第1話 雪がないっ!!
あの後、ママはおばあちゃんに連絡してくれて、学園側のアポイントは本当に簡単に取れたのだっ。素晴らしいおばあちゃんに感謝っ!!
そんなわけで、あたしはスマホをいじくりながら、クローゼットの中をあさる。なにしろ、生まれて初めての東京だもん。格安ブランドの服でなんて行けないよ!!
って、テンパっているあたしに気づいたママが、ゆりちゃんは制服でいいんじゃないの? って教えてくれたから、すごく納得した。制服便利。
❄️ ❄️ ❄️
制服の上に、いつものコートを羽織って、カバンの中身をチェック。ちゃんとハンカチとティッシュと絆創膏とスマホなんかも入っているし、なんならノートと筆記用具も持ってきた。マフラーは新幹線の中では暑いから、外してカバンに結びつけた。
ママはなぜだか大荷物で、まるで旅行にでも行くみたい。
「今日はビジネスホテルに泊まって、明日帰る予定ね。美味しいパンケーキのお店には寄って行きましょうねっ!!」
ママは意外と食いしん坊なの。
新幹線の窓から見える景色がコマ送りで進んで行く。雪。白い塊が、ちょっとずつなくなってゆく。
落ち着かないあたしに、ママは駅弁を食べさせてくれた。
今頃パパ、一人で引越しの準備をしているのかな? 今のお家、どうするんだろう? こんな雪国のお家を買ってくれる人なんて、いるのかなぁ?
雪がだんだん見えなくなって、あたしの不安はしんしんと積もってゆく。不思議。
「それで? ゆりちゃんはなにかやりたいことがあるの?」
「うーん? わかんない」
けど。きっと、この噴水を見たら、気持ちがはっきりするような気がした。
そうして到着した東京はとても暖かくて。そしてなにより、雪がないっ!!
つづく
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