第3話 想定外の来訪者
駅舎前に、間隔をあけて篝籠を10数個ほど配置する。
配置した篝籠の中に細長くした新聞紙を置き、その上に小枝を並べ、薪を置く。
こうすれば新聞紙が導火線の役割を果たして比較的楽に着火ができる。
ちょうど、駅舎の出入り口を中心に半円状の形になった。
火を灯す事を考えると、それはまるで何かの境界線のように見えなくもない。
「ふぃ~ぃ、毎回これが重労働なんだよなぁ。親父め・・・逃げやがって」
小次郎の父、隆一郎は50代前半。世間一般で言えばまだまだ現役。
しかし『平坂駅に関する事はお前に任せる。地域内の皆さんに対しては、当主として
然るべき立ち居振る舞いを心掛けるように』
そう言って、この場の取り仕切りを小次郎へ移譲したのであった。
しかめっ面で父親への悪態をついてはいるものの、決して本心からの言葉ではない。
自らの家系に課せられた役目と、またその重みを理解している。
だからこそ悪態の一つでも言わないとやってられないのではあるが・・・・
篝火の準備を終えると、小次郎は休む間もなく駅舎の中へ戻り、詰所へ向かった。
詰所から祭壇を出して手際よく組み立てた後、改札を出てホームの中程へ配置する。
「祭壇よし、三方よし、水器一式よし、玉串よし、脇の提灯よし・・・っと」
持参した葡萄、筍、桃などをバックパックから取り出し、祭壇の準備は完了した。
日が高い内にひと通りの準備を終えて、手落ちが無い事を最終確認し、
さて一服かと詰め所に向かおうとしたタイミングで、駅前に一台の車が入って来た。
「あらら、今年は来るのが早過ぎないか?」そう呟きながら車の方へと向かう。
車から降りて来たのはスーツ姿の女性が二人であった。
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