第4話 歓声

 うん。あたしは覚悟を決めた。


「倒立したら、体操部に入れてくれますか?」


 みやびさんは、鼻で笑った。


「あんたみたいな生っ白い子に倒立なんてできるのかしら?」


 うわっ。言われたい放題。じゃ、ついでにサービスもしちゃうよ。


 あたしはその場に手をついて、倒立をした。立ち止まること十秒間。それから、もう水の止まった噴水の周りを一周してからバック転した。


 とたんに歓声が起こる。


「すごい!! 即戦力じゃん!!」

「水風船とかは、まだできないかもだけど、でも、練習します!! だから、入部させてくださいっ!!」


 頭を下げたあたしの前で、腕を組んで見ていたみやびさんが、難しい顔のまま、あたしに言った。


「言っておくけど。うちはそれなりに厳しいし、結果出せなきゃ辞めてもらうから」

「それでいいですっ!!」


 そんなあたしたちの後ろで、ママが電話している声が聞こえた。


「うん、そう。この学園に決めたみたい。できるだけの手続きは、先にやっちゃうわね」


 きっと、パパに電話をしているんだ。


 あたし、この学園で体操部に入りますっ!!


 つづく

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