♯14 あの子の癖

ここはベアン講演会場、よくスタンドアップコメディや朗読家、セラピストなどが講演をする。

チャービルは、このベアン講演会場に長年出演している。ここでは朗読家、本を語る会などを行う。


今日もベアン講演会場に出ていた。基本夕方が多い。


チャービルにオレンジ色のスポットライトが当たる。


マイクを持って1つの椅子に座る。


やあ! みんな、今日はなにを語る? そう今日は俺の苦手な本を語る。ジェフリー・チョーサーのカンタベリー物語。ジェフリー・チョーサーといえば、イングランドの作家として有名ですよね? アメリカでも人気でよく読んでる方を見かけます。カンタベリー物語は騎士の話から始まります。一応読みました。タイトル的にもおもしろそうです、読んでみてびっくりしました。


と、チャービルが話す。


お客さんも耳を傾ける。


そう、文法にびっくりしました。みたことない文法で読みにくい。小難しい言葉使っていてなにが言いたいのかおれには伝わりません。だって頭が羊並なんだもん。でも、断片7の船長の話は好きです。海賊ってなんかワクワクしますよね、宝探し、船、地図に冒険。剣をもってイェアッ!


と、チャービルは斬る動作をして今日の講演はお終い。


当たりは暗くなる。今日もやり切った。


チャービルは舞台から降りると、バーに向かう。


ビル! 今日もよかったわね!


と、ケリーが話しかける。


ありがとう。


やあ、ケリー!


と、バーテンダーのレイラが話す。


やあレイラ、今日はこれから行くところあるからジントニックで。


わかった、ビルは?


おれは今日は紅茶で。


わかった。


今日グスマンが迎えに来るって。


ええ、なんでもあの子に会うらしいわよ。


えーと、だれだっけ? あの映画館の。


ポーラよ、ポーラ・ギャック。


変な名前だよな。独裁者みたい、それかスポーツマン。陸上の。


いいえ、プロレスラーよ。


そっちか。


そう。


みたことあるの?


1回だけね。綺麗な子よ。身長が高い。


へえー。


と、そこにジントニックと紅茶が出される。


ありがとうレイラ。


と、ビルが言う。


そこにグスマンが来る。


やあ、まったか?


いいやさっき終わったところだ。行くか。


ああ。


そういうと、チップを置いてバーを出た。


講演会場の近くに停めてあるグスマンの車に乗る。

グスマンの車は日本車だ。「トヨタ・カリーナ」だ。

ファミリーセダン。1990年に作られる。


ケリー、チャービル、グスマンはカリーナに乗る。


グスマンが運転手だ。


なあ、おまえのデート相手どうだった?


と、チャービルが聞く。


ポーラ? いいよ。


いいって? 具体的にどんな感じだ?


そうだな、俺の好きな頬はピンク色で女の子らしい。身長も高くて、女優のようだ。


そうか、付き合うのか?


ああ、多分な。


そうか、まあ頑張れ。


ああ。もう着くから先降りてろ。駐車してくる。


と、チャービルのアパートの前で車を停める。


チャービルとケリーは降りる。


グスマン、鍵は空けとく。


わかった。


行くか、ケリー。


ええ。


チャービルとケリーはアパートに入った。エレベーターで待っていると、大家に会った。


やあ! ビル、久しぶりだな!


久しぶり、ダニエル。


このアパートは「スキロス・アパート」、ギリシャ語で犬の意味だ。大家であるダニエル・コスマトスは犬が好きでアパートにスキロスと名付けた。ダニエルは男性だ。


エレベーターが開く。


あ、じゃあまたなダニエル。


ああ、またな。


と、ダニエルと別れる。


ふたりは部屋に入ると、ケリーが話す。


彼って何人なの?


ギリシャかな? 苗字がコスマトスだ。


へえ。ギリシャ人ってあっちのほうが盛んらしいね。


そうなんだ。


と、そこにグスマンが部屋に入ってくる。


なあ、聞いてくれふたりとも。


どした?


ポーラの事で、ちょっとね。


だからか、さっきポーラの事聞いたらあんまり嬉しそうじゃ無かったからな。いいよ、聞いてあげようじゃないか。言いたまえ。


ああ…… 。


しょうがないわね。


と、ケリーが言う。


そしてグスマンは静かに椅子に腰を下ろす。その後、ポーラの事を打ち明けた。

これはどうにもならない内容だった。


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