第2話 暗闇

一寸先も見えぬ闇。


暗闇の中にポツンと、ひとり。


寒くも暑くも自由自在。


ただここでは一人ぼっち。


大勢いる町から一歩、また一歩と降りるとすぐここに辿り着くし、

朝、目が覚めたらすでにここにいる時もある。


自分が望んだ時も望まぬ時も、気づけばここにいる。


人食いサメに囲まれているような恐怖を感じる時もあるけれど、今日は初恋をしたような頭の中が水溜まりみたいにキラキラして鼓動が早くなる。

どちらにせよ、ここは暗闇が続くだけで何も見えない。


気づいたら大勢いる町に戻っている時もあるし、何年もここにいる時もある。


何年もここにいる時は自分も暗闇の中に溶けてしまうのでは、と考える。


だが、どんなに暗闇にいたとしてもいつかは必ず太陽の光を、星の煌めきを、身体中で感じとれる時がくる。



もし一人であなたがこの暗闇にいたとしても、他に誰かが暗闇にいる時もある。それは望んでか偶然とかはわからないけれど、確かにそういう時もある。


この暗闇が好きでいつも暗闇にいる人も、ふと気がつけば華やかな喫茶店で座っている時もある。




暗闇が好きで抱きしめている人を暗闇はポイッと放り出す時もある。



暗闇は偉大で、気まぐれなのだ。




気づけば僕は、家族でご飯を食べていた。


パンを手に取り頬張る妹。



「あいつも来たらいいのにな」

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白い蝶々 月寧烝 @Runeshow

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