第21話 新しい生活
島で迎える初めての朝。
娘の部屋は別に用意されていたが、娘と私は一緒に寝ていた。
私は娘を起こしてしまわないように、そっと起きあがり階段を下りていった。
「おはようございます!」
と声をかけた。
すると、キッチンで朝食の支度をしていたお義母さんが振り向いて微笑んだ。
「あら、おはよう!少しは眠れた?」
「昨日はすみませんでした。ご挨拶が遅れました、瑠璃です。これからお世話になります。宜しくお願いいたします」
と頭を下げた。
「もー、そんなにかしこまってー。家族なんだからねぇ、遠慮はしたらダメよぉ」
由紀子さんは、そう声をかけてくれた。
「結ちゃんは?まだ寝てるかぁ」
島の独特なイントネーションに、笑いそうになるのを私は我慢した。
「はい。娘もまだぐっすり寝てます」
「きっと、疲れちゃったんだねぇ。瑠璃さんも気を使わんとのんびりしててねぇ」
「はい、ありがとうございます」
と言ったものの、そうは行かないだろう。
私はほんの少しだけお手伝いをした。
ふっくらとした白いご飯と、卵焼き。
お野菜のお漬け物と、焼き魚。
とても豪華な朝食だ。
「田舎だから、こんな食事ばっかりだけど。また、みっちゃん所に品物が入ったら買い物しておくわねぇ」
とお義母さんは笑って言った。
そこへ漸く目覚めた娘が階段を降りてくる。慣れない階段にヨロヨロとしながら、眠そうな顔をしている。
これまでお義母さんがひとりで使うには寂しすぎたであろう、大きな食卓テーブルに並べられた朝食を見て、娘は目を見開いた。
「ぅわぁー、凄い!」
と娘は嬉しそうに席についた。
「結、まずはお義母さんにご挨拶でしょ!」
「あ、そか」
と娘はキッチンに行きペコリとお辞儀をした。
「結です。宜しくお願いいたします。ウナギとか長いお魚や貝類は苦手です。あ、でもホタテは食べます。イクラは大好きです!あと、エビは殻が気持ち悪いので苦手です!なので、殻がなければ食べれます」
お義母さんは笑っている。
「そーかぃな。ハハハハハハ!」
「ちょっとー、結!」
(とんでもない自己紹介……)
私は少し慌てて娘のパジャマの袖を引っ張った。
「だってぇー、用意してもらって食べれないのは困るでしょ?」
と娘は唇を尖らせた。
「アハハハハハ!楽しくなるわぁー」
お義母さんは大笑いしている。
(まぁ、確かに。私達親子はウナギや穴子は苦手だし。貝類も殆ど食べないから助かったけど。)
お義母さんの笑い声が落ち着いた頃、のそのそと勇二が起きてきた。
「おはよう」
勇二もさすがに疲れたのであろう。芸術的な寝癖をつけたまんま起きてきた。
「いっただっきまーす!」
と、娘は大好きな卵焼きにかぶりついた。
「私は料理が苦手で、すみません」
と苦笑いをした。
「なぁーに、大丈夫大丈夫!」
お義母さんは笑ってくれた。
テーブルが賑やかになって嬉しかったのだろう。
「はぁー、また魚生活が始まる……」
勇二はつまらなそうだった。
「島では焼き肉なんて食べれないし」
「みっちゃんとこで買えばいいさぁ」
勇二は、ガクッと肩を落とした。
「あそこはさぁーーー……」
(みっちゃんとこって何だろう?)
お義母さんの口からも出てきた名前。私はさっきから考えていた。
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