憶が蘇ってくる。
「お、俺は、俺じゃない。だが、思い出してきた.. そうだ忘れてはならない記憶。忘れてはならない憎き、あの憎き顔。おのれ! 時の加護者め。全ては貴様のせいだ!! 」
(焦るな.. まだだ。お前は仲間を集めるのだ。お前と同じ血を持つ者をあの世界から連れて来るのだ)
「ああ、わかってるよ。そして俺はもう感じている。ふふふ。時の加護者よ。覚悟しておけ。俺はこの世界を認めることはない。俺が変えてやる。そしてこの世界を俺の思うように。だが、まだだ。まだ準備が必要だ。ふふふふふ」
・・・・・・
・・
やがて青年は北を目指す。
海を渡り北へひたすら歩き王国シェクタにたどり着く。
そしてその地で青年はすぐに宿付きの建築関係の仕事についた。
昼はどこにでもいる青年として働き、夜な夜な青年は人を探しに行く。
その暗欄の瞳を真っ白に光らせ現世から3人の男女を連れて来た。
3人は光る手を持つ者、光る足を持つ者、また両目が光る者だった。
「時が来たぞ。俺を覗き見るものよ。もう貴様に見せるものはない。俺は永久の命を持つ蝶を認めない」
すると青年の周り半径50㎞内の永久蝶の命が尽きた。
***
同時にアカネに流れて来る映像は無くなった。
あれは、あの眼は「審判の瞳」
「どういうことなの? ドライアド? 」
「わかりません。私が見た光景はここまでです。ただ、あなたはこれから従者シエラと運命のシャーレを探す旅に出る必要があります。急いでください。やがてこの世界に時の加護者の力が伝わっていくでしょう。この力に味方が気づけば、敵もまた気づきます。今は敵の能力も上がっています。気を付けるのです」
「敵。あいつらは敵なのね」
「はい。あなたにとって最悪の敵です」
「最後にひとつだけ聞かせて、あのツグミちゃんは? 」
私は森で永久蝶と遊ぶ少女を指さした。
「彼女は間違いなくあなたの世界の依美です。時空の歪みで彼女は6歳になっただけです。そして彼女の中に眠る『ヨミ』の英知を私が蘇らせました。きっとあなたを助けてくれるでしょう」
ツグミは永久蝶をその手に乗せると、可愛らしく私に微笑んだ。
その笑顔は穢れなどない純粋な笑顔に見えた。
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